ビデオ屋の香り映画『イコライザー THE FINAL』感想文

《推定睡眠時間:0分》

弱きを助け強きを挫く凄腕の殺し屋が都会から少し離れたどこかに投宿し素朴な人々との交流の中で暴力に物を言わせてきた己の生き方を見つめ直す。だがそこにも素朴な人々を苦しめる悪党がおり、一度は暴力を封印した殺し屋は再び悪を成敗するために立ち上がる…!

こんな筋書きの映画はビデオ屋のアクションコーナーにビデオスルーで入ってくるB級アクションで何度観たかわからない、とくにセガール映画などは主人公の圧倒的な強さ、なんでもお見通しの余裕の構えから発せられる上からユーモアという点でも『イコライザー THE FINAL』と被るのだが、男女問わず大人気の『イコライザー』シリーズと今や潰れかけのビデオ屋のアクションコーナーにしか居場所がない限界中年にしか需要がないセガール映画、いったいどこでこれほど道が分かれてしまったのだろうか。そりゃセガールには『イコライザー』のデンゼル・ワシントンと違って本人の不徳の致すところによる数々のスキャンダルはあるよ、沈黙の養鶏場事件とか秘書セクハラ事件とかロシア・アメリカ二重国籍事件とか重婚事件とか仮想通貨ビットコイイン(正式名称)宣伝大使就任事件とか…いやでもセガールなんかスキャンダル発覚前から女性ファンいなかったよ! いなかったとまでは言えませんが一部の脂ぎった男たち御用達のアクションスタアであったことは間違いなく、セガール映画が『イコライザー』のように広範な支持を得たことはなかったはずなのである…。

『イコライザー THE FINAL』について書くことというか書きたいことはほとんどない。とにかくこれはセガールの出ていないセガール映画であってそれ以上のものとは到底思えないので、別に退屈はしなかったがかといってここがすごいとかあれにびっくりしたとかそういうところも別にない。隅から隅までめちゃくちゃよくあるビデオ屋のもしくは午後ローのB級アクションなのでこれが今のハリウッド映画として大枚はたいて製作されているということ(セガール映画のスタッフなら100分の1ぐらいの予算で同じものを作るだろう、ただし主演はセガールで)、およびそれがしっかりと観客の心を掴んで大金を稼いでいるということに対する驚きはあるが、映画自体は本当にどこを観てもビデオ屋のセガール映画なので、もう、感想としては一言「面白かったな」とかだけだ。

背中を撃たれて一時的に片足が使えなくなったデンゼル・ワシントンがアクションではなく芝居で見せるシチリア逗留治療パートは片足不自由の身体表現や魂の抜けたような日常仕草がさすがに上手くやはりデンゼル・ワシントン名優やなとか思うが。あとラスボスがセガール映画以上にめちゃくちゃ弱くて張り合いがなさすぎるだろとかそういうのもありますが。まぁでも、「面白かったな」だな。それだけ。俺の中ではそれだけの映画なので前作を観たときにも思ったがなんでこんなんが大人気シリーズなのかよくわからん。

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内容とタイトルがまったく一致しないがたぶんこれは『イコライザー』シリーズみたいなストーリーのセガール映画のはずである。

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