映画『ナイトクローラー』の感想を野次馬根性丸出しで書く!

英語とかできないので、タイトルの語感から都市型連続殺人鬼ナイトストーカーことリチャード・ラミレズを連想し、同時に『クロールスペース』(1986)の変態殺人鬼クラウス・キンスキーも頭に浮かんだりした。
ラミレズつーと死刑判決に際して「ディズニーランドで会おうぜ!」なる名言(ディズニーランドは刑務所のスラングらしい)を残してるし、『クロスペ』のキンスキーはSSコスして乙女の部屋を覗き見、セルフロシアンルーレットで自分が死ななかったら代わりに乙女惨殺とゆーキャラ盛り過ぎな超絶マニアック。
とゆーコトはだな、この二つが俺の脳内で勝手に結びついた『ナイトクローラー』、コレ絶対ヤバカッチョイイ映画に違いない!

そんなワケで観てきたんで感想書く。
以下あらすじ。

才能とかカケラも無いが根拠の無いプライドと無駄な野心だけはある底辺人間ジェイク・ギレンホール。
もう半分くらい人生積んでる彼だったが、ある日のこと下衆いパパラッチに遭遇したことから人生が一変。
パパラッチ…そうだ! 才能ある俺なら天才パパラッチになれるに違いない!
ってなワケで、ジェイクは中古1万ぐらいの安いDV片手に夜のLAを駆けずり回る。
果たして彼は人生の勝ち組になることができるのだろうか…。

ギレンホールは学歴とか無いし、金網泥棒だったくらいなのでビジネスの実績とか無いのだ。そのくせコトある毎に自身のビジネス哲学とか自信満々に披露するのでコチラは疲労、とてもウザい人なのであるが、そのビジネス哲学なるものは彼が数年前にオンラインで受講した講義の受け売りなのだった。
オンライン講義っていうか、この人が言うのは中身の無いバカビジネス新書的精神論とかばっかなので、たぶんyoutubeかなんかでTEDの動画でも観てたんだろう。
映画には出てこないが、絶対『超訳ニーチェ』とか読んでキャバクラのねーちゃんに講釈垂れるタイプである。
コワイ映画だが、なにがコワイってその底辺感がコワイよ。

しかし底辺はなにもギレンホールばかりじゃないのだ。
ギレンホールが売り込みをかけるのが弱小テレビ局のニュース番組の女ディレクター、レネ・ルッソ。
視聴率ヤバイわー、ここでキャリア終わらせたくないわーってトコに下衆い死体映像持ったギレンホールが現れ、なりふり構わず買った死体映像を番組で流す。

この人結構なお歳(61さい)のクセしてコールガールみたいなアゲアゲなメイクしていて、なんか下品でキツイ香水が臭ってきそうだったりするが、そっから推測するに枕営業でもなんでもしてのし上がってきた人なんである。
その結果が下衆映像だけが売りのニュース番組のディレクター止まりってコトで、なんというかこう、実にやるせない。
「命がけで撮ったんだぞ! 1000ドルで買ってくれ!」
「バカ言わないでよ! どこにそんな予算があんのよ!」
みたいなギレンホールとのやりとりは涙ナシには見れません。
(追記:もっかい見直したら1000ドルじゃなくて1万5000ドルだった。その底辺感にヤラれて勝手に脳内変換してしまった)

ほんで、いくらなんでも一人じゃちょっと厳しいなってコトでギレンホールは部下を募集するワケですが、そこに(ただ一人?)応募してきたのがリズ・アーメッド。
「インターンから始めよう。働き次第で正社員の道もある」
「待ってくださいよ! 無給じゃ働けないっすよ! 生活厳しいんすよ!」
「じゃあ一晩30ドルだ」
「やった!」
ってな具合に超ブラック入社を果たすアーメッドだが、いやなんぼなんでもLAなんだからもっとマシな仕事あるだろ!
アレだな、たぶんこの人はこの人で仕事続かなかったり、あんまり使えないからすぐクビ切られるんだろう。

どっかの調査で幸福度の低い人の周りには幸福度の低い人が集まるとかゆー身も蓋も無い結果が出たらしいが、なんかそれを地で行くような映画である。


ところでコレ、ヤバい映画に違いないと思って観たら、そのへん結構肩透かしなのだった。
いや面白かったんだけど、ブラックなユーモアいっぱいでかなり笑える映画になってんのだ。

いつもギョローっと目ぇひん剥いてさ、ファッションセンスとか最悪で超ダセェしバカなのにデキる男ぶるギレンホールの怪演なんてほとんどコメディで、ところどころジム・キャリーかMrオクレに見えたりする。
んでソイツが、いつもボーっとしてるたった一人のアホな部下に偉そうにビジネス哲学語るワケですよ。
これは悲しい。悲しいけど、笑うわこんなもん。

妙齢の女ディレクターのキャラクターも漫画的に誇張されていて、その傍若無人ぷりと思慮の浅さっぷりが笑えるんですが、クワァと目を見開いてサブのモニター睨みつけると厚化粧が一気に崩れて、なんかもう妖怪。
ギレンホールとサシで会話するシーンでの互いの顔の切り返しなんて凄まじくてですね、アレ、漫画太郎の実写化かな? みたいな。
そのシーンでギレンホールは下衆映像と引き換え女ディレクターの体を要求するんですが、うわぁヒドイことするなぁ、とかならないよね、もはや。
二人のベッドシーンとかありませんが、あったらベーコンとかゴヤの絵みたいになってたんじゃないの。

女ディレクターっつーと、この人が担当する番組、アンカーマンがとてもチープでバカそうだったが、制作周りのスタッフも明らかに法的にアウトなギレンホール映像に対して「それ倫理的にマズイし、法的にも…いや法とか分かんないけど」みたいな感じなので、これまたしょうもなさ過ぎて笑ってしまう。
たぶんこっから出世コースに乗れる人はいないだろう。

あぁ、こんなシーンもあったな。ギレンホールと部下のやりとり。
「よし! 君は今から我がパパラッチ社の副社長だ! いくら欲しいか言ってみろ!」
「ひ、一晩70ドル!」
…お前らどんだけ安いんだよ!

