サイバーアクション映画『蜘蛛の巣を払う女』観てきたぞ!

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《推定睡眠時間:0分》

スーパーハカーのリスベットが大活躍するお馴染みのシリーズの最新作ですがいやこれはなんというかすごい映画で…別に原作ファンじゃないんですけど一応本国スウェーデンで製作されたノオミ・ラパス主演の1作目『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』とその2本の続編、『ミレニアム2 火と戯れる女』と『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』は観ていて、原作の人はその3部作書いた後に亡くなってるからオリジナル『ミレニアム』のストーリーはこれで一通りフォローしてるっぽいんですが、どれも基本暗いしあと地味。

特に2本の続編がそうだったと思うんですけどあくまでミステリー(法廷劇でもあった気がする)に軸足を置いた作りになっていて、リスベットの私的なドラマであるとか心情の変化を織り交ぜつつも、そのキャラクターは物語を前に進めるための謎めいた安楽椅子ならぬラップトップ探偵としての面が強かった。
代わりにタイトルにもなっている雑誌“ミレニアム”のライターが狂言回し的に奔走。デヴィッド・フィンチャーが監督したハリウッドリメイク版とその続編らしかった今作だとタイトルから「ミレニアム」の文字は消えてしまうわけですが、オリジナル3部作はあくまで京極堂シリーズにおける京極堂的な意味で「ミレニアム」の物語だったわけです。

で、その路線は前作のフィンチャー版だったらまだ踏襲していたのですが(原作同じなので)、これ今回は原作が別の作家の手になるものだし主演も監督も変わったから完全に放棄されてた。
それでどうなったかというと『ダークナイト』みたいになってました。冒頭、リスベットが女に酷いことをする悪い男をやっつけに行く。悪者屋敷に置かれた天使像の前に立って悪い男を睨みつける姿はさながら堕天使。

首尾よく悪い男をやっつけてリスベットはその場を後に。バイクで夜の街を疾走するリスベットをカメラが鳥瞰しながらテレビ音声。「あのリスベットがまた現れました…」「被害者は性暴力の加害者…」「リスベットは天才ハッカーで…」バットマンだろ。それバットマンとかの孤独系スーパーヒーロー映画でよくある演出だろ。
確かに「ミレニアム」の名はもう冠してないし、なにはともあれキャラクターを立てるというのがハリウッドの基本作劇、「ミレニアム」とミステリーに拘泥せずリスベットのキャラをどーんと推していくのは分かりますがスーパーヒーローになるまで推すのはあのオリジナル3部作からするとあまりにギャップが…そこが、すごかったですね。

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とにかくまぁハリウッドナイズ、アメリカナイズとはこういうことかみたいなある意味教科書的な映画で、たぶん監督の人、『ドント・ブリーズ』撮った人ですけど北米とか中国とかの大きな市場向けに痛快な内容にしてくれみたいな制作陣の要望にすげえ真面目に応えたんじゃないすか。
これが初の大作っぽいから失敗できないってプレッシャーがあって、まだ立場的にも弱いからそんなに意見も通らなくて、なによりハリウッド映画の娯楽アクション志向と自分の得意とするところがそこそこ噛み合ったから上手い具合にスーパーヒーローアクション的にまとまっちゃったみたいな…そういう感じじゃないかなぁと思うんですが。

面白かったんですよ、ヒーローアクションとして。ケレン味に満ち満ちたコミック的な画面構成がまず良いし、とにかく息つく暇もないアクションとサスペンスとびっくり展開の連続。ミステリー的な余白を粗大ゴミに出したから編集はシームレス、観ている側に考える余地など与えず淀みなく流れていくからノンストレス。
細かくカットを割った丁寧な屋内アクションと大掛かりな舞台装置を駆使したダイナミックな屋外アクションの対比も素晴らしかった。アクションの種類も豊富でカーチェイス、カークラッシュ、爆発、近接格闘、銃撃戦(近距離と狙撃の2種)…と香港映画もかくやの大サービスっぷり。興奮してしまう。

個人的にはリスベットといえばやはりオリジナル3部作のノオミ・ラパスであるから他の誰がリスベットでもピンとこないのですが、クレア・フォイの演じた今回のリスベットは凶暴なノミラパ・リスベットと比べて単純に腕力と胆力が弱い、前作のルーニー・マーラ・リスベットと比べるとパンクスピリットとクールネスを感じない、つまりキャラが弱い。
それが逆に今回のリスベットの魅力になっていて、この人は天才ハカーである以外はわりと普通女子。暴力男どもと戦う普通女子…というのはMeTooも踏まえた上でのあざといキャラ造形にも思えるが、弱々しいからこそ感情移入ができるというのも道理。続編ではあるがシナリオはヒーロー誕生譚の形を取っていたから普通女子であることに意味があるのだ(ヒーローに成ったクレア・リスベットは凜々しかった)

うん、面白かったけどやっぱこれ完全に俺の知ってる『ミレニアム』と違う。ガスマスク付けたヴィランまで出てきちゃったもん、それはもう絶対違うよ。
リスベットがハッカーというよりは電子機器を自在に操る能力を持ったスーパーヒーローでしかなくなったとはいえ、一応サイバーサスペンス的な興趣もあるが、『ミレニアム』を飛び越えてほとんど『ゴースト・イン・ザ・シェル』の域。
当たらなかったハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』をコンセプトはそのままに原作を付け替えてアクション倍増で撮り直したかのような映画だったが、ハリウッドのことだからそれもなんとなくありそうな感じではある。

そういう映画として観ればいいのかもしれない。俺は途中からそういう映画として観ていたが、いやそれはいいのですがこれだけはやっぱダメなんじゃないかって思うところがあって、ダブルミーニングな原題の『THE GIRL IN THE SPIDER’S WEB』をなんでミスリード気味な『蜘蛛の巣を払う女』の邦題にしたんだろうっていう…ストレートに『蜘蛛の巣に囚われた少女』で良いと思うんですよねっていうか、そうじゃないとラストシーンがさぁ、活きないじゃんさぁ…。

【ママー!これ買ってー!】


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やっぱ初代が一番いい。それにしてももう10年前の映画です。ぎゃあ! 光陰矢の如し!

↓前作と原作

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ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ラ 19-1)

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さるこ

とっても面白くって、前作たちと原作を追いかけたくなりました。
地下駐車場で車をパクる(んですよね?あれ)時、全部のくるまのキイが開いちゃったのと、少年が「この車!」と選んだ(んですよね?あれ)時の「これにすんの?」ってリスベットとのアイコンタクトが、ツボでした。