サンプリング幽霊サナちゃんシリーズ第三弾映画『だぁれかさんとアソぼ?』感想文

《推定睡眠時間:0分》

『ミンナのウタ』『あのコはだぁれ?』に続くサンプリングに熱中するあまり死してなお人を呪い殺してテレコでサンプリングしまくる音霊サナちゃんシリーズ第三弾にしてたぶんおそらくこれが最終章である。サナちゃんが暗躍したカセットテープ時代は今や遠い昔、少なくとも世間からは前作前々作で描かれたサナちゃん事件はすっかり忘却されていたが、その恐怖は「屋上へ続く階段の13段目でテレコに死んで欲しい人の名前を録音すると本当に死ぬ」という内容のタカヤサマなる都市伝説へと変形してどこぞの高校などに今も伝わっていた。もちろん主人公の女子高生もその暗黒おまじないを軽はずみに実行してしまい、さぁ霊界からサナちゃんがやってくるぞ、どうする、どうする! というのが今度のお話。

のっけからこんなことを書くのも気が引けるがこのサナちゃんシリーズ、なぜかまぁまぁ世間ウケはしたらしい気配なのだが個人的には良いホラーではないと思う。その要因はいろいろあるだろうがやはり大きいのはサナちゃんが怖くないというそこである。貞子、伽椰子に続くJホラーの新ヒロインの期待をかけてシリーズが3作も作られているのかもしれないが、サナちゃんは幽霊とはいえ普通に整った顔をした女子高生、まず見た目が貞子や伽椰子のように怖くない。

動物や人間の死ぬときの音をサンプリングするのが趣味なので性格はかなり最悪寄りだが、性格が最悪なのとそれが怖いかどうかは別の話だろう。生前のサナちゃんが死の音を集めるためにシリアルキラーになる映画だったらサイコホラーとして怖かった可能性もあるかもしれないが、オバケとなればサンプリング殺人の生々しい狂気も減じてしまう。せっかくサンプリングした死の音が劇中ではろくに使用されないのも怖くない所以かもしれない。サナちゃんが接近するとサンプリングされた音質の悪いネコとか犬とかの死ぬ音がどこからともなく聞こえてくる……みたいな演出があったら結構怖くて厭な気分にもなったと思うのだが(むろん良い意味で)

とそんな感じでシリーズたぶん最終章だが、今回はサナちゃんがねじ曲がって都市伝説化している設定のためストレートにサナちゃんが襲ってきた前2作とはちょっと趣が異なった。ポイントは「死んで欲しい人をテレコに吹き込むと本当に死ぬ」である。例によって無思慮な高校生どもが一人一人テレコに死んで欲しいヤツの名前を吹き込んでいくわけだが、映画の始まりの時点では誰が誰の名前を吹き込んだのかわからない。ということで本当に学内で人が死に始めると「あんたもしかして……私の名前を!?」みたいな感じで不和勃発、表向きは平和で楽しい高校生活を営んでいるように見えた生徒たちだが、実は一人一人なにかしら仄暗い思いを抱えていることがわかってくるのであった。

とはいえ中盤以降は結局サナちゃん退治のお話にスライドして学園不協和のお話はどこかへ飛んでいってしまう。サナちゃんシリーズたぶん最終章としてサナちゃんの物語に決着をつけようとしたのかもしれないが、なんだ結局サナちゃん退治か、とか思っちゃったなぁ。学園不協和の前半はそれなりに新味があったけどサナちゃん退治の後半は前作とあまりやっていることが変わらないだけでなく、微妙な設定変更によって前作前々作のストーリーとの整合性が取れなくなってしまった。サナちゃんパワーの不統一(何ができて何ができないのかよくわからない)はそんなんなんでもありじゃんという気になって緊迫感がないし、そのうえ登場人物が大した意味もなく無駄に多いので展開が散漫で盛り上がらない。どうせなら1作目からサナちゃんとバーサスしてきた探偵マキタスポーツを引っ張り出してきてサナちゃん相手に特攻でもしてもらえば良かった気がするのだが、そういう面白味のある展開は残念ながら無いのであった(カメオ出演は一応ある)

そもそもサナちゃんシリーズは(俺にとって)面白くないのでシリーズ3作目で急に面白くなることはそりゃないだろうけれども、前半の学内不協和パートはそれなりに面白かっただけに、なんかもったいない気がしてしまった。無理にサナちゃんを絡ませようとするから締まりがなくどこが見せ場かわからない映画になっちゃうんだから、それだったらいっそのことシリーズ外伝的な扱いにしてタカヤサマ都市伝説に端を発する学内不協和と友情の崩壊、高校生たちの建前と生々しい本音の乖離を徹底して見せるような映画にしてしまえば良かったのに。サナちゃんなんか終盤にチョロッと出てもらえばそれでよかったんじゃないすかね、成仏とかそういうのは諦めていただいて。

サンプリング幽霊とかいう新機軸をどうにも生かしきれないままシリーズが(おそらく)終わってしまうのは残念なような残念じゃないような気もするが、でもまぁ、これを観る限りそう伸びしろもなさそうだし、音霊サナちゃん劇場はこれにて閉幕ということで。『あのコはだぁれ?』の時は最初『ミンナのウタ』の続編であることを隠して宣伝してたわけですが、清水崇の最新作『八つ墓村』も実はサナちゃんシリーズだったとかそういうのはやめてくださいネ!

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