《推定睡眠時間:50分》
以前は週5~6という怒濤のペースでこのブログを更新していたのだが最近は週3~4へと減ってしまった。それはやらないといけないことが色々と重なってわりあい今忙しいというのもあるのだが、俺にとってなんか面白そうな映画の公開本数が減ってしまったというのもある。ホラーとかアクションとかSFとかでまぁ長くても100分くらいのそういうやつが基本的には観たいのだが、まずジャンル映画の公開本数というのが最近は多くて週に2本ぐらいで、しょうがない(いやしょうがないということもないのだが)真面目なヒューマンドラマとかでも観るかとその週の公開作を眺めるとだいたいそういうやつは上映時間が120分を超えている。このへんおそらく韓国映画の劇場→配信への急速なシフトに加えてハリウッドの衰退、加えて日中関係の冷え込みを原因とする中国映画のソフトな撤退などが重なっているのかもしれない。
最近の映画館に増えたジャンルといえば社会派ドキュメンタリーとかである。ドキュメンタリーはたぶん好きな方じゃないだろうか。なぜならドキュメンタリーはフィクション映画と違って何も考えずにボケーっと観ていいものだから。え、とみなさん思われるでしょうか。いやでもドキュメンタリーって観るのが楽なジャンルだったよ、フィクション映画みたいに画面を作り込んだり凝ったシナリオがないから。でも最近の社会派ドキュメンタリーはなんというか、混沌とする世界情勢を反映してか、政治主張の強いものが多く……そうなると、その主張に賛同できるか否かみたいなところが入ってきてしまって、更に言うならその映画の主張に賛意を示す人たちのインターネット上での熱量とかがものすごいので(政治はいつも人を過熱させるのだ)、もうちょっと辟易してしまって。
そんなわけで、はぁ、今週も面白そうな映画がないなぁ……と思っていたところに飛び込んできたのがこの『ハードボイルド』、ポスターを見ればなんかだいぶ何度も見たことがあるような炎がドカーンみたいな背景にリーアム・ニーソンがドンと載っており、どう考えても午後ロー的な薄汚れた路上のヒーローが悪党を成敗するアレである。これは観たいだろう! ということで何も考えずに劇場に入ったところ、意外やアクションではなく、裏社会で運び屋なり取り立て屋なりという町の顔役の使い走りをして糊口を凌いでいる高齢者リーアム・ニーソンが認知症を患ってしまい、その現実に重大なメンタルダメージを受けつつも、この薄汚れた人生、最期に少しでも人のタメになることをしてみたい……と、顔役に反旗を翻すなかなか渋いノワールであった。
認知症のオッサンの反撃というとジョニー・トーの『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』が頭に浮かぶし、社会的弱者が人生の終わりに少しでも世の中を良くしようとするノワールというとジョン・ウーの『サイレントナイト』が最近の秀作だったが、こちら『ハードボイルド』は激しいアクションなどまるでない。それもそのはずついさっき知ったのだが監督は『スノー・ロワイヤル』のハンス・ペテル・モランド 、冷たくもオフビートなノワールを得意とする人であった。しかも今回は持ち味のオフビート味を封じてしまい、娼婦の無造作な死体など冷たい感触は残しつつも、認知症に悩み迷い惑い、しかしそれでもほんの少しだけでも良いことをしてみたいと望む裏社会人の悲哀を丹念に描く正統派。これはなんとも渋い映画である。
渋いのでかなり寝てしまったとはいえこういう映画が映画館でやることはやはりありがたい。客入りは厳しそうな気がなんとなくするのだが、関係各位頑張っていただきたいと思う。