熱海国際映画祭に行ってきたので雑感(含コンペ作品『東京不穏詩』感想)

《推定睡眠時間:0分》(『東京不穏詩』)

熱海行くの初めてだ、と思ってたんですが寛一お宮の劇のようなものを子どもの頃に観た記憶があるから行ったことがあるらしい。楽しかった記憶はとくにないので子どもにはあんま楽しい場所ではなかったんだろう。
それを言ったらもっと子ども向けのディズニーランドもナムコナンジャタウンも連れて行ってはもらったが別におもしろくはなかった。
おもしろいものをおもしろがるにはスキルがいるな。今なら傍目にはどんなにつまらない場所に行ってもそれなりに自分の中でおもしろく咀嚼できるだろう。ぼくもおとなになりましたよ。

熱海国際映画祭と大看板をブチ上げているが率直に言って看板に見合ったイベントだとはそもそも思っていないので、もし次があるなら改善した方がいいんじゃないかという点も多々あるが、でもおもしろい映画祭でしたね。
これを書いている時点ではまだ最終日が残ってるので過去形で書くのはどうかと思うが俺の熱海国際映画祭は終わりましたからまぁいいでしょうよ。一日しか行ってませんが。

で、なにがおもしろいって熱海で映画祭をやるっていう、もうそのコンセプトに尽きた。東京在住者なので以下あくまで東京目線ですけれども行こうと思ったらサクっと行けてサクっと帰ってこれる距離じゃないすか、熱海。
でも街全体がテーマパークみたいな観光地。そこそこ綺麗な海があってそこそこ綺麗な山があって、それでそこにオモチャみたいに配置されたホテル群や観光名所があって、日差しは強いけれども湿度は低いから過ごしやすくて。

上映設備とか集客のしやすさを考えたらそれは確かに東京とか都市部でやった方がいいんですよ、映画祭。でも東京でやる映画祭なんてなにもおもしろくないよね。
東京の映画祭というのは作品やイベントそのものを個別に観に行く感じにどうしてもなってしまって、観る作品とかイベント自体はおもしろいかもしれないけれどもフェスティバル感とかはないじゃないですかあんまり。そうすると映画祭の本義から外れちゃうよなとはずっと思ってて。

だから熱海で映画祭をやるっていうのはちょうど良いんですよ。程よく近くて程よく非日常。しかも夏に開催する場合は避暑にもなるわけでしょ。いいじゃん。映画「祭」って感じだよ。俺はこういうのが欲しかったんですよ。

第一回に関して言うならたとえば、公式サイトに載ってる会場マップに各会場へのアクセスや縮尺の類が書き込まれていないので来訪者には距離感が掴みにくい、という俺的にはかなり致命的な運営エラーがあったりした。
映画祭というからにはハシゴ鑑賞を前提としているはずですが、そうなると映画祭の場合は上映前予告の猶予がないわけだから予定を組むのが結構シビアで鑑賞数が減っちゃう。

これは客も運営側も望むことではないだろう。そもそも各会場の位置や建物の種別がバラバラで分かりにくいし駅から遠いという根本的な問題がある気がするが、そのへんは止むに止まれぬ事情だと思われるので、せめて分かりやすいマップが欲しかった。
マップを書き換えるなんて会場を変えるよりは遙かに手間がかからないわけですから(手間には違いないとしても…)

とはいえグーグルマップという文明の利器もあるのでそれを頼りに会場に向かう。俺が映画を観たのはホテルの宴会場を即席シアターにした会場だったのですが、着いて困ったのはどこで上映を待てばいいのかわからない。
いやそんなもん各自勝手に待てよという話かもしれないがこのホテルは営業中で、ロビーもかなり狭い方。となると宿泊客に邪魔になったらいけない。でも邪魔にならない待機スペースがない。

公共施設ならともかく民間企業のホテルなわけでしょ。映画館のない熱海で見つけたせっかくの会場も本業の妨げになると判断されたら来年以降協力が得られるか怪しくなってくるんじゃないの。
根本的な解決にはならないとしても入場整理券の事前配布で客の待機問題はある程度回避できるように思われるが(おあつらえむきに広い公園が近くにあった)、そのような措置は取られていなかったっぽい。
上映の他にトークイベントにも足を運んだがその会場が熱海芸妓見番歌舞練場。趣があっていいが、前述の待機問題によりここでは狭い路地に大行列が出来てしまって車両の通行の妨げになったりしていた。

