羅刹大宴会映画『神社 悪魔のささやき』感想文

《推定睡眠時間:0分》

いやまぁたしかに神社が出てくる映画ではあるのだがだとしても『神社』なんて邦題にされたら全国の神社を巡るマニア向けBGVかと思ってしまうしというのはややウケ狙いの発言だとしても『神社』と聞いて観に行きたくなるホラー映画ファンがいったい世の中にどれだけ存在するというのか……? サブタイトルに『悪魔のささやき』とあるからかろうじてホラー映画っぽいと判断できるものの、とはいえ『神社』。英語タイトルが「THE SHRINE」(聖堂、聖廟)なので素直にそのまま日本語化しただけとも言えるが、せっかく悪霊も血もいろいろ出てくれる映画なのだから、ここはやはりもっとホラー映画が好きな人が観たくなるような邦題にしていただきたかったところだ。そうだな俺なら『羅刹大宴会』にするね。なぜなら羅刹(ラクシャーサ)が出てくるし監督が『鬼畜大宴会』の熊切和嘉だから。え、熊切和嘉なの!?

そこに驚くこの映画。日韓コラボということで舞台は神戸だが出資は韓国の韓国映画、キャストもスタッフも日韓役者入り混じり言語も日本語とハングルがナチュラルに同居する。昨今は入江悠の『聖地X』や高橋洋と白石晃士が携わった『オクス駅お化け』など日本の映画人が韓国で映画を撮ったり、また逆に韓国の映画人が『破墓』のように日本を舞台として出してきたりと、ホラー映画界では日韓交流がさかん。ということでこの『神社』もそんな日韓交流ホラーの一本なのだろうな。ホラー映画で人々が国境を越えて仲良く協力とは実に平和でよいことだと思う。

熊切和嘉がどの程度韓国に馴染んでいる人なのかは知らないがかなり馴染んでいても母国外の資本とスタッフで映画を撮るのは結構いろいろ大変なことなのではないだろうか。それも関係しているのかいないのか、熊切和嘉のカラーといったら基本的には鬱屈した青春ドラマ、最近は『#マンホール』みたいなウェルメイドなジャンル映画(これはおもしろかった)も手掛けたりしているものの、出世作が68年学生運動の内ゲバを主題にした陰鬱な青春バイオレンス『鬼畜大宴会』なのだから本領はやはりそういう映画だと思うのだが、『神社』はそうしたところがほとんどない比較的ストレートなオカルト映画だった。そのへん、初の韓国映画で自分のカラーを出すのは難しいと思われるので、らしさは抑えて職人に徹したということなのかもしれない。

なんて風に思っていたのは途中までで終盤はじめじめした感じの狭い空間で凄惨なバイオレンスを交えた殺し合い、そこに至ってやたらとドロついた人間関係も開陳され、そのためにシナリオの焦点が定まらなくなった気もするが、『鬼畜大宴会』をちょっとだけ彷彿とさせる暗い青春っぷりに嬉しくなってしまった。いやべつに『鬼畜大宴会』が大好きというわけではない。どちらかといえばタイトルのスケールのデカさに反してずいぶんこぢんまりした映画だなとガッカリしたような記憶さえあるのだが、ガラの悪い廃墟神社に行った若者たちが何かに憑かれて次々と命を落とし……という王道オカルト展開に加えて終盤は味変的に暗黒青春バイオレンスも観られると考えれば、やよい軒のおかわり自由定食のようなそのお得感とサービス精神に嬉しくなるのも当然であろう。散弾銃を手にしたバトルババァとかサービス精神以外の何だというのか!

スタッフ・キャストが日韓混合ならジャンルもホラーとバイオレンスと暗黒青春の混合型だが、それに留まらずプロテスタント、仏教、神道、朝鮮シャーマニズム(ムーダン)と登場宗教もごちゃ混ぜのシンクレティズムっぷりも面白いところかもしれない。神社関係ないやんけと言われればまぁそれはそうだ。神社はほぼ関係ない。いやそれを言ったらぶっちゃけプロテスタントも仏教もムーダンもあんまり関係ないというか、各登場人物の表面的なキャラ付け程度にしか機能していない気がするのだが、ま、とはいえですね、『来る』ほどではないとしても、こういうのはお祭り感覚があってなかなか楽しいもんである。

といろいろ書いたが基本的にはウェルメイドな韓国B級オカルト映画。いろいろ要素が詰まってて飽きないがこの設定ならもっとはっちゃければいいのにな~妙に真面目なところあるんだよな~と微妙にムズムズするあたりも含めてのB級である。そんなに深く考えることもなく漫然と観ていたらなんか思ったより面白くて得したみたいなそういうたぐいの映画であるから、気楽に観てもらいたい感じだ。そのためにも邦題はやはりもう少しキャッチーな方がよかったと思うのだが……。

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