【未体験ゾーン2024】3週目の感想文(映画3本)

ということで未体験2024、3週目なわけですが…今週の上映作はなんと未体験史上最多なのではないかこれは、旧作2本も含めて7本です。アンコール上映を除けばすべて今週一週間のみの上映。おい無理だろ! 冷静に考えなくてもその鬼スケジュールは無理だよ! そりゃ劇場側にもいろいろ事情はあっての苦肉の番組編成とは察するが三連休のある週ならまだしも通常週で7本てあんた! まぁ最初から全作コンプリートする気のない俺なので面白そうなやつだけ3本選んで観ましたが、それでも連続鑑賞による眼精疲労で偏頭痛がキツかったね…ということで感想です!

『DIVE/ダイブ 海底28メートルの絶望』

《推定睡眠時間:0分》

これは普通によくできたシチュエーション・サスペンスなので一般公開が叶わず未体験入りしてしまったのがちょっと勿体ない。ダイビングが趣味の姉妹が毎年恒例のダイビング旅行に出かけたらダイビングの最中に落石事故に遭遇、姉の方が足が落石に挟まれて海底で動けなくなってしまったので、落ち着きがなく子供っぽい妹がどうにかして姉を助けようと奮闘するお話です。その裏にちょっとだけ「天は自ら助くるものを助く」の信仰テーマあり。

詳しくは知らないが聞くところによればこれはリメイク版、オリジナルは北欧かどっかの映画だそうでそのためかダイビングのディテールにはたいへん凝っており、専門用語および専門的行為の連続なのでしばしば何をやっているのかよくわからなくなったりするが、その硬派な作りがむしろ好感触、まるで本当にダイビング事故に遭ったかのようなリアリティを画面にもたらしていて、この岩に挟まれた役者さんは大丈夫なのか、酸欠で死んじゃうんじゃないかとこの手の映画には珍しく結構本気でドキドキしてしまった。

登場人物ほぼふたり、やってることは海底と陸上の行ったり来たり、サメやゾンビも出てくることなくただそれだけで90分保たせる映画なのに緊張感が解ける瞬間が少しもないのだからこれはなかなかのものだ。無人の荒れ野をひたすら走る光景をドローン撮影で捉えるショットや実際に海底で撮ったようにしか見えない水中での事故対応のショットひとつひとつに力と自信漲るこの力作を監督したのはドイツのマキシミリアン・エァレンヴァインという連続ドラマやMVを主に手掛けている人。今のところ新作映画の監督予定はないようだが、『コップ・カー』のジョン・ワッツ(のちにトムホ版『スパイダーマン』監督に抜擢)のようにいつか大作でその辣腕を存分にふるってもらいたいと思う。

『スティーヴン・キング エイジ・オブ・パンデミック』

《推定睡眠時間:40分》

なんか事前に原作と全然違うじゃねぇかみたいな評判を耳にしていたので実際に観たらなんだ結構原作に忠実じゃないかぐらい思ってしまった。過去に何度も映画化されているスティーヴン・キングの初期短編『トウモロコシ畑の子供たち』『リベリオン』の監督で最近は『エクスペンダブルズ ニューブラッド』に脚本参加したカート・ウィマーが新たに映画化したものだが、キング原作映画の世界というのは英国怪奇小説界の異端児アーサー・マッケンの小説世界を下敷きにした二次創作的なサイコ短編『芝刈り機の男』が『バーチャル・ウォーズ』というSF映画として映画化されるぐらいその闇が深いので、ジャンル職人ウィマーによるこの3度目か4度目の『トウモロコシ畑』はむしろ原作リスペクト大なのだ。

これは別に冗談で言っているのではない。過去のホラー小説やホラー映画を元ネタに、それを現代的な味付けで再構築することが多いのがホラーマニアのキングであり、この『トウモロコシ畑の子供たち』もおそらく元ネタはある日突然子供たちが大人を皆殺しにしてしまう定番カルトホラー『ザ・チャイルド』。『トウモロコシ畑の子供たち』の原作版は大人たち皆殺しストーリーではなく邪教もののテイストが強いのだが、その元ネタである『ザ・チャイルド』に遡って子供による大人皆殺しストーリーとしてこれを翻案したのだとすれば、原作者キングも思わずニヤリの実にわかっている映画ということになるじゃないだろうか。

まぁそれはそれとして人はたくさん死ぬしトウモロコシの邪神みたいのは出てくるし最終的に全部燃やすから楽しい映画でしたけどウィマーの監督・脚本作らしく人物造型とか展開が素直というか邪気がないというか幼稚というかそういう感じなのでそうですねぶっちゃけわりとアホっぽく、いくら残酷なシーンになってもなんかコワイ感じが今一つ出ないというのが未体験ゾーンの映画だな~と思わされるところだった。

『エレベーター・ゲーム』

《推定睡眠時間:40分》

日本で言ったら「きさらぎ駅」、特定の場所で普通はあまりやらないような特定の手順を踏むと異世界に飛ばされてしまうという異世界トンネルものの都市伝説の欧米圏(このあいだベトナムかどこかの映画で同じネタがあったのでもっと広いかもしれない)版はエレベーターで2階→10階→8階→5階みたいに変な順番で移動すると異世界に通じてオバケが乗り込んでくる、というもの。心霊系ユーチューバーたちがそれをやったらオバケが帰ってくれなくなって次々死んでいくというのがこの映画であった。

それにしても色合いがビビットだな、なんだこれは。『アメリ』かと思うくらいに緑や赤や黄色が乱舞。コントラストはやたらと深く明暗の対比が目に痛い。ところどころで映像が白飛びして登場人物が太陽光に隠れて見えなくなるぐらいだったので、おそらくカメラの露出をオーバーに解放して撮った素材に編集段階で更にコントラストを強める補正をかけているんじゃないだろうか。これはプロじゃないな、セミプロの仕業だな。インスタ画像のどぎつい色彩に慣れた世代の撮影監督がかっこいい映像を撮ろうと浅知恵を駆使して撮ったにちがいない。

そんなところが印象に残ってしまう映画なので内容に関してはある程度察してもらいたい。どうでもいい若者たちが次々とオバケに呪い殺されていくのはいいが、そこに辿り着くまでがいかんせんダラダラと長く、とにかくこいつらの一人でも死ぬまでは起きているぞと頑張ったが無理だった。死ぬときの叫び声でちょっと起きたりした。劇中の心霊系ユーチューバーも「エレベーター降霊術なんて絵面が退屈で動画のネタにならないよ!」とか言っていたが、正論だと思う。

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