ところでこれら会場で上映される作品のうち幾つかはスカパー提供の無料上映だったのだが、これが多少変わった形式で一日パスや全日パスを持った客を先に入れて、それでも席が残ったらその分だけパスを持ってない客に無料で開放するという形。
いいのだけれど会場のキャパが事前にわからない。かつ整理券システムも未導入ということはパス無しで観ようとする人にとってはかなりバクチっぽくなるのでは。
これも整理券で解決できる問題だと思うのでそれほど整理券の導入が難しかったのだろうかと疑問符がぷよぷよ出る。素人目には簡易でポピュラーな解決策に思えるが。

各上映会場の現場スタッフ間でどうも情報の共有がうまくいっていないというのも感じたがこのへんは初回だしこんなものなのではと許容範囲。
上映本数が思ったより少ないのでパスを買う旨みがあんまり感じられないというのもまぁ初回だしで流せる。レッドカーペットが云々みたいな時代錯誤な発想には辟易させられるが別にいいか、自分が見に行くわけでもないし。
公式サイトのスケジュール、特に短編の上映スケジュールが極めて見にくいというのも来年はきっと改善させるだろう。

以上、これはどうなのポイント列挙。クラウドファンディングとかやるなら数千円ぐらいは出せますからなんとか、なんとかそのへん…あと『ヒルコ/妖怪ハンター』の客層と怪獣トークショーの客層は結構被ると思うのでタイムスケジュールが重なるのはもったいなかったんじゃないかと…後者は主催がまた別のようですが。
ちなみに各イベントとか上映の形態に関しては多少思うところもあったものの盛り上げよう盛り上げようとする気概が4DXで伝わってきてトータルではどれも楽しかったので、それについては何も言わない。

で、せっかくなので一本だけ観た長編コンペ作品『東京不穏詩』のミニ感想。なんすかね、絵面があまりに90年代後半でとても今年去年の新作映画とは思えず、荒んだ都会の描写など込みで出来はともかく豊田利晃『ポルノスター』みたいな映画と感じたが、『ポルノスター』の英題は『Tokyo Rampage』であるからタイトルセンスまでなんとなく90年代後半的であった。塚本晋也の『東京フィスト』とかな。

なんか女優志望の歌舞伎町売春ホステスがいて(その設定がもう90年代後半ぽくない?)、その人が酷い男どもに酷い目に遭わされえ壊れていくノワール系の映画なんですが、そうねぇ…あけすけな性描写とか突発的バイオレンスとか情動芝居の長回しでセンセーショナルな効果を狙ったんだおもいますが、ぼくそういうのめっちゃダセェじゃんと感じるタイプなので…。

東京と言いつつ主人公の女の人が田舎に帰ってからの方が全然おもしろく、プロレスラーみたいな主人公の父親の生臭さとか、主人公の幼馴染みのリアルな現場仕草(「あと一袋ねー。あぁもう二袋」の自然さ)とかは良かったのですが、まず主人公の大仰お芝居にノれてないし、その彼氏でTRFのSAMみたいな人(これもまた90年代後半的な…)は台詞が聞き取れないし、台詞は単調で面白味がない、それに最後のあのシナリオの投げ方は…と全体的にはあぁ厳しいなぁ、おもしろいところはおもしろかったけど全体的に厳しいなぁという映画だったのですが。

終わった後に客で来ていた関係者と思しき方々の拍手が巻き起こりやがった。いやそら別に拍手したかったら拍手すればいいさ。良い作品と思ったら拍手すればいいですよ。
でもインディーズ系映画の関係者馴れ合い拍手、あれ最悪だから。あれマジ最悪だから。あれが見たくないばかりにあれが起きそうなインディーズ映画上映は行かないから俺。

あんなもん糞です。すこしも作品に対する敬意がないじゃないですか。感動もないじゃないですか。愛情もないじゃないですか。もし愛情があるとしたら映画じゃなくて自分と自分たちに対してじゃないですか。
まったくうつくしくない。いつどこで見てもみにくい光景。作品を作品として見ていない。すこしだって真剣に作品と向き合おうとしない。
俺が確認した限りでは途中で寝てたやつもキッチリ拍手してやがったがふざけるな。なんとなくで拍手をするな。寝ても別に構わないと思うけど適当な拍手で良い観客になろうとするな。

そのせいで五割増しでこの映画が嫌いになったので作品のことを思うのならマジで関係者拍手やめてくれとおもう。そんなインディーズ映画はもれなく嫌いになります(お前らどうせ俺みたいな客は相手にしてないだろうけどな!)

【ママー!これ買ってー!】


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塚本晋也の『ヒルコ/妖怪ハンター』も上映されていたので。なんかでも空気感とかちょっと通ずるな『東京不穏詩』とは。ボロボロになっていく身体とか。

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Cica
Cica
2019年3月14日 5:03 AM

面白かったです。熱海映画祭にエントリーするのはやめました。おかげさまで。