【ネッフリ】『マイ・ハッピー・ファミリー』を見る(ネタバレ多少あり)

→マイ・ハッピー・ファミリー[Netflix]

《視聴中断回数:3回》

主人公の名前はマナナ。関西弁でのバナナと同じイントネーションだ。なのでこの文中のマナナはすべてそのイントネーションで読んで欲しい。関西弁でのバナナのイントネーションがわからないという人は……そうだな、関西弁での浜田のイントネーションとも同じですね。

Netflixによるあらすじ。
コーカサス地方にある小国ジョージアで教師として働く2児の母マナナが、52歳の誕生日に、三世代同居の家を出て1人で生活すると宣言し、夫や家族を驚かせる。

このあらすじを読むと、家を出てからいろいろあるんだろうなあと予想できる。家族がマナナの価値に気づいて思いやるようになったり、逆にマナナが家族の愛情を見つめ直すきっかけになったり、そうやって身近過ぎて気づかなかったかけがえのないものに思いを巡らせるようになる……というようなことはこの映画は一切ない。上記のあらすじが物語の全てである。

もちろんその他に細々したエピソードはある。しかしそれらは雑談のようなもので、メインストーリーを補うものではない。すなわちそれら細々したエピソードは、登場人物たちの心情に変化を引き起こさないのだ。

例えば中盤で娘がラブラブだった彼氏と別れるという出来事がある。
この彼氏は実は浮気をしていて、マナナは偶然その現場を目撃していた。彼氏から口止めされたマナナは「私には関係ない。巻き込むな。自分たちで解決しろ」と無関係を決め込んでいた。実際、娘にもそのことは言っていなかった。

そうした結果、娘に破局が訪れ、マナナは娘を励ます。すると娘から「干渉しないで。否定的なのはおじいちゃんと同じだ。自分を他人に投影するな」と言われる。これは核心をついた台詞に思えた。なぜならば、マナナが家を出た理由はここにあったように思えていたからだ。これはマナナに何らかの変化をもたらすことが期待される。
しかしマナナに特別な反応はなく「あなたに一番いい道を歩んで欲しいだけ。怒らないで」と普通の返事をする。やりとりはここで終わり、以降の場面でここでの会話がマナナの行動影に響を与えたと思われるところはなかった。

後半、再びマナナが娘を励ます場面がある。マナナは「恋をして子供を持ちなさい」と自分が親戚たちから言われてきたのと同じ幸福観を娘に伝える。意外だった。マナナはそのような生き方に耐えきれなくなって反旗をひるがえしたのではなかったのか。それともなにか考えに変化があったのか。あるいは作り手による皮肉だろうか。
わからない。
結局この台詞がどのような意味を持っていたのか、それとも意味なんてなく単に娘を励ます母親というだけの台詞だったのか、作中からは読み取れなかった。

とにかくこの映画、マナナが何を考えているのか一切わからない。マナナはほとんど自分の意見を言わない。では無口な耐える妻かといえば別にそんなわけではない。相手が誰であれ、ムカついたらムカついたとはっきり言う。

そんなわけだから、実を言えばマナナが家を出た理由さえわからない。序盤に家族からマナナの意思がないがしろにされるようなシーケンスがあったのでそれが原因かと思っていたが、映画が進むと登場人物全員があまり人の気持を考えずにぐいぐい事を進めるような人ばかりなので、この国の人柄そうなのかもしれない。
あるいはマナナが自分の意見をはっきり言わないので自然とそうなってしまうのかもしれない。であればそれはバナナの成長すべき点となるが、やっぱりそのように触れられはしなかったのでわからない。

つまりこの映画、結論が全くわからないのだ。だから見終えた感想としてはマナナが家を出たという出来事から先、なにも起こっていないに等しいのだ。
もちろんこちらで何かを勝手に感じることはできる。雑談のようなエピソードはいくつもあるので、自分の人生と照らし合わせることは大人であれば容易だろう。そうやってそれぞれに何かを感じさせることがこの映画の目的だろうか。そうであればつらい。あらすじだけで充分だ。

それとも物語は口実で、この映画の本質は撮影することそのものにあるのだろうか。
ほぼワンシーン・ワンカットのようなやりかたで撮っていて、シーン内に大勢が出てくるが、皆が勝手に動いているように感じられる。例えば同窓会の場面では、人物を追ってカメラが次々に部屋に入っていくと、どの部屋でも大勢が何かをしている。シーンが始まって数分後に入った部屋でもそうなので、緻密にタイミングを作っているか、写らないところでも演者たちがずっと芝居を続けているかのどちらかだろう。

また、市場の場面ではまるで営業中の市場でゲリラ的に撮ったように見えるが、実際はそこにいる全員がエキストラなのだ。その証拠に通行人は会話する主要人物二人のあいだをすり抜けたり、声をかけたりする。
自然に見えるようにレンズに写るものすべてを作り込んでいるのだ。するっとフレーム内に入ってきて台詞を言う役者の動きも、入念にテストを繰り返したのだろうと想像できるほどわざとらしさがなたった。とても感心したし、おもしろく見られた。
だからこそ内容が、会話や出来事が、なんの意味もないように感じられたというのはつまり、作り手にとっては撮影することそのものにしか関心がなかったのでなかったかと思えるのだ。

文中、一箇所マナナをバナナと書いたところがありますが、気が付きましたか?

【ママー!これ買ってー!】


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特になんも思いつかず、関連作とも言えんという気もするが………なんも思いつかんので。なんやろ、国が近い? 近い?

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1 Comment
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匿名さん
匿名さん
2019年10月23日 5:27 PM

マナナがなぜ家を出るに至ったのかなんて序盤で既に嫌というほど描写されて伝わってくるのに、
さすがに読解力なさすぎるでしょ。
何でもかんでも言葉で説明してくれなきゃ理解できない!っていう子供じみた駄文だった。

ここの感想文を100回読んだ方がいい。
http://cinemandrake.com/myhappyfamily