【未体験ゾーン2024】7週目の感想文(『ポラリス 死闘のアイスロード』)

《推定睡眠時間:0分》

長かった未体験2024もいよいよ佳境。あんな映画あったな…こんな映画もあったな…だがそのすべてはやがて消える…雨の中の涙のように…消えねぇわ! なんで急に『ブレードランナー』のロイ・バッティのそれを演じたルトガー・ハウアーのアドリブと言われる最期の台詞になるんだよ! 配信とかで出るよ! っていうかU-NEXTとかでもう出てるよ!

なんて、クソ寒くセルフボケを展開してみたところで、これからは『ブレードランナー』を観たことのない世代も増えてくるでしょうから、そんな世代の人にとっては「?」なのかもしれませんね。ふふふ…切ない。『ゾンビ』と『ブレードランナー』と『燃えよドラゴン』が映画オタクの必修科目(※界隈による)だった時代はいよいよ過去のものとなりつつあるのかもしれませんね。ああ…俺死ぬのかな? まだまだ死ぬには若いとあくまでも自分では思うんですが、こんな風に映画世間が劇的に変貌していくのを眺めているともう浦島太郎ですよ。最近の若いもんはとかもう普通にツイッターとかで言うようになったもん。それはツイッターが悪いのでは? そうだね! たぶんそう! だって次世代SNSのBlueskyではそんなことほとんど言わないもん! やはりツイッターは悪! みんなでやろうBluesky!

というわけで(なにがだ)今週の未体験映画は一本、『ポラリス 死闘のアイスロード』でございます。こちらどのような映画かと言いますと人類文明は百年後くらいには崩壊してて地球全体がそうなのかそれともこの映画の製作国がカナダだからなのかはわかりませんが辺り一面雪が広がりホッキョクグマさんがゴロゴロしてたり氷河期の様相、辛うじて生き延びた人々は雪原に『マッドマックス2』の採油所みたいな集落を作って暮らしてたりするのでした。北極氷床の融解面積拡大に伴いホッキョクグマさんの個体数減少という悲観ニュースが日夜報じられる2024年現在なのでこの氷河期化は絶望未来の表現なのかもしれませんがなんか逆によかったねと思ってしまった。

それでそのホッキョクグマさんと行動を共にするどうも? ホッキョクグマさんに育てられた? オオカミ少女ならぬホッキョクグマ少女がいて、北極星と交信し赤く光る両手で人体を掻き切ったり逆に切創を治療できたりする不思議な能力を持つこの人がある日マッドマックス集落の連中に見つかって奴隷として囚われる。ウガー! 言葉は喋れないし人が近づくと動物的威嚇反応を見せる文明を知らぬこの少女であったが本能的にこれはマジでヤバイ! と故・叶井俊太郎のように直感し、集落からの脱出を図るのであった。かくして死闘のアイスロード、幕開けである。

山ほどある『マッドマックス2』パクリ違ったインスパイア映画のこれは一種と考えてもいいのだろうか? 主人公が野生少女なので『マッドマックス2』のようなカーチェイスこそ出てこないとはいえ、終末集落のジャンクアート感はやはり『マッドマックス2』の系譜、というか、今では荒廃未来のひとつの形として『マッドマックス2』型の原始退行社会はかなり一般化されてしまっているので、とくに『マッドマックス2』を意識しなくても似てしまったところがあるのかもしれない。

『マッドマックス2』の亜流系でいえば雰囲気的には『枯れ葉』大ヒット中のアキ・カウリスマキの兄ミカ・カウリスマキの『ラスト・ボーダー』に近い。こちらも寒そうな(フィンランドで撮ってるので)未来の原始退行社会を舞台にしているが派手なカーチェイスなどはなく、美術や衣装などは悪くないのだがどうにも見所に乏しい微妙な映画だった。それに比べれば『ポラリス』の方は超能力っぽい要素もあるしスノーモービル・チェイスも少しあるし森にある木が進化して意思を持つようになった…というか少女がその特殊能力で木と交信できるみたいなシーンも出てきて、なかなかいろんなオモシロを詰め込んだ感じである。

そうした独特の世界観は悪くないのだが、主人公が何を目指しているのよくわからないというか、いやまぁ北極星を目指しているようなのはわかるのだが、なんで北極星を目指しているのかわからないし、北極星がどうこの少女の救いになるのか、なぜ救いになるのかもわからないので、なんとなく掴み所がないというか、主人公と一緒になって「やってやるぜ!」みたいな気分になれないのが、この手の映画としては勿体ないところだったように思う。

それにこの主人公少女、本当に少女なので、ウガーと威嚇してもぜんぜん怖くなく、逆に可愛らしく見えてしまう。ファンタジーとしてならその人選はバチコンピッタシかもしれなかったが、終末アクションものとして捉えれば、やはり迫力不足の観は否めない。まぁ、でも、『死闘のアイスロード』なんてサブタイトルは日本の配給が勝手につけてるだけで、原題は単に『POLARIS』だし、オープニングも絵本風のアニメから始まるので、作ってる方は終末アクションじゃなくて『風の谷のナウシカ』みたいなファンタジーのつもりで作っているのかもしれない。最近公開された『風の谷のナウシカ』インスパイアの終末SF『VESPER/ヴェスパー』。あれほどオリジナリティのあるクセの強い世界観ではないですが、この『ポラリス』もそっち系統の映画という気はいたします。

せっかくのオモシロ設定をいまひとつ生かしきれていないようなところもあるが…ダラダラと無駄な会話が続くようなこともないし世界観も面白いので、結構楽しめる映画でしたねこれは。ホッキョクグマもかわいいし。

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