豪州なのに北欧っぽい映画『渇きと偽り』感想文

《推定睡眠時間:20分》

一年以上雨が降っていないオーストラリア僻地の乾燥地帯で一家心中と見られる事件が発生。主人公の刑事エリック・バナは自殺した犯人の旧友ってんで葬儀のために有給とって町に戻ってくるわけですがそこで当然のようにやってくるいやあいつは本当は犯人じゃないんだ説。ミステリー映画なのでここで主人公は一肌脱がないわけにはいかず非公式に捜査を始めるわけですが、するとミステリー映画なので当然予想外の真実に辿り着くのでした。

オーストラリアのミステリーだが全体の雰囲気や展開は気候的にはむしろ真逆の北欧ミステリーそっくりというのがちょっと面白い。やっぱ暑かろうが寒かろうが過酷環境っていうのは人間を非情にさせたり絶望に追い込んだりするんでしょうか。とにかくねこれ出てくるどの人物も概ね余裕がないんですよね。暑くてもうやることといったらカンガルー撃つかビール飲むか喧嘩するかですから。そりゃあねそのうち殺人の一件や二件起きますよ。なんかクーラー付けて家でゲームやってるとかそういうのがいちばん健全なんじゃないこういうところでは。

だいぶ投げやりな感想になっているのはぶっちゃけわざわざ感想に書くようなこともなかったから。一応二時間弱の映画ですがTV刑事ドラマの1エピソードだったとしてもまったく驚かない内容で、別につまらないとは思わないが特段おもしろいところもオリジナリティを感じるところもない。北欧ミステリー好きなら多少は好感度高く見れるかもしれないし熱心なファンとは言えなくても俺も北欧ミステリーは結構好きな方なのでこの閉塞感あふれる絶望世界を楽しんだけれども、でもまぁ、ホントにそれだけだよ。キャラも展開もあーはいはいいつものアレねで脳がスルーしてしまう。逆に、いつものアレを観たいときには良い映画なのだが。

あえて見所を挙げるならばやはり乾燥してひび割れた地表や干上がった湖といった乾燥地帯の風景だろうか。これも北欧ミステリーと同じなのだがロケーションがよいよね。とにかくこのロケーションつーのが登場人物の性格や行動に奥行きを与えありきたりな物語にそれなりの迫真性を与えてる。その意味で映画の本当の主人公はエリック・バナじゃなくて風景って言えるな。

かつてはこの町が干からびていなかった頃、主人公は自殺した犯人を含む仲間たちと楽しく湖でバシャバシャと水遊びなんかしていたりしたのであった。その風景は牧歌的だが、そこで起こったある事件が主人公たちの人生を変えてしまった。その湖も干上がって今はもうない。希望の喪失を象徴する残酷なふたつの風景の対比。でも、もしも、あの風景が荒野の書割で、本当は最初から希望なんかなかったのだとしたら? そう仄めかすラストの余韻は、やはり北欧ミステリーなのであった。

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酒飲んでカンガルー狩って喧嘩するぐらいしかやることがないオーストラリアの荒野は怖いですねというお勉強映画らしい。

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さるこ
さるこ
2022年10月6日 5:52 PM

こんばんは。
もう、ミスリードの嵐に翻弄されました(いつものアレ)!
色んなルーツの人がいたり、砂漠の中の一本道を走ったり、ああ、オーストラリアってそういう場所だったな、って思い直しました。
あの、所轄の警官がオアシスでした(^^)

匿名さん
匿名さん
2022年10月13日 1:49 PM

確かに、北欧感はあったような気がしました。主人公が強度のストレスにさらされてる、
ラスボスが三枚目のおっちゃん、と言う点で『インソムニア』思い出しましたが、あれ今調べたら北欧じゃなくてアラスカでした(笑)
新人俳優陣がよかったですよね。ベベ・ベッテンコート嬢は、イチオシされてました。でも不満はあって、オーストラリア感が全くなかったこと。制作者は『コアラボーイ コッキィ』見てオーストラリアのアッピール方法を学んでもいいかもしれない