USAをぶっ壊す映画『エンド・オブ・ステイツ』感想文

投稿日: カテゴリー 居眠り映画館タグ , , , , , ,

《推定睡眠時間:15分》

一作目の『エンド・オブ・ホワイトハウス』は観てないがホワイトハウスがテロリストに乗っ取られる映画だというのは知ってる、二作目の『エンド・オブ・キングダム』は50分くらい寝ているがロンドンがテロリストによって陥落する話だというのは知ってる、でシリーズ三作目の『エンド・オブ・ステイツ』ですが邦題は過去最大級のスケールでハズフィールンしているにも関わらず予告編を見るとシークレットサービスの主人公マイク・バニングが濡れ衣のテロ容疑でFBIに追われるという過去最小級の事件規模。

その裏には合衆国をロシアとの戦争に導こうとする勢力の陰謀があったので結局はスケールの大きなハズフォールンではあったが、それにしてもたった一人のシークレットサービスが濡れ衣を晴らすか晴らさないかで合衆国の行く末が決まってしまうのだからなんだかすごい話だ。マイク・バニングは確かに無敵の男かもしれないが(序盤で医者にこれ以上身体に負担かけると死ぬって言われるのにそのダメージがまったくアクションに反映されない)バニング一人に頼り切ったそのセキュリティ体制は逆に大丈夫なのかと言いたくなる。逆説的に分散型セキュリティの重要さを学べるかもしれない。

特攻ドローン推定100機による爆撃ぐらい武器を持たずとも対処できる無敵のバニングだったが今度のハズフォールンはその無敵さが仇となって引き起こされたもの。ドローンとかテロリストとは戦えても自分自身とは戦えない。どうする。というわけでバニングが助けを求めたのは山奥に隠棲する父バニング、ニック・ノルティだった。

大丈夫だろうか。明らかに強そうに見えないが助けになるんだろうか。むしろちょっと危ない人にすら見えるが本当に助けになるんだろうか。その心配は爆風と共に吹き飛んだ。社会との繋がりを絶って山ごもりサバイバルをしているうちに父バニングは重武装のランボー化していたのである。合衆国は戦場だ。戦場は合衆国だ。事件の裏で糸を行く敵連中も合衆国を戦場にしたかったらしいので毒には毒である。その結果ものすごい犠牲者が出ているがそんなことは知ったことではないしだいたい今度のハズフォールンに限ったことではない。

マイク・バニングの赴くところ、戦闘員と非戦闘員を問わず死体の山が築かれる。コナンくんのような金田一少年のようなお前が一番危ないやんけ系の死神シークレットサービスの存在価値とは。ネタバレにならないネタバレになってしまうが結局悪い奴は濡れ衣を晴らしたバニング親子にぶっ殺されるのだが、逆に、むしろ逆にバニングが投獄されていた方が合衆国は平和だったのではないかと思わずにはいられない。

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…というハズフォールン最新作は単なるバニング無双に終わらず父バニングのゲスト参戦とか同僚シークレットサービスのサポートとか戦友との宿命の対決とか面白要素テンコ盛りではあったが前作がロンドン陥落なのでいくら水面下で合衆国最大の危機的な陰謀が進行中とはいえやっぱどうしてもこぢんまり見えてしまう。こっちで陥落するものといえばアーロン・エッカートに代わって大統領に就任したモーガン・フリーマンが収容された病院ぐらいだ。

でかいものが壊れるのがハズフォールンの一つの売りなんだからもっとスケールのでかいものを壊してほしかったとも思うが、破壊のスケールが小さくなった代わりに個々の戦闘は前作より(たぶん)凝っていたので、海外派兵の縮小に伴う民間軍事会社への業務委託の取りやめを背景にしたシナリオに合わせて今までどんぶり勘定だったアクション計画も合理的に見直されたのかもしれない。

仮に自由の女神を壊したところで合理的な意義はあるのかと言われたらなんとなくめでたいという以外の意義はないので確かに合理性という意味では反論ができない。それよりも戦闘のプロ同士の実践的なアクションをリアルなシチュエーションの中で見せることに眼目が置かれているのだろう(※ただし父バニングの過剰反撃はこの映画の中で数少ない完全に無駄な破壊シーンである)。

映画はマイク・バニングが戦友の経営する民間軍事会社での模擬戦闘に参加するところから始まるが、とくに後半の展開は市街戦シミュレーションの様相を呈していた。ダクトや配電盤等々の遮蔽物を効果的に利用したラストの屋上決戦は模擬戦的シチュエーションが現実の殺し合いに変貌するアクション的エモ爆破なシーンであった(ても案外あっさりケリがついてしまう)

バニング無双に頼らないちょっとした群像劇的な構成は相棒アーロン・エッカートのシリーズ離脱を受けてのものかもしれない。それはそれで面白かったがとはいえ寂しいエッカート不在。新大統領モーガン・フリーマンは相棒というよりは仕えるべき君主、老賢人だ。当然ながらバディアクション的な魅力は失せて一種の騎士道ものがたりになっているのはアメリカ映画らしいところではある。

俺たちは戦場でしか生きられない…的な泣ける兵士台詞を吐き出す敵のリーダーは闇堕ちしたもう一人のバニングの姿。『ANGEL HAS FALLEN』の原題に引きつけて言えば、合衆国の守護天使たるバニングに対しての堕天使サタンといったところだろう。言ってみれば今度のバニングは自分自身の闇と戦い、打ち克つわけである。

自分自身の闇を合衆国存続の危機もろとも葬って大統領のもとへ、そして家族のもとへ帰還するバニングだったが、そこに待っていたのがアーロン・エッカートだったなら…男同士の親密な関係ならなんでもかんでもBLとかブロマンスの枠組みに入れようとする粗雑なものの見方は嫌いだが、しかし、とはいえ、そうであったなら、やっぱ激エモかったと思うね。そこはちょっとだけガッカリポイントではあった。

【ママー!これ買ってー!】


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『エンド・オブ・ホワイトハウス』を観てないのは同時期に公開されたこっちが面白かったのでもうホワイトハウスものはいいだろと思ってしまったから。『ホワイトハウス・ダウン』、せっかくおもしろいんだから続編作ってくれないすかね。国会議事堂ダウンとか、国連ビルダウンとか。

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