早く忘れたい映画『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』感想文

《推定睡眠時間:45分》

早く忘れたい! この映画の記憶をできるだけ早く忘れたい……! とにかくこういうものは目をそらしているから逆に意識してしまうとフロイト先生も言っているから忘れるためにこそ今こうやってとりあえずの感想をしたためているわけだが、ぶっちゃけ予告編を見た時点で「うわ~エグそうな映画だな~」とは思っていた。一時期「ほんとうは怖い○○」というみんなが知る童話のエログロホラー魔改造マンガみたいのが流行ったこともあったがこの『アグリー・シスター』はまさにあの世界、あこがれの白馬の王子さまに選ばれるために(母親からの玉の輿乗れ圧力もあり)ちょっとアホの子な主人公少女が麻酔なし出血ドバドバの激痛美容整形を繰り返し例のガラスの靴に自分の足のサイズを合わせるために肉切り包丁で足指を……とそんなものを見せられたらうへぇとなるわけで、グロい映画であることはそんな予告編から予想していたが、刺客はその外からやってきた。虫、虫、大量の蟲!!!

いわゆるゴア描写であれば汚いゴアはキモいとしてもまぁ見られるは見られるし、エレガントなゴアであればビューティフル、うつくしい! となるわけだが、虫……いや、虫も甲虫とか硬い系の虫ならそう苦手でもないのだが、やわらかい系とか細長い系とかの虫はもうカンベンしていただきたい。俺の朝ご飯は平日は納豆と決まっているのだがやわらかい系の虫は納豆を食べている時に頭に思い浮かべたりしてしまってゲロ気持ち悪くなるのである。この映画を観た後にもゲロい気分を切り替えるためにカッフェに寄ってケーキを頼んだのだがそこに乗ってるゼリーみたいなやつの食感にさっき見たばかりの映画の虫虫群団を思い浮かべてしまってたぶん人生で一度か二度目というきわめてレアなケースだと思うが残したからねケーキ。もー!!!!

しかし俺が大好きな映画といえばたとえばフルチの『地獄の門』とか『サンゲリア』なわけで、これはどちらもゴアも特盛りだが虫も特盛り、とくに『地獄の門』など映画史に残るウジ虫タイフーンのシーンがあるほどなわけで、おめー急にカマトトぶるなよとか思わず自分で自分に言いそうになってしまう。いや、違うんだな。それはさやっぱり撮り方の問題だと思うんです。たしかに『地獄の門』にはウジ虫タイフーンが出てくるけどなんだろうねぇ照明とか美術の効果もあってか気持ち悪い感じじゃないのよ、エレガントなのあのウジ虫タイフーンは。お話もちょっとメロドラマっぽいところがあって泣ける感じだしね(え)

でも『アグリー・シスター』の方は露悪的なエログロのブラックユーモア映画であって、もちろんそれはあえてのチョイスなのだろうが、とにかくずっと品がない。なにせ冒頭からしていたいけな主人公少女がご本に書いてあるシンデレラストーリーを読みながら白馬の王子様に抱かれる自分を想像して画面には映らないが怪しく腕が動いているからおそらくオナニーをしている、という夢を見ている場面であって、それを、これはブラックユーモア映画であるからいかにもバカっぽく描写するわけである。そのような映画であるから照明にしても美術にしてもエレガントさは志向しない。というかきたねぇなおい部屋も服もいろいろと。

要するに絵本などで美化された中世イメージを剥ぎ取って本当の中世ヨーロッパはグロテスクでカス! と嘲笑する映画なわけで、そのへんテリー・ギリアムの『ジャバーウォッキー』の系譜という感じもある。そこまでは良い。そこまでは面白いと思う。例の足指切断シーンでは一回でちょん切れずに指先がぶらぶら~と血をどくどく吐きながら足にぶら下がってるとかそういうゴアの見せ方もうへぇとはなるが良いだろう。だが……虫! その下品なトーンで虫があっちにもこっちにもぐしゃぐしゃとしていて最後には巨大回虫が口からゲロォォォォ!!! そしてその死骸をカラスがケンカしながら食う!!! フルチのような悪趣味アートとして美的にではなくエログロ満載の下品なコメディとして虫虫虫をやたらと撮られたらそんなもん観ていて気持ち悪くなるに決まってるだろう。

最近の映画にはポストクレジットシーンなどといってエンドロールが終わった後にオマケのシーンが付くことも多くなったが、ふつうポストクレジットシーンというのはオマケであるからして観客に対するサービスのはずである。しかし……この映画にもポストクレジットシーンが付くのだが、そこに映し出されるのはウジにすっかり食い荒らされた腐乱死体というわけで、サービスどころか観客に対する嫌がらせとしか思えない。まるで『ビヨンド・ザ・ダークネス/嗜肉の愛』などで知られるイタホラの悪趣味大将ジョー・ダマトの映画のようでもあるし、絢爛豪華な装飾と料理の中に血ゲロ吐き死体とウジウジが蠢く腐敗したタイトルバックはピーター・グリーナウェイの身も蓋もないバージョンとも言えなくもないのだから、その趣味の悪さは大したものかもしれない。大したものかもしれないが、ただ虫が本当にキモいので、俺としては早く忘れたい、もう一刻も早く、いや虫のシーンだけでいいから、いやでもその虫のシーンがかなり多いんだけれども、とにかくそこだけでも忘れたい一本であった……。

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