『リュミエール!』と『鉱 ARAGANE』の感想

写美ホールで見た『リュミエール!』はリニューアルオープンして日の浅いピカピカ施設の中で一層際立つ閑散状況。これは寂しい。そもそも写美に何か見に行くと映画でも展覧会でもまず空いている、まずまず絶対空いているからじっくり見るにはちょうどよいとも言えるがここでやったイルミナシオン映画祭の『ミニオンズ』を見に行った時に客が俺含めて二人のトラウマもあるのでじっくり鑑賞体制にも限度がある。

じゃあ人が多ければいいのかという話だ。ケイズシネマで見た『鉱 ARAGANE』は定員84人のミニシアターで7割程度の客入り、割合で考えればそこそこだがインディーズ系ミニシアターの例に漏れず所狭しとチラシの置かれたロビーが窮屈なので混雑はしている。狭い中でインディーズ映画の関係者っぽい人たちまたは常連が至る所におって談笑している。これはこれでまた別のつらさ、また別のアウェー感。

もっと普通の人、普通に見に行ってくれ。どっちも面白かったから…。

『リュミエール!』

《推定睡眠時間:3分》

リュミエール兄弟製作の映画約100本一挙お披露目。名前だけは聞いたことがある例のあれやあれもあれば近年新たに発掘されたものもある。やかましい講釈とかインタビューとかはない(音声ガイド的ナレーションはある)。一本あたり約50秒の短編をだいたい2時間ノンストップ繋ぎ。リュミエールのクラブミックス的コンピレーション。伴奏付きなので安心。

シネマトグラフ作ったから偉いというのはなんとなく知っているが見たといえば『ラ・シオタ駅への列車の到着』ぐらいなもの。リュミエールの名前は映像技術史には欠かせないとしてもその映画の方はあんま映画マニアっぽい人が言及しているの聞かない、聞いてもやはり映像表現の技術的側面(エッフェル塔の昇降機に載せられたカメラの上下動など)だとか結局は発明の一言に還元される通時的な文脈に留まることが多いんじゃないかという気がするので作品そのものに着目した映画は新鮮だ。やっぱ画で見てナンボでしょう、映画なんだから。

どういうのが入ってるかつーと幾つかのカテゴリーに分けられているが基本的には群衆を撮ったものと遊びを撮ったものが多い。都市はみんなの遊び場。映画はリアルをオモチャにするもの。とてーも伝統的なフランス的都市論・映画論の香りである。リュミエール兄弟がそれと意識していたわけではないと思うがこの映画はそういう視座。

ゆかいでたのしいリュミエール。撮影とか半ガチ半遊戯だから被写体の人もつい頼んでもいない過剰な演技しちゃう。ドキュメンタリーとかフィクションとかそういう垣根ないからリュミエール兄弟の方も平気で演出しちゃう。幼い息子が金魚と遊ぶ画が撮りたくて必死に演技指導(身体を揺すって強引に動かそうとする)するリュミエールとか微笑ましい限り。物語から解放された映画の自由なこと。

散水する男と子供のコントが2種類。ウケの良かった作品だったのでリメイクしたらしいがリメイク版を見ると構図とか演技とかなんか垢抜けていて、映画作家リュミエールであった。

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『鉱 ARAGANE』

《推定睡眠時間:8分》

諸々面倒くさいのでとりあえず“最初の映画”とされている『工場の出口』から『リュミエール!』は始まるがリュミエール映画もう一つの顔は『ラ・シオタ駅への列車の到着』なのだから工場と機関車とこれはインダストリアル、映画はまず初めにインダストリアル・アートであった。

ていうわけで映画の原点回帰なインダストリアル映画です。大友克洋のインダストリアル賛歌短編『工事中止命令』みたいになったボスニアの鉱山にカメラが入っていくがノイズがすごい、ノイズがすごい、ノイズがすごくて眠くなってしまった。眠るぐらいだからきっと良いノイズなんだろう。機械系の音ノイズもすごいが鉱山の中真っ暗だから映像にも嵐のようにノイズが乗ってすごい。

リュミエール兄弟オマージュ企画『キング・オブ・フィルム/巨匠たちの60秒』に短編を寄せているデヴィッド・リンチのライブ・パフォーマンスに『インダストリアル・シンフォニー#1』というものがあるが、『鉱』、まさにインダストリアル・シンフォニーって感じ。見るというかこれは浴びる。
通常上映でも充分うるさかったが大音響系の上映で見るともっとトリップできるんだろうな。ちなベストノイズは飯休憩中のオッサンの背後で鳴り続けるトライバルビート的なキュルキュルノイズでした。あれは高揚、MP3化希望。

ノイズも肉体も油も汗も剥き出しの世界を抜けると雪が降っていた。しんと静まりかえった冠雪鉱山を最後に俯瞰して約70分のノイズ社会科見学おわり。鉱山労働者の声を拾ってる部分はあるが、人とかモノの形と動きを記録することに特化した作りにリュミエールの系譜を見る。見ないこともない。
鉱山と鉱夫というのも廃れた題材。21世紀映画が置き去りにした20世紀映画のポピュラー風景を暴力的に掘り起こすかような映画だった。これはたのしい。

【ママー!これ買ってー!】


イレイザーヘッド-オリジナル・サウンドトラック・レコーディング

古典オマージュや引用の激しいリンチの工場フェチは部分的にリュミエールのオマージュなのではないか説。ていうかサントラあるのかよ。

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