ガーナ良い国映画『アフリカン・カンフー・ナチス』感想文

《推定睡眠時間:0分》

実は生きていたヒトラーと東條英機が黒人のゲーリングを連れてガーナ征服を企むかなり限られた界隈で話題の映画だが日本版劇場予告編を見たらガーナの人の字幕が関西弁になっててふーんそういうノリの映画ですよって予告編演出ですかーそうですかーと思って本編見たらそっちも全編ガーナの人の台詞が関西弁字幕でえそのノリのまま行く!? ちょっとだけ動揺してしまった。

昔のJVDのゴミホラーとかにはよくこういう翻訳遊びがあったが今になってなぜあえてそんな危険な真似をと思いましたらガーナは主要民族がアカン人といい公用語は英語だがアカン語というのも話されるということでじゃあ劇中のガーナの人が話していたのはきっとアカン語でアカン語だから関西弁なんだね、なーんだなるほどそういうことか! 納得できるか! 理屈はわかるが!

それにしても関西弁字幕の謎を解くべくwikiを見てたらなんかガーナがめっちゃ良い国に思えてきた。隣の隣の隣どころではない青い芝生なのはわかっているがあのへん(ざっくりしたアフリカ認識)の国としては例外的に内紛などもなく平和な共和制の国だということでなんか映画を観ていてものんびりした雰囲気が漂っておりましたし市場の人々からは下町人情が滲み出てましたしかなり住みよい国なんじゃないでしょうか。もちろん都会的虚弱体質の俺は移住したら秒で急激な体調悪化に見舞われそのまま死ぬことは知っているので住めませんが外から眺める分にはよさそうな感じです。讃えているようでナチュラル蔑視。都会人の宿痾だ。

そんなことはさておいて『アフリカン・カンフー・ナチス』ですがこれはあれだな感想を書くような映画ではねぇな。いや悪い意味ではなくてこうこうこういう映画ですって文字で説明すると台無しになる映画ということで、たとえば停車した車を遮蔽物にして銃撃戦をやるシーンがあるんですけどその車のバンパーが説明もなく凹んでていやお前ら一回それでなんかやったろ! それでなんかやったけどうまくいかなくて撮り直してこういうシーンになってるだろこれ! …みたいな。そういうオモシロはいくらでも書けるんですけどそれを知ってからそのシーン見てもそんな笑えないじゃん。これだって少しだけ罪悪感ありますよ超重大ネタバレかましてごめんなさいって。オモシロポイントとか愛せるポイントは観客一人一人が自分で見つけるべき映画ですからねこういうのは。

だから俺から言えることはこれだけだな。ガーナよいとこ一度はおいで。監督が演じる1ミリも似てないヒトラーだってそれに比べれば多少は本人に外見を寄せてきているが人物解釈が壊滅的に間違っている東条英機だって映画の中で蘇ってまで侵略したがったぐらいなのですから繰り返しにはなりますがガーナはよいところに違いない。なんか自称先進国の日本が一向に実装できない選択的夫婦別姓も既に制度としてあるらしいよ。あとカンフー道場があちこちにあってみんなカンフー使える。すごいなガーナ。後者はたぶん嘘ですが。

※共同監督で出演もしているニンジャマンなる人物は本名だか芸名だかは知らないがサミュエル・K・ンカンサというらしく、この人が2010年に製作した『2016』という映画の予告編をYouTubeで見たらぶっちゃけ飛び具合は『アフリカン・カンフー・ナチス』の比ではなかった。何かの間違いで緊急日本公開を期待したい。

※※あとヒトラーの黒魔術でガーナ人のエヴァ・ブラウンにされた女の人はかなりかっこよくて好きでした。

【ママー!これ買ってー!】


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このあいだ見た別の映画の感想でぶっちゃけ娯楽映画の面白さとか基本予算の多寡だよとか暴言を吐いてしまいましたが『カンナチ』みたいな映画を観るとそうは言っても例外はありえるのだともしかしたらかなり間違ってるかもしれない方向への勇気をもらえます。予算がなくても映画はできる、機材はなくても映画はできる! いやでも機材はいるだろ。『カンナチ』もドローン使いまくってたし。

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オギャ
オギャ
2021年7月20日 11:06 AM

以前読んだご感想をほぼ忘れて鑑賞に臨んだので、車のバンパーがへこんだ状態で出てきたことに笑いました。カラテでもカンフーでもなく銃撃戦が始まるとは…。
戦いの度に必ずフェイタリティの起こるのが楽しかったです。ガーナの方はモータルコンバットお好きなのですね。

通りすガリレオ
通りすガリレオ
2021年7月23日 1:43 AM

ゲーリング黒人バージョンって、巨漢、軍服でどう見ても『食人大統領アミン』だけど、アフリカではアミンはタブーなのでしょうか? カンフーがカラテに勝つのは、アフリカ諸国に中国資本が大規模に食い込んでいるせい? とか考えましたが、監督はヒトラー役の人、しかも日本在住と知って、もともとアフリカ関係ないやん! とズコー。映画そのものより撮影の苦労話のほうがおもしろかったような・・・こうなってみると、本物のアフリカ映画が見たくなりました。『遠い夜明け』『サラフィナ!』『ホテル・ルワンダ』『クールランニング』でしか知らないので(笑)
にしても、出オチ、ツッコミどころしかないこの作風。秘宝的、あまりに秘宝的な・・・。こういうZ級映画を笑うという楽しみ方は、サブカル界の雄、町山智浩氏が日本に輸入したような気がしますが、つい最近、トッチャン坊や系ミュージシャンがサブカル雑誌で派手にやらかしたせいで、サブカルの価値が一気に低下したような気がしてなりません。今後、サブカル的な文化が蔑視されて当然、つまりナチスみたいな地位にならないことを祈りたいですね

ラッキー
ラッキー
2021年7月24日 11:22 PM

「ガーナ映画」と「サブカル」談義から、ある考察が浮かんだんですが、例えばガーナの映画ポスターって、ハリウッド映画の現地ポスターも含めて凄いんですよw
https://www.bing.com/images/search?q=ghana+movie+poster&form=HDRSC2&first=1&tsc=ImageBasicHover
この「圧倒的さ」wというのは、「メジャー・カルチャーを横目で睨んでの戦略的サブカル」臭が全くない「純粋さ」、つまり「ホンモノ」感にあると思うんですよ。つまりその「本物のニセモノ」感です(笑)実際、ハリウッドの正式なポスターと比較すると、正規ものはきれいで整っているが(つまりメジャー)、ガーナのポスターを目にした時の「ナニこのセンスオブワンダー!www」という高揚感、開放感がなく、普段気づかない「メジャーものが持つ閉塞感」に気づかされるわけです。それって本来「サブカル」の存在意義では?と思うワケです。圧倒的「相対化」、しかもそれは決してメジャーを横目で睨んでのものではないという純粋なw

ラッキー
ラッキー
Reply to  さわだ
2021年7月25日 12:22 AM

コメントを投稿した後に、「あ、ガーナ・ポスター・アート、「狙ってる」可能性も否定できないかも?黒人の人たちって、実はそういう高度なカウンター・パンチを決める如才なさもあるし」なんて思ってたとこころ、やはりさわだ様も同様の洞察をきめておられたとは、恐れ入りました(笑)
とても高度な?文化談義ができたような気がしますw
ありがとうございました。