アルパカとサッカーと荒涼大地の映画『雲と大地のはざまで』感想文

《推定睡眠時間:0分》

国交樹立何十周年とか何かの記念なのか最近やたらとペルー映画を観る機会が多く、去年9月にはケイズシネマでペルー映画祭があったし(そこで売っていたクイとかいう食用モルモットのぬいぐるみが可愛かったので買ったのだが紛失してしまった)先々月ぐらいには『今日からぼくが村の映画館』という秀作もあった。2023年には愛さずにはいられないペルーのカンフー映画『フィスト・オブ・ザ・コンドル』が公開されて俺を含めてごく一部に熱狂的な支持者を生んだりしたのだが、こうペルー映画の波が来ているのならぜひとも続編ありきのため未完の『フィスト・オブ・ザ・コンドル』第二部も日本公開してほしいものだ……と思ったら『フィスト・オブ・ザ・コンドル』はペルーじゃなくてチリの映画でした。ペルーはアンデス山脈と手編みの帽子、チリはアンデス山脈と細長い。覚えとこ。

で『雲と大地のはざまで』はアルパカ飼いの少年の日常を描くお話である。この少年はサッカー大好きなので愛犬と愛アルパカにロナウドとかサッカーっぽい名前を付けていてラジオでサッカー中継を聞きながらアルパカ群団を散歩(?)させるのが日課。ワールドカップでロシアに行くぞみたいなことを言っているのでそれはいつのことだろうと思って調べると2018年のワールドカップがロシア開催、この大会でペルーはベスト8に入ったようなので、ペルーのサッカー事情はまったく知らないのだが快挙だったのかもしれない。

けれどもそんなおめでた気分は草木が生えず地面剥き出しの荒涼とした風景にかき消されてしまう。全体的に黒茶っぽいのはそういう風土だからなのかもしれないが、この少年が歩くところあちこちに泥だまりのようなものがあり、黒いタールがポコポコと気泡を吐いてまるで毒沼。あくまでも少年の目を通して世界を見るというスタイルの映画なのでこれが何なのかは説明されないが、どうも近隣の鉱山開発による環境汚染の疑惑強し。

少年がサッカーにうつつを抜かしてる間にも地域住民は鉱山派と反鉱山派に別れて対立、双方和解の気配なく緊張は日に日に高まってある日ついに爆発するってなわけで、その場面に流れるワールドカップ中継の音声はなんと空しいことか。サッカーチームがワールドカップの決勝トーナメント的なところに行くことができたのは良かったかもしれないが、その一方伝統的なアルパカ畜産で生計を立てている山地の貧しい住民たちの生活は破壊されていく。その対比はまるでファスビンダーの『マリア・ブラウンの結婚』のラストシーンのようであった。

雄大な荒涼大地は自然への畏敬の念をも生じさせて素晴らしいしモコモコのアルパカも可愛いとはいえ、テーマやその表現には手垢がついてもう一つオリジナリティなり掘り下げなりがあったら良かったのに、とか思ったりはするのだが、ペルーこういう国、というのがかなり狭い範囲だとしてもわかる疑似観光映画として、なかなか面白かったんじゃないでしょーか。

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