見るオバケ屋敷と思えば楽しい映画『変な家』感想文

《推定睡眠時間:0分》

ホラー映画で『変な家』などと言われればホラー好きの頭に古今東西さまざまな迷家が浮かぶだろうが俺の場合はウェス・クレイヴンの『壁の中に誰かがいる』であった。タイトル通り壁の中に隠し部屋があってその中に誰かがいるこの映画は壁の中の誰かよりもその家を建てた異常夫婦がヤバイという映画で、まぁそんなからくり屋敷みたいな異常ハウスを建てる夫婦は異常に決まっているのだが、この人らが侵入者を察知すると防犯シャッターを下ろし中に侵入者を閉じ込めた上でお仕置きスーツを着て出動したりするので、ある意味大人版の『ホーム・アローン』感もあり、変態で異常でかつ楽しく改善懲悪、なのにエログロもなしで全年齢対象という秀作。

他のホラー変な家としてすぐに候補に挙がるのはやはり『サスペリアPART2』の曰く付きハウス。この家、一見なんの変哲もない普通の家に見えるが、おやぁ? 外から見るとずいぶんとおかしな場所に窓がある…。その方向性の変な家だと『ヘルハウス』も双璧。家というか小さなホテルだがデヴィッド・シュモーラーの『クロール・スペース』も変態支配人が通気口を覗き通路に使い毒ガス装置で室内の人を殺すので変とかそんなレベルではない家であった。トビー・フーパーのリメイク版『ツールボックス・マーダー』はそのアパート版という感じである。最近のホラー変な家だとやはり『バーバリアン』。残念ながら配信スルーとなってしまったので知名度は低いが、一見普通にしか見えない民家が実は…からの転調のエグみが強く、変な家度もかなり高いので、これはホラー変な家に惹かれる人にはかなりオススメの映画である。

以上は西洋のホラー変な家だが日本のホラー変な家といえばやはり松竹版『八つ墓村』の地下に鍾乳洞のある家。そしておそらくはというかほぼ確でそれに影響されているのがこの『変な家』であった。コワイ話系ユーチューバーがひょんなことから入手したのは価格だけ見ればなかなかお買い得な一軒家の間取り図。しかしこの間取り図がどうもおかしい。まず台所と居間の間に変な壁があるようだし、子供部屋はトイレ備え付けで窓はなく入り口は不自然な二重扉とまるで監禁部屋。かくして動画のネタになりそうだしなということで変な家探訪に乗り出したユーチューバーは、やがて触れてはならない禁忌にそうと知らず触れてしまうのであった…。

原作は雨穴というユーチューブの人の書いたミステリ小説というが、まぁ映画向けにいろいろ改変された点はあるだろうとしても、ちょっとこれは苦笑いしてしまう。だってもう最初からおかしい。まずこの家の間取り図はユーチューバーおよびその相棒のクセの強い建築家(佐藤二朗)が検証するまでもなく誰が見ても尋常ではないし、身も蓋もない話だが不動産屋が売りに出してるわけだから間取りも何も元の家主が売りに出す時点でこの家に入った不動産屋の担当者が「いやおかしいだろ!」と気付くに決まってるんである。

なにせ二重扉になった子供部屋の扉には外側にナンバープッシュ式の鍵(!)が設置されてるくらいなのだ。そんな家を扱うなよと思うし、そんな家を売りに出すなよ。しかも中が至るところ傷だらけで血痕の残る(!!)ドイヒー現状渡し状態で! あちなみにユーチューバーはこの家の謎を解くためになぜか鍵の開いてる中庭から決死の不法侵入をしますがお前単にそれ内覧申し込めばいいだけだよ不動産屋にネットとかで!

中学生の書いたような展開はその後も途切れることなく続くが、驚いたのはユーチューバーによるこれら変な家探訪に実は物語上の意味がないということだった。この家の関係者だといいユーチューバーに変な家探訪を依頼し行動も共にしていたユーチューバーファンの女が映画開始から45分ぐらい経って突然告白。「この家の秘密はわたしの家の本家にあるかもしれません…!」だったら最初から言えや。なんだったんだこれまでの廃墟探検もの心霊動画みたいな展開は。ということで映画は変な家をおっぽり出して松竹版『八つ墓村』の方向へと向かうのであった。

原作ファンなら映画はこうだが原作はこうでと言いたいこともあるかもしれないがこの整合性の取れていなさと描写の稚拙さの度合いからすれば原作はいくらかマシだったとしても五十歩百歩ではあるまいか。ということでそんなもんは考えるだけ時間の無駄だ。ジャンプスケアも多く幽霊みたいなマスク怪人も不気味だし、これはもうこういう設定の映像オバケ屋敷として観るが吉。そう観れば過剰におどろおどろしいB級的なセットも怖くて良いし、冷静に考えればバカバカしい謎解きもストーリー型オバケ屋敷の謎解きイベントみたいな感じで楽しめる。腐乱死体なんかもウジが這ったりして結構ちゃんと作り込んでたしな。

本当は今日の仕事帰りは『恋わずらいのエリー』を観たかったのだが間に合う時間に上映がなくこちらになってしまった。でもこんなオバケ屋敷映画は金曜の仕事帰りにふにゃけた脳が観るにはちょうどいい。映画としてはあの悪評高い『事故物件 恐い間取り』の方が全然しっかり撮れているしちゃんと「変な家」の怖さも出せているぐらいだと思うが、こちら『変な家』の方は最後らへんにはチェーンソー婆まで出てきちゃってもう整合性とかそんなもんどうでもよくとにかくその場その場で怖ければよし面白ければよしのサービス満点見世物主義。何度も観たいとは全然思わないが楽しくてよかったですよ、はっはっは!

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ところてん
ところてん
2024年3月16日 3:24 AM

「変な家」と言えばやっぱ『墓地裏の家』も外せませんよね! 家の中にも墓があるって設定がキモくてたまりません。

パン毒
パン毒
2024年3月16日 8:53 AM

“変な家が出る映画”で自分が最初に思いついたのは、大林監督の「HOUSE」でした。

匿名さん
匿名さん
2024年3月18日 9:22 AM

原作読んでから行きましたが、間取りの画像以外全部別モンでしたw

匿名さん
匿名さん
Reply to  さわだ
2024年3月19日 10:58 AM

原作は映画でいう主人公にあたる人が電話なりインタビューなりして当人は現場に行かずとも徐々に真相に近づいていく感じだったんですけど、映画だと絵面的に電話かけ続けるわけにもいかずに謎の家凸かまして、尺の問題で駆け足になっててんやわんやでしたね。
原作のせりあがってくる人怖感が良かったので、ただのビックリ系ホラーになってて残念です・・・