地下鉄ホラーオムニバス映画『怪速急行■■行き』感想文

《推定睡眠時間:40分》

タイトルは文字化けではなく正式名称なのだが、いったいこの電車はどこへ行くというのだろうか。似たタイトルの映画なら『ゾンビ特急地獄行き』というのがあるが、こちらは地獄に行くことが確定である。ゾンビも出るしコサックも来るし宇宙類人猿も暴れるが地獄に行きたい人は乗ればいいだろう。しかしこちらは『怪速急行■■行き』。どこなんだ。どこに向かうんだ。軟弱都民なので23区の外に出ると電車がもうどれがどこへ行くのかまったくいつもちょっと泣きそうになるが、そんな俺には少しハードルが高すぎる『■■行き』である。都心に出るつもりで乗って河口湖まで行っちゃったらどうしよう。

さてこの映画、いろんな事件の起こる韓国の地下鉄駅を舞台にした都市伝説系地下鉄ホラー。例によってホラー系のYouTuberが突撃するわけだが、この人自身が怖い目に遭うのではなく(最終的には遭う)、映画の大半は駅長を買収して聞いた駅で起こったこわ~い話を映像化したもの……というわけでオムニバスホラーである。頭をガンガン車窓にぶつける女幽霊に遭遇した人の話、人食い自販機で一稼ぎする人の話、美容系YouTuberの前身が崩壊する話、等々。いろんな恐怖が観られてたのしい。

韓国の地下鉄を舞台にしたホラーといえば『オクス駅お化け』という先行作があるが、良くも悪くも案外オーソドックスな幽霊譚だった『オクス駅お化け』に比べると、こちら『怪速急行■■行き』は邦題からしてそんな感じだが見た目のインパクト重視。オムニバスホラーだしストーリーがどうとかというよりも人食い自販機だの発疹から花が咲くだのというアイデア一発勝負である。韓国はウェブトゥーン(ネット漫画)が非常に発達している国だといい、『整形水』『怪談晩餐』といったウェブトゥーン原作のホラー映画も生まれているが、『怪速急行■■行き』の細かいことよりもインパクトのあるややグロの絵面で勝負する感じであるとか嫉妬みたいな人間のネガティブな感情をネタにする感じはウェブトゥーン世代に向けたホラーの観だ(もしかすると原作がウェブトゥーンなのかもしれない)

一応最後の方は『ミッドナイト・ミートトレイン』の影響を感じさせる展開になるとはいえ、それはあくまでも何かオチをつけなきゃなってなもんで、まぁ大したお話ではない。大したお話もなければ大した教訓もない(あるとすれば人を買収してはいけないというぐらいだ)、場面場面が怖かったりグロかったりするだけで観たところで大して得るものもない。こういう映画は良識ある大人からは相手にされないだろう……が、夏に観るホラー映画なんてこんぐらいでイイじゃんっていうか、最近の日本とかアメリカのホラーなんかろくに考えてもいないくせに無駄に社会派ぶろうとしてたりしてムカつくので、こういうある意味無邪気なホラーには好感持っちゃうな。だって別に社会問題とか考えるためにホラー観に行ってないもん。わー怖いの出てきたーわー怖い、ってそれだけいいんじゃないのBC級のホラー映画なんか。

あと観てて思ったのがですね、韓国の地下鉄だいたい日本と同じ。電車内の広告の感じとかプラットホームの電光掲示板の感じとかアナウンスの感じとかこれ南北線でロケしたの? って思っちゃったほどである。よく知らないがイギリスとかドイツとかとアメリカなんかと比べれば韓国とか台湾とかシンガポールとかそのへんの地下鉄は相互の技術交流などもありおそらく日本の地下鉄とあまり作りに差がないのかもしれず、海外のホラー映画というのは文化が違うので怖さを感じにくかったりするものがあるが、『怪速急行■■行き』の場合は舞台が近所の地下鉄に見えてしまうので「お化け出るかもしんないから終電乗りたくないな~」みたいな怖さを感じやすくてよかったし、なにやらいろいろと国単位では揉めたりもするが、なんだかんだ日本と韓国はお隣さんですなぁと親近感である。

案外こういう映画が日韓友好にささやかながら寄与しているのかもしれないと思えば、低俗ホラーというのもバカにできたものではないのだ。低俗ホラーとかつい書いてしまったが。

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