燃えよコンドル映画『フィスト・オブ・ザ・コンドル』感想文

《推定睡眠時間:40分》

チリ先住民が古来より用いてきた最強の殺人術コンドル拳。一撃で人を殺めることさえ可能だというこのおそるべき拳法は秘伝書を通して秘かに伝えられてきたが、その威力ゆえこれを手にせんとする悪人は後を絶たない…みたいなあらすじの冒頭部分を映画サイトで読んだだけではいこれは絶対観るやつと思ってページを閉じてしまったので詳しいあらすじは上映時間の半分寝ていることもあってよくわかっていないのだが、もはやそんなことはどうでもいいと思わせる『フィスト・オブ・ザ・コンドル』である。

なにせコンドル拳、殺人拳法コンドル拳とくる。しかも映画の最初の方で説明されるにはこのコンドル拳は秘伝書により一代一人にしか継承されず、主人公は秘伝書継承が内定していたのだが、それを恨んだ弟により秘伝書を奪われ、今は弟の放った刺客たちと周囲に建物のない森の中や海岸や断崖といったロケにお金のかからない場所だけで戦いながら秘伝書を持つ弟を追っているのだという。あまりにも少年漫画的というか、これは『北斗の拳』だろうこれは。邦題はしれっと隠しているが二部作の前編であることから主人公と双子の弟の最終決戦には最後まで観ても辿り着かないことはわかっていても、映画館で観なければいけない映画であることは明白だ。

それにしても面白くない映画である。主人公の武闘家マルコ・サロールがひたすら森の中とか海岸とか断崖とかロケにお金のかからない場所で刺客と戦い隙間時間で各地のマスターを訪ねる。なぜかナレーションベースのこの映画なのでサロールの心の声モノローグもすごいがマスターの教えモノローグの量も半端ではない。あまりにも長いマスターの教えを聴いていればこれは眠らざるを得ないわけだが、起きたところで画面に広がるのはサロールと刺客の森の中とか海岸とか断崖とかロケにお金のかからない場所での戦い。その戦いは演者の格闘技術に問題があるわけではないと思うのだがアクション監督や撮影がこなれていないためかあんまり迫力がなく、印象に残るのは戦闘後になんとも言えない表情で夕陽などを眺めるサロールのadobeの画像編集ソフトの宣伝ページとかに載ってるような感じの美麗イメージショットばかりであった。

だが面白いか面白くないかなどどうでもいい映画である。なにせコンドル拳であるし、これは『北斗の拳』でもあるが80年代香港カンフー映画の超影響モロ見え映画でもある。その貧相な絵面からジャッキーの初期代表作『ヤングマスター 師弟出馬』が頭に浮かんだが、『ヤングマスター』がそうであったように『フィスト・オブ・ザ・コンドル』もまた面白いアクション映画を作りたいというアクションバカのパッション以外にはほとんどなにもない映画であった。結果的に出来上がった映画は面白くなかったとはいえ、これを否定したり嫌いになることは俺には不可能である。もしこれを俺が中学時代に観ていたら面白くはないが魂震わす心の一本となっていたことは間違いないだろう。

こういう映画はいいものだ。実にいい。いや、映画っていうかコンドル拳っていうワードセンスの時点で既にイイのでそう書かれている映画サイトのあらすじを見た時点でもう負けてた。秘伝書で伝授される最強拳法コンドル拳、マスターが弟子に無理難題を押しつける修行、その継承者たらんとする主人公の双子の弟、秘伝書を取り戻し決着をつけるために弟を追う主人公と彼を狙う刺客たち、そして森の中とか海岸とか断崖とかお金のかからないロケ地…映画はともかくこんな要素は面白すぎる。後編が日本に来ることは無いような予感がしているが、来たら絶対に観に行くしかないので配給の人がんばって輸入してください!

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