【未体験ゾーン2024】8週目の感想文(映画3本)

前にも書いたような気がするが今年の未体験ゾーンはたぶん例年に比べて本数少なめ。そのぶんクオリティの高い映画が多めっぽい少数先鋭スタイルだったわけですが…終幕直前になってついに来ましたね、これぞ未体験ゾーンという映画たちが! こうしちゃおれん早速感想文に移りましょう!

『シークレット・キングダム ピーターの奇妙な冒険』

《推定睡眠時間:25分》

冒頭に世界観の説明は一応あるとはいえその後の展開にあんまり説明がなくかなりの唐突感があったのでこれもしかして続きものなんじゃないだろうか。テレビドラマでやったやつの映画版とか。続きもの(かもしれない)をさも単体映画であるかのように上映する…そしてその結果なんか不完全燃焼感が観た後に残る…うむ、これこそが俺の考える未体験ゾーンの映画たちだ! こんな未体験ゾーンを待っていたというわけではないがなんだろうねこういう中途半端に騙された感みたいのがあるとイイんですよ! なにがどうイイかというのは説明しにくいが…!

映画の内容は序盤以降は主人公の男子とその妹以外はほぼぜんぶCGという普通予算系ファミリー向けファンタジー。舞台は地底王国なのだが主要キャラはアルマジロで敵はなんか影みたいなやつなので魅力に乏しく、異世界の街みたいなのも出てこなかったっぽいのでワクワク冒険感もあんまりない。この映画の眼目はそこではなくちょっとした捻りのあるストーリーだったかもしれないのでそれでいいのかもしれないが、全部CGでも別にいいからもっと異世界を旅してるなー! みたいな場面とか展開がほしかった。ジャージャービンクスみたいな案内役のおしゃべりアルマジロは定番キャラながらわりとよかったです。

『ネイビーシールズ ラスト・ソルジャー』

《推定睡眠時間:0分》

主役の兵隊さんは監督も兼任(共同監督)しているのだがこの人の面構えに覚える既視感、その正体はチャック・ノリスとかロバート・ギンティであった。もうその時点で未体験ゾーンの映画としては満点だと思うのだが貧乏映画のくせに126分も無駄に使って主役兼監督の俺かっこいいを見せつけるのだから最高。演出もシナリオも平板で芸がなく大したもんでもないがアクションぐらいしかどうせ撮れないんだからアクションだけやってりゃいいのに深そうで別に深くないボソボソ声の会話がむしろ映画の大部分を占めてしまうというこの痛々しい勘違い! 会話→ドローン空撮(山と森)→会話→ドローン空撮(山と森)→会話→ドローン空撮(山と森)がひたすら続く空虚を埋めようと頑張って眠ろうとしたがこういう時に限って眠れなかった。

米軍のアフガン撤退直前2021年の設定でアフガンの山の中(アメリカにしか見えないが!)に一人残された主役米兵とタリバン兵との戦いているのでネタ的には現在公開中の『コヴェナント/約束の救出』と被るところがあるが、海外派兵された米兵を脳筋で美化するいわゆる共和党アクションがこんな低予算の俺様映画にも存在するのかと知れたのはこの映画を観たことで得た大きな収穫。その収穫物はどこに卸すというのか? 取引先はまったく見つからないが、しかしこのような発見のある映画はよい映画に違いない。俺様主人公は無限弾薬の上に百発百中でタリバン兵に当たるのにタリバン兵は百発撃っても俺様主人公には当たらずついに一発当たったかと思えばなぜかかすり傷というご都合主義やタリバンの村で展開されるサバゲー感満載の迫力がまったくない銃撃戦など、まったくもってどうしようもない映画だと思うが、そのどうしようもなさがたまらないという、じつに通好みの一本である。

『エブリワン・ウィル・バーン』

《推定睡眠時間:15分》

女の人が入水自殺しようとしてたら見た感じは安達祐実に似ている正体不明の女児が現れ女の人はとりあえず女児を連れて帰宅。しかしその女児、実は超能力で人を殺すサイキック女児だったのだということで女の人が暮らすスペイン田舎の小さな町は恐怖に包まれるのであった。

女児と書いてはみたもののこの人は低身長症の人で、どうも実年齢は中高生ぐらいな気がするのだが主人公の女の人は女児的に扱うし、『ゾンビ3』みたいに低身長症の人を子供役でキャスティングしているのかと思ったら具体的には言われないが低身長症差別が物語の背景にあるようなので、どっちなのだかよくわからない。しかしそんな細かいことはまぁどうでもよし、今時のホラーとしてはかなりのハイペースで人が面白く死にまくり、破滅へ一直線の展開をブチキレにブチキレで対抗するスペインウーマンズの怒声と暴力が加速する。スペインでは殴ったり頭突きしたりの暴力は骨が折れるぐらいまでは犯罪行為ではないので(※)主人公も主人公のライバル夫人も挨拶感覚でどつき合います。圧の強い映画だ。

物語自体は低身長症差別を絡めたものなので結構かなしいお話なのだがブラックコメディ調のシュールな演出に加えて↑のようなゴリ押しハイパワー展開なのでちょっと笑っちゃう。悲劇とホラーとブラックユーモアとバイオレンスの渾然一体となったカオスみはスペイン変なジャンル映画界の先鋭アレックス・デ・ラ・イグレシアの作風に影響されたものかもしれない。おもしろかったですこれ。

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