結構色んなトコで『タクシードライバー』と比較して論じられたりもしてる(らしい)『ナイトクローラー』ですが、そんなワケで『タクシードライバー』(1976)っつーより、そのコメディ版の『キング・オブ・コメディ』(1983)とかのが感じ近い気がする。
『ナイトクローラー』のレネ・ルッソは山姥みたいだったが、『キング・オブ・コメディ』のサンドラ・バーンハードも強烈な顔面パンチ力と狂気があった。

あとアレだな、ギレンホールがジム・キャリーに見えるんですが、それでジム・キャリー大暴走の『ケーブルガイ』(1996)って映画思い出した。
コッチはコッチで『ナイトクローラー』のギレンホールよろしくジム・キャリーが空気の読めない孤独な男で、友達欲しさのあまりマシュー・ブロデリック(絶妙なキャスティング!)に馴れ馴れしく付きまとう。
ほんで色んなプレゼントしたりお節介焼いたりすんですが、それがどんどん常軌を逸していってコワくなってく。コレ面白かったな。

アメリカじゃ一定の需要あんのか知らんけど、この手の「悪意は無いけど孤独で狂った男」とか「能力ないけど野心と自信に満ち溢れた男」が暴走してくコメディってアメリカ映画によーあるな。
『タクシードライバー』で思い出したが、『オブザーブ・アンド・レポート』(2009)は『タクシードライバー』の影響の顕著な映画で、相変わらず根拠の無い自信だけはある能なしショッピングモールの警備員、セス・ローゲンが壊れてくコメディ。
警備員をパパラッチに置き換えただけで、『ナイトクローラー』も話の構造は同じようなもんなのだった。

ほんで『ナイトクローラー』に戻ると、コレ脚本がアカデミーノミネートとか言ってるが、いや別に大したハナシじゃない。
とてもシンプルな脚本で、キャラクターは単純だし、展開は一直線で捻りとか無いし、社会風刺だなんだっつーのも意図としてはあんのかもしれんけど、誰でもスマートフォンでスクープ映像撮れる時代にパパラッチの倫理観云々ちゅーても説得力も衝撃も無いだろ。

でもアレだ、そこがいいんだよ。時代遅れのパパラッチで成り上がろうとするダメな人と、ソイツに酷薄給でこき使われるダメな人と、ネットでいくらでもエログロ見れるのにまだエログロ下衆だけで視聴率取れて、そんでもって出世もできると思ってるダメな人のハナシ。
そういうダメな人たちが、ダメな人たちしかいない狭い世界で共食いするハナシ。
グっとくるよ。貧乏ってこーゆーことだよな、結局。

なんですか、深みとか凄みとか、そんなん無い。
ダレどころも泣きどころも無くて、ひたすら底辺バカのギレンホールと一緒に夜のLAを疾走するだけの2時間。
バカどもの所業に笑って、ちょっとだけ切なくなって、前進あるのみなギレンホールに貧乏人はワリと元気もらえる(こんな映画の感想とは思えないが!)
そうだそうだ、ドン底で孤独にくたばるくらいなら、ギレンホールみたいに一線を越えてでも成り上がれ!

面白かったぞ!

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コレ大好きなんだけど、なんかホラ、レビューサイトとかあるじゃないすか。あぁいうの見るとすげー言われようなの。
いやまぁ分かりますよ、分かりますよ。だって警官気取りのショッピングモールの警備員がモールうろちょろするだけなんだもん。
似たような底辺人間映画ゆーても『ナイトクローラー』は派手なカーチェイスとかカッチョイイLAの夜景とか(コレも大したもんじゃないと思うけど)ありましたけど、対してコッチの見せ場はフルチンの露出狂がモール走り回るシーンだからね。
そら売れないよ!

でもさぁ、ホント良いハナシなんだよ、コレ。
最初さ、底辺警備員のセス・ローゲンがいかにウゼェ人間かみたいの延々とやるの。すげーポンコツの同僚たちに「貴様らは警備員としての誇りはないのか! 自覚が足りん!」とか説教してさ、誰も大して気にしてないモール内の露出事件に勝手に発奮して、「モールの平和は俺が守る!」とか言い出すの。
イタイ、もう超イタイ。
でもいるよね、こういうヤツ。コンビニの夜勤とかによくいるよ…。

ほんで、そのあたり笑えるんですが、ローゲンの誰にも望まれない無意味な頑張りはどんどん空回りしてって、そっからはもう悲しくてしゃーない。
でさ、結局自分はなんの才能も能力も無い底辺警備員だってコト気付いて絶望するローゲンに、登場人物の一人が言うんだよ。
「お前は優しすぎるんだよ」
このシーンが素晴しくてだね、もうダメ人間号泣ですよ。
なんつーか、あまりのしょうもなさに泣く。

いやとにかく、誰がなんと言おうとダメ人間映画のケッ作と言い切る。
『ナイトクローラー』のダメさ底辺さにグっときたらコッチもグっとくるんじゃなかろか!

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