リブート版『ヘルボーイ』感想文(ネタバレたぶんなし)

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《推定睡眠時間:0分》

撮影監督が降板しただの監督とプロデューサーが対立していいるだのと撮影トラブルが伝えられ人気シリーズの最新作にも関わらず本国での興収は芳しくなくと事故の予感しかしない映画だったが蓋を開けてみるとこれが意外に…やっぱ事故っぽいのだった。

むかしむかしミラ・ジョヴォヴィッチ演じる魔女をアーサー王と魔術師マーリンがぶっ殺しましたとさとヘルボーイが語る回想パートから映画は始まるがその性急さと安っぽさ。監督のニール・マーシャルといえば俺の中ではあくまで『ドゥームズデイ』の人であるが一応『ゲーム・オブ・スローンズ』の演出家の一人なわけで、『ゲースロ』とまでは言わないがビデオスルーになってしまった史劇アクション『センチュリオン』ぐらいのリアル感というか時代の匂いがあってもよかったんじゃないかという気もするが、そんな余裕はまったく無かったように見える。場所もCG背景のセット丘(ぽい)だし急遽の追加撮影で説明用に無理矢理作ったような印象さえ受けるのだから冒頭からして飛ばした映画である。

でもニール・マーシャルが好き放題やったとしか思えない『ドゥームズデイ』だって大事故と受け取る人はいるからなぁ。好きにやっても事故になるのだからこれも案外ニール・マーシャルらしさなのかもしれない。撮影トラブル起因の事故なのか監督のカラーというのは事故なのかわからないというのはある意味強いですよね。事故に強い監督、ニール・マーシャル。名誉なのか不名誉なのかわからないが。

冒頭が飛ばしてるので次のシーンがメキシコに知り合いの潜入捜査官を探しに行ったヘルボーイがなぜかルチャドールになっていた潜入捜査官リング名カマソッソ(マヤ神話のコウモリ妖怪らしい)とプロレスを始める場面だとしても驚くが驚かない。まあそういうものだろうと状況はよくわからないが強引に見せてしまうニール・マーシャル節。その後も全編通して強引なので強引なシーンとか強引な描写が強引に見えない逆転の発想である。そういうもんだろうで感覚おかしくなってるのですごく安易に地獄の釜の蓋が開いて死者甚大イングランド壊滅となっても悲壮感とか微塵も帯びないのが良い。

思い返せば『ドゥームズデイ』もそういう映画だったからやっぱりニール・マーシャルの映画だ。リブートものだが『ヘルボーイ』のシリーズ作というよりは『ドゥームズデイ』に続くニール・マーシャルの来いよ終末第二弾として見たい。というか前の『ヘルボーイ』観てないのでそういう風にしか観られなかったのだが。

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ルチャも妖怪も超科学兵器もナチのオカルト陰謀も霊媒も変身妖怪も終末大虐殺もなんでもありの乗せられるものは皿からこぼれても乗せちまえのB級チャンポン暴走大会っぷりは面白かったがなんとなく乗りきれなかったのは『ヘルボーイ』観てなかったからだろう。基本、説明とかしないではい皆さんご存知の的にガンガン新キャラが出てくるので実家の法事でめちゃくちゃ盛り上がってる知らない親戚のオッサンオバサンたちを遠くから眺めてるような感じがなくもない。

この映画の場合はヘルボーイのキャラクターとか所属組織とか世界観の説明もないので(人間界には実は至る所に妖怪がいてその犯罪を取り締まってるのがヘルボーイたち、みたいな風に理解はしたが微妙に違うんじゃないだろうかと不安になるぐらい説明をしないのだ)、法事でいえば誰の何の法事で自分は何をすればいいのかさえわからないままとりあえず黒のスーツだけ着てオバサンなんかがバタバタと慌ただしく行ったり来たりしているのを尻目にそこらへんに座ってスマホいじってる感じである。端的に言えば半端ないアウェー感であった。

じゃギレルモ・デル・トロ版の『ヘルボーイ』を知ってればこういうノリに付いていけるのかというとどうもそうでもないらしく、『ヘルボ』ファンっぽい人たちの感想を読むとこれはこれでB級感が楽しいが…と歯切れが悪いことこの上ない。
そうか。そういうことでもないのか。なんて立ち位置の微妙な映画なんだニール・マーシャル版『ヘルボーイ』。デル・トロ版を観ていない以上は想像するしかないのだがあれじゃないですかね、デロ・トロはウェットな作風なのでたぶんそういうのが好きな人はニルマ版『ヘルボ』の人間ドラマの薄っぺらさにちょっとガッカリしたんじゃかろうか。仏作って魂入れずみたいな。仏作って爆破するのがニール・マーシャルだから。

説明の少なさはまぁ観ていればなんとなくわかるのでいいとして、妖怪と人間の狭間で苦悩しながら戦うヘルボーイのドラマはもう少しちゃんと見たかった、というのは確かにあった。でも、まぁ、いいか。楽しかったですよ変な妖怪いっぱい出て豪快に人がいっぱい死んで肉片いっぱい飛び散って。ロンドン大破壊はイエーって感じです。
ヘルボーイは軽口を叩きながら人の死体も妖怪の死体も掻き分けノリノリのロックサントラを背に終末へ進む。その陽性演出が話の重さを全然拭えてないので痛々しさがあるが、滑りと紙一重の痛々しさにヘルボーイの孤独が滲んで、言外のドラマを感じたりもするのだった。そこ、少しだけ沁みる。

【ママー!これ買ってー!】


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原作縛りがあるので『ドゥームズデイ』ほど突き抜けたところがないのはう~んといえばう~んなニール・マーシャル版『ヘルボーイ』なのだった。それにしてもこっちもウィルスで人類死んでるな。

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