爆裂プロテスト映画『バーニング・ダウン 爆発都市』感想大爆破!

《推定睡眠時間:寝てるどころじゃねぇよマイナス121分!》

香港映画名物前作と全然話が繋がらない続編もので一応前作は『SHOCK WAVE ショック ウェイブ 爆弾処理班』なのだがまぁこの『ショック ウェイブ』という映画ときたら香港映画職人の明らかに過剰なサービス精神の波状攻撃でたとえ人類が俺を残して滅びても『ショック ウェイブ』を観てれば気も紛れるかぐらいのパワーがありたいへん面白かったものだからその続編がつまらないわけもなく監督ハーマン・ヤウと主演アンディ・ラウ(製作も兼任の力の入れよう)も続投ってわけでこりゃ期待しかない、ポスターには香港は核爆弾と化したみたいな惹句が入っており背景にはどかんどかん爆発するその爆炎や倒壊する建物、普通ね、こんなポスターを見たら「ゆーて本編はそこまで派手じゃないんでしょ?」と斜に構えてしまうものですがこの映画に関しては実際にそういう映画なんだろうなって思ったからね。どれぐらい俺がこの映画に期待を寄せていたかわかるでしょうこの手の派手ポスターとか派手ジャケットに数え切れないぐらい騙された映画廃人の方々は!

いやぁ、というわけでね、観ましたけれどもね、いやぁ、超えてきたね。あのポスター、むしろ大人しすぎたね。いやぁ、これは。…なんだこれはすごいぞ! このパッション! このエネルギー! この投げやり! 投げやりってことはないだろというツッコミはまぁ待たれよ理由は後ほど説明するから! とにかくねすごいんだよもーう香港! これが香港映画ですの爆裂っぷり! 冒頭の香港国際空港大破壊からして凄まじいがそこからの怒濤の展開がすごかった! 主人公のアンディ・ラウは凄腕の爆弾処理班なのだったが巧妙な爆弾犯人の仕掛けにハマって片足を失ってしまう! 普通の映画ならこのへんでしっとりと恋愛模様なども交えてリハビリドラマを描くところだがそんなの関係ねぇとばかりに超速で現場復帰可能なほどに回復してしまいところが!

ここでかなり唐突に時間が飛んでなんと正義のアンディ・ラウがホテルで爆弾テロに加担しているではないか! いったい何が起こったのかと同僚刑事たち(ラウ・チンワン、フィリップ・キョンら香港な面子にニー・ニーが加わる!)もそれをポカンと眺めている俺も疑問符が爆発するのであったがとっ捕まえたアンディ・ラウから事情を聞き出そうとしたところなんと香港映画名物すごい都合のいいときになってすごい都合のいいときに回復する記憶喪失に陥ってしまってええええ! 香☆港!

なにがなんだかわからないが立ち止まったら死ぬのが香港映画だ。アンディ・ラウ今回二回目の入院ということでさすがに俺は誰なんだ的な人間ドラマパートが始まるのかなと思いきや悪堕ちアンディ・ラウのテロ仲間たちが救出のため重武装で病院を訪れ警官隊と一大銃撃戦を展開、かの『ハードボイルド』もかくやの戦場病院が現出してしまう。自分の名前も思い出せないが格闘術と銃の使い方はしっかりと都合よく身体が覚えているというアンディ・ラウの記憶にあるのは謎の電話番号と幾人かの仲間たちの顔。ひとまず警官隊にもテロ仲間にも捕まらないよう逃げ出すアンディ・ラウ。その頃テロ仲間たちは香港核爆破計画をいよいよ起動せんとしていたのだった。立ち止まる暇などない!

