《推定睡眠時間:0分》
この映画とかあと『トリツカレ男』とかもそうなのだが最近インターネットで「絵のクセは強いけど面白いよ~」みたいな褒めをわりあいよく見かけて、いや、それでいいのかよ? っていうか、その言い方だとまるで絵のクセが強いことが悪いこととかハンデであるかのようではないか。そう思う人がいるということは「かのような」ではなく実際に興行的なハンデになってるのかもしれないけど(これと同じSTUDIO4℃が製作した『Chao』も野心的なアニメで面白かったがお客まったく入らず興行的に大失敗した)、そうだとしたらずいぶん貧しい状況と言わざるを得ないだろう。だってアニメの絵なんかクセが強くて当たり前じゃんか。昔のテレビアニメなんか作品ごとに全部ぜんぜん別の絵でしたよ。実写と違ってアニメは絵を自由に描けるんだから、むしろ他のアニメと変わらないクセの無い絵を描いてるアニメの方が芸術的な観点から言えば創意の不足をマイナス点として指摘されるべきだろまである。
こういうのはもしかすると観客のハズレを引きたくない心理の表れなのかもしれないなぁ。クールジャパンでアニメ立国だとかなんとかエライ人たちは軽はずみに言うが、観客が同じような絵のアニメしか求めない状況があるなら、それを改善するための施策を打つことの方が海外にアニメを売り込むことよりも長期的に見れば重要だろう。『AII YOU NEED IS KILL』は宇宙生物との戦いの中で同じ一日を繰り返すことになった少年少女を描くループものSFだが、その主人公ふたりが明日を求めて、そして自分自身の変化を求めて同じ一日からの脱出を希求するように、アニメの観客にも同じアニメではなく毎回違うアニメを見たくなってもらうこと、これが今おそらく必要なことなのである……話題の接続があまりにも強引!
でも案外それは要点を突いているかもしれないと思ったりもする。なんの要点かって今のアニメ観客がこういうアニメを観たがらない理由で(ほとんど話題になっていないしお客もまばらだった)、絵だけじゃなくストーリーであるとか世界観がこの映画は観客のハートにヒットしていないんじゃないだろうか。どうも原作小説およびハリウッド実写映画版とはまた違った風に脚色されているらしいのだが、これはループものであると同時にいわゆるひとつのセカイ系、詳しくは描写されないものの結構恵まれない生い立ちを背負った主人公はこんな世界ぶっ壊れてしまえと願っており、そんな時に『ウルトラQ』のマンモスフラワーとか『ガメラ2 レギオン襲来』の草体のような宇宙巨大植物がなぜか木更津に飛来(木更津設定の意味は最後までわからなかった)、この宇宙巨大植物の伐採作業にボランティアとして携わっているうちに宇宙巨大植物からエイリアンが出てきて死ぬ&ループとなるわけで、「こんな毎日から抜け出したい!」の気持ちが主人公の行動を牽引しているわけである。
でも今のアニメ観客とかは見慣れた絵しか観たくない。ちょっとでも個性のある絵を見るとクセが強いなぁと敬遠してしまう。ループもののアニメとか映画が観客にウケるとすれば観客の側に「同じものはイヤだ!」という気持ちが少なからずあるからなのだから、見慣れた絵と違う絵を避けるような「同じものがイイ!」の観客に、同じ毎日からの脱出を希求するこの手のループものSFというのはピンと来ないのかもしれない。と、まぁ、そんなことはどうでもいいのだが……!
おもしろかった。原作もハリウッド実写映画版も見てないからそっちはどうか知らないけどジュブナイル系のループとしてちょっとこぢんまりとはしているが(木更津なので)良く出来てたんじゃないすかね。主人公の戦闘系少女(ずっとキレ顔)もカッコイイし、なかなか個性的でポップなメカデザインも楽しいし、エイリアンが一種類しか出てこない上に動きに乏しいのはちょっとつまらないが(アクションは躍動感にあふれてすごく良いのだが)、巨大宇宙植物ともどもまさに異世界からの闖入者というデザインにはなかなか戦慄させられる。印象的なのは走るショットが多用されることだな。走る、走る、とにかく走る。アニメ版の『時をかける少女』とは逆でこの映画の走りはひたすら逃避の走りなわけで、中盤ぐらいまではひたすら逃げまくっているからこそ、その走りが反対方向に向きを変えて、明日への走りに転化する流れにはカタルシスがある。
あと色っすかね。宇宙からの異界植物といえばラブクラフトの『宇宙からの色』なわけだが、そのよくできた映画版の『カラー・アウト・オブ・スペース』であるとか、あとあれよ『アナイアレイション 全滅領域』なんかを思わせつつ、もちろんこちらはアニメなのでより大胆に表現された異常な色彩世界が見事。禍々しくて恐怖を感じさせる一方でその色はあくまでも明るく希望を感じさせて、そのアンビバレントは破滅と変化を同時に望むような主人公の心象風景のようでもあり、なんとも言い難い魅力を放っているのだ。
でもせっかくループしてるのだし個性豊かな同僚の面々とはもっと絡めばよかったね。ループものSFの映画でいうと『ミッション:8ミニッツ』が大好きなんですけど、あれは自分の殻に籠もっていた主人公が8分間のループを延々繰り返す中で、それまで興味を持てなかった周囲の人々と時限性の交流を持つようになる、というような映画だったので、これにもそういう要素を期待し……いや、それもまた「同じものがイイ!」の心理なのではないか? しまった! 俺もループしている!!!??
※主人公は朝飯を食わずにチョコバーで済ませる人なので先輩同僚に「たまにはメシ食えよ~ガキンチョ~」と毎朝言われており、それだけ言われてるんなら最後には朝飯食べるかなと思ったが、食べなかった。朝飯を食べないから力が湧かず殺人エイリアンに勝てないと思われるので朝飯は食べた方がいいと思います。