映画『奇跡の2000マイル』の感想を奇跡的に書く!

ネットの感想拾うと、悲しい映画だなぁ悲しい映画だなぁとゆー感想が目立つ。
そしてどうも、アボリジニの隔離政策の映画だそうである。
…そんな場面あったか? いや、確かに途中寝たが、そんな重要そうな場面だけピンポイントで寝てたのか俺は…爽やかで明るい映画だと思ってたのに…。
と、思ったら、それは『裸足の1500マイル』(2002)とゆーコレと同じく実録もののオーストラリア映画なのだった。
とても紛らわしいのでやめて欲しい。

つーコトで観てきた『奇跡の2000マイル』、これ面白かったなぁ。
実話の映画化だそうで、単身(+犬とラクダ)砂漠の横断の旅に出た人のハナシ。
あらすじはこーゆーの。

辺鄙な町のダイナーかなんかでウェイトレスをしてるミア・ワシコウスカ。
こんな生活イヤだなぁ、とゆーコトで冒頭たった10秒にして旅を決意、愛犬とラクダとともに荒野に漕ぎ出すのだった。
潔い(ワシコウスカも映画も)

https://readwritehand.wordpress.com
https://readwritehand.wordpress.com この画、キレイだなぁ。

なんかやってるコトは『イントゥ・ザ・ワイルド』(2006)とかと同じだと思うが、どこが違うってロクに準備もせんで人の忠告も聞かんでアラスカの大自然に向かったアッチの主人公に対して、コッチのワシコウスカはキッチリ準備して色んな人の忠告に耳を傾けるあたりが違うのだった。
なのでまずはラクダ牧場で下働き。なんもない荒野での生活とラクダの扱いに慣れといてから旅に出る。
『ロッキー』(1976)だって一番燃えるのはトレーニング・シーンなんで、やっぱ何事も準備が大切なのだ。

ほんでいよいよ砂漠に足を踏み入れたワシコウスカだったが、いくら事前に準備したっちゅーても砂漠は厳しいんで、なんや思うようにコトが運ばない。
やっぱ暑いし、あと孤独だし、そんでちょっと油断したらすぐ迷ったりする。
かように砂漠の一人旅は過酷らしいが、そのあたりとても透徹した視点から描いてて、誰が苦しもうが死のうが感傷とか無い。
ワシコウスカがいくら悲観したところでカメラはそんなん気にせず荒涼とした砂漠撮ったり、あんま抑揚のないヒーリングな音楽がダラダラ流れ続けたりする。
砂漠の映画なんで、感傷じゃなくて乾燥なんである。
やっぱ潔い映画だな。

そんなワケなんで、あんま盛り上がるトコとかない。
ワシコウスカの旅を撮影しにやってきたナショナル・ジオグラフィックのカメラマンとの恋愛だとか、旅先での色んな出会いとか、ワシコウスカのちょっとだけ切なめの過去だとか、そーゆー盛り上がりそうなのは全部サラサラ流される。
といってタイクツな感じもなく、なんか画と音がパッパパッパと変わって目にも楽しい耳にも楽しい、で乾いたムードがあって旅行行ったぞ気分になれたりするが、ハナシ自体はかなり淡々としてんである。

ほんでその淡々の末になにがあるかっつーと、いやまぁこんなの書いてもネタバレにならないと思うが、しかし神経質な人に配慮して書かない(俺はやさしい)
書かないが、目の前に美しい色彩がいっぱいに広がる、なんとも開放感溢れるスバラシーラストなんであった。
セリフもないし別段なにかあるワケでもないが、散々と砂漠の淡々やった末にこんな光景見せられたら脳がヤラれる。
でもってそこでプツっとエンドロールに入るあたり、何度目か分からんがとにかく潔い映画なのた。
潔くて、実にハートに沁みる映画なのだ。スバラシイ、スバラシイ。

http://www.cinemacafe.net
http://www.cinemacafe.net 40手前ぐらいに見えてくるが、ワシコウスカはまだ26歳です。演技の幅広すぎやしないか。

基本荒野と砂漠(あとラクダ)をずっと撮ってるだけの映画だが、これが場所に応じて緑になったり、赤になったり、茶色になったり、白くなったりする。
砂漠っちゅーても顔は一つじゃないのだ。いや当たり前かもしれんが、俺はビックリした。
ほんでまたそれがワシコウスカの心象風景になってたりもして、このあたりなんだかとてもオモロイ。
セリフに頼んないで画で語るタイプ。その画がまた美しい。

でワシコウスカは、この前観た『イノセント・ガーデン』(2013)じゃイノセントな少女やってたと思うが、コッチじゃ旅するウチに年齢を重ねて老婆になってしまう。
いやそう見えるとゆーだけだが、跳ねっ返りの少女から老婆に至る内面の変化をセリフなしで見せきるからスゴイ、というかコワイ。
朦朧とした意識の中で、目を細めてなにやら達観したような薄ら笑いを浮かべながら砂漠を歩くシーンなんてマジでゾクゾクもんであった。
あとウンコが太そうなのだが、美人さんなのにウンコが太そうと思わせるあたり、やっぱかなりの名演だと思われる。
そういう泥臭さの表現力はハンパでないが、その上で繊細な感じもあるから、いやはや、まったくスゴイ女優さんだなこの人は。

潔い映画なので、コッチも潔くこのへんで乾燥…いや感想終える(充分長いが)
マァなんつーか、押しつけがましいトコとか一切ない、地味ぃな地味ぃな映画なんですが、すげーイイ映画だったなコレは。

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オーストラリアの荒野を冒険! といえばこんなのあったよな。
ワリと、大自然の中に置かれた人間を動物と等置して描くあたりとか、セリフに頼らないあたりとか、ちょっとだけ幻想的なあたりとか『奇跡の2000マイル』と共通する気がする。
荒野の冒険が通過儀礼になってるあたりも同じだったりするが、こーゆーの観ると、そうかぁ、俺がダメ人間なのは冒険してないからなんだな…とちょっとだけヘコむ。
冒険しなきゃな…でも砂漠はさすがに死んじゃうな…山登るか…いや死んじゃうな…妥協して鳥取砂丘かな…(ダメ人間)

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