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とにかくものすごいテンションである。扉は蹴破るためにある、廊下は走るためにある、ガラスは割るためにある、箱は倒れ込むためにある、床は崩落するためにある、壁は穴を開けるためにある、窓は飛び降りるためにある、屋根はパルクールするためにある、エレベーターは中で戦うためにある、電車は脱線するためにある、車は暴走するためにある、建物という建物は爆破するためにある! すべて間違った使い方しかされないこの香港イズム。面白ければなんでもいいのかよと土砂降りの雨の中で叫びたくなる。叫べばこう返ってくるだろう。いいんだ! 俺たちはそうでしか生きられねぇ! 銃撃! 銃撃! 銃撃!!! 爆破! 爆破! 爆破!!! 走れ! 走れ! 死ぬまで走れそれが俺たちの生き様だ!!!

だがこの映画は単に超おもしろいだけではない。というのもアンディ・ラウが警察のお偉いさんたちの前で抗議のミニ横断幕を掲げて同僚警官たちから排除されるという否が応でも香港民主化運動を彷彿とさせる場面が出てくるのだ。アンディ・ラウが闇堕ちしたのは抗議が受け入れられなかったためであり、やたら爆破する闇堕ち警官ものということで昨年の爆裂作『レイジング・ファイア』 との設定類似はこうなると香港映画名物のパクリではなく香港映画人の共闘宣言といっていいだろう。

民主化運動は弾圧されて一国二制度は事実上廃止された。あの危険で自由で人情溢れる独立独歩の気風に満ちた香港はもう返ってこない。こんな香港で体制にへこへこしながら生きて何になるか。いっそ爆破してしまったらいいじゃないか。そうさ、香港丸ごと爆破してやるんだよ! 『レイジング・ファイア』が香港行政府に対する異議申し立ての映画であったように『バーニング・ダウン』のデタラメな展開と絢爛たる破壊の光景も香港行政府ひいては中央政府に対するプロテストだ。っていうかこうなるともう映画テロのようなものだ。だってなんやかんや警察は正しくてテロリストは間違ってますよ的な結論に普通の爆破映画なら落ち着くがこれは怒濤の編集により一応そういう勧善懲悪ストーリーにはなっているものの映像的には全然そんな思いが湧かずただ頭に残るのは爆破爆破爆破そして体制の犠牲になる香港人たちの顔、友情、愛そして矜持ばかりだから。

監督ハーマン・ヤウといえば『八仙飯店之人肉饅頭』を筆頭に香港を代表する名優アンソニー・ウォンとの仕事が多いが、名優にして盟友であったアンソニー・ウォンは消えゆく香港を見限って台湾にエグザイルしてしまった。アンソニー・ウォンも向こうで笑っとるんじゃないかこの映画観て。ざまあみやがれってさ。なんか死んだみたいな書き方になってしまったが生きてるからねアンソニー・ウォン。

※面白い場面しか出てこない映画だが中でも唸らされたのは対爆スーツを着たラウ・チンワンが背中にスナイパーからの銃弾を浴びながらその衝撃に耐えて爆弾処理をする場面で、他の場面の熱量が計器破壊レベルなので総体的に地味な場面になってしまっているが、爆破処理ものの映画としてなかなか斬新なアイディアだったと思う。

【ママー!これ買ってー!】


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一作目はこんな爆裂作ではなく香港娯楽映画の王道みたいな余裕ある感じなのでこの頃はまだ香港の先行きに多少の希望があったんだなとか思ってしまいます。

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4 Comments
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さるこ
さるこ
2022年4月22日 8:08 AM

おはようございます。
そう、そして人は階段を転がり落ちるためにあり果物は道路にばらまかれるためにある!
冒頭、原題のタイトルが出た時「2」と見えたような気がして、そしたら何とまあ「1」があったのですね。
背負うものはあるかもしれないけど、(私が知る限りの)香港映画の王道でした。楽しい楽しい。

火薬バカ一代
火薬バカ一代
2022年5月1日 9:02 PM

レビューにそそられて本日映画館へ見に行ってきたのですが、アンディ・ラウは往年の香港映画イズムを未だに体現し続ける役者/製作者の一人なのだなぁと、笑いつつもちょっと感動してしまいました。もうこうなったら3作、4作と続編を作って頂いて、ラストは必ずアンディ・ラウの爆死オチで〆て欲しいぐらいですね。