珍ミス映画『修道士は沈黙する』の感想(ネタバレはないが注意は必要)

《推定退席時間:15分》

どういうわけかG8財相会議に先立つ晩餐会に絵本作家、ロック歌手、そして修道士の異業種連中がIMF専務理事たっての希望で招かれた、との出だしがどことなく坂口安吾の『不連続殺人事件』している。
『修道士』のロック歌手はルー・リード(この間の『ロープ/戦場の生命線』に続いてまたしてもだ)の『ワイルド・サイドを歩け』をてめぇ金持ちサイドに立ちながらよくそれ歌えたな的な感じでカバーしていたが、『不連続』も曾根中生の映画版だと内田裕也とか出てくるからな。なんかほらなんとなく繋がるだろう。

映画はあんま面白くなかったが小説の方の『不連続殺人事件』は好きだったので読書マニアの知人に勧めると、後日返ってきた感想は呆れ気味の「こんなに脱力したミステリーは初めて」。
そこが面白いんじゃないすか! っていうかそこがこの小説の核じゃないすか! という話だが、それはともかく『修道士』もなかなか食えない映画で、狙いなのか違うのか微妙なユーモアが至る所に散りばめられており、重厚ムードに押されて前のめりで見ていると突然ガクっと脱力させられたりする。

だいたい冒頭からしてどんな顔をしていいのかわからない。会議の行われるドイツのリゾートホテルにお呼ばれした主人公の修道士が空港から出てくると、目の前に杖で浮遊するインド人が居る。
だが修道士も映画もなんのリアクションも見せずに神妙な面持ちのままさっさと次のシーンに行ってしまうのだった。なんだったのそれ。どうしたらいいの俺は。

それからIMF専務理事の他殺だか自殺だかわからないがともかく一大事件が勃発して、映画は良からぬ企みの臭いを漂わせながら死の直前にIMF専務理事の告解を行った修道士を探偵役とした政治的ミステリーの様相を呈してくるわけだが、途中でお腹痛くなっちゃったので15分ぐらいトイレ離脱。

なかなか排便が進まないのでまだお腹は痛かったが映画は見たいので席に戻ってくると、明らかに事件の鍵を握っているっぽい人物がなにか修道士に告白した(と思われる)のち、一人でスッキリしてしまっていたから脱力のあまり脱糞しそうになる。

いやそれは俺が悪いんですけどこのことから言えることが一つあるな。大枠としては聖事と政治を風刺的に対比させたモラルか実利か精神か肉体かというような映画ではあったが、人間やっぱり精神で肉体は克服できないですよ。これ面白かったからちゃんと全部見たかったけどお腹痛いの治らなかったもん。

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…みたいな感じのな! みたいな感じのせめぎ合いのお話だったんじゃないかな! いや、お前の腹事情とかどうでもいいよって思われるかもしれないですけど煎じ詰めればそういうジレンマの映画だったと思うんですよこれは!
つまりお腹痛いと! お腹痛いけどウンコ行っちゃったら映画見れなくなっちゃうしでもやっぱりお腹痛いし客席でウンコ漏らしたら大惨事だしだったらみんなのためにも映画を捨ててウンコ行った方がいい気もするしでも映画見たいしみたいな!

人には人のレベルに合った理解というものがありますからね! もうね、ぶっちゃけよくわかんなかったですよストーリー! ただでさえ知的ムードバリバリなのに15分も見てないんだからわかんないよそれは!
だから俺にとってはウンコの映画ですよ! なんか先進国の財相とかの人がみんなお腹痛いからウンコしたいって修道士に言うんですよ! そしたら修道士はお前はウンコしたらスッキリするかもしれないけどウンコされた側はどうなるんだよみたいなことを言うわけですよ!
でそれに対してはじゃあ映画見ながらウンコ漏らしていいのかよって反論がIMF専務理事とか財相連中から出るんだよ! これは難しい問題だよ! 非常に厳しい極限的な問題ですよね!

…そんな映画ではたぶんないがそんな風ではないとしてもそんなような、はぐらかしを食らう映画だったんだ。
どこを取っても均整の取れたアングルに白と緑を基調として場面ごとに統一された見事な色調がまったく素晴らしくー、オブジェと化してその美しい背景に溶け込む無機質な人物たちもシュールな趣があっておもしろい。極めてシンプルなのにやたらと絵になる死体も最高だ。

舞台となるホテルに向かう高級車をドローンで真上から撮り続けた冒頭の空撮からしてキューブリックの『シャイニング』を思わせる異様な完成度だからすごい映像美の映画なんですけどそこに、そこになんかブニュエル的な不条理真顔ユーモアが隙を見ては投入されると。ホテルを犬が徘徊してるとか。オッサンたちがプールで立ち泳ぎしながらガチ談義とか。

で、俺はそういうところに『不連続殺人事件』を連想して…『不連続』が変人の森で殺人の木を隠してたみたいに『修道士』は超美麗映像を見せつけることがトリックになってるっていうかさ、いやそこはネタバレしないけど…そのへん一筋縄ではいかない感じで面白かったな。

杖で浮遊のインド人ていうのもその場ではなんじゃこりゃってなるが、こういう感じの人を食った映画ですよーっていう前振りだったんじゃないのあれも。魔術に見えるけど魔術なんてないんだよインチキなんだよみたいな。
あるいはそれ一つで一挙に問題を無にできる奇跡的な解決策なんてないんだよ、みたいな。たとえ縋る対象が神だろうが紙だろうが。

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推理小説とか言われるとめちゃくちゃ違和感があるよな屁理屈小説だろうめちゃくちゃ濃密な屁理屈小説だろう。

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さるこ

「人を食った映画」!たしかに。世界を動かせるようなヒトが最期に修道士を呼んだのは良心からなのかと思いましだが、その修道士は善人でも何でもないと、最後に思いました。鳥も犬も従えた、あとは猿ですな。

映画の前には、トイレに行きましょう!鑑賞中にもよおすと絶望的ですよね。ホント、ホント…

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