老年は荒野を目指す映画『マークスマン』感想文

《推定睡眠時間:45分》

テキサスとの国境には米国筋肉中高年男性スタアを引きつける何かがあるのであろうか。スタローンは『ランボー ラスト・ブラッド』においてアリゾナの牧場に武器などを製造する大人の子供部屋兼秘密基地を作り上げたしセガールは実生活でボランティアの国境パトロール隊員だった時期がある、クリント・イーストウッドの新作は老カウボーイが訳あってメキシコの少年と荒野を旅する『クライ・マッチョ』であり、そしてリーアム・ニーソンもこの映画『マークスマン』でアリゾナの牧場主となって牧場経営の傍ら国境を越えてくる密入国メキシコ人を律儀に国境警備隊に通報したりしているのであった。

見渡す限り人工物は何もないが荒野といっても緑はそれなりに豊かで真っ青な空と黄土色の大地の大胆な対比に砂漠の植物が彩りを添え、その景観は過酷な環境には違いないがなにか生き物の生も死を包み込むような人智を超えた優しさを感じさせる。母なる大地、の表現はジェンダー死語化しつつある気もするが、それでもあえてそう表現したくなるものがアリゾナの荒野にはある。決して遠からぬ死を前に米国筋肉中高年男性スタアが荒野に向かう理由かもしれぬ。

さて『マークスマン』ですがごめん普通なんか格調高い感じで書き出してみましたがこれ普通でした。普通のビデオスルー級アクション・サスペンス…なのかな? まぁビデオ屋に並ぶ時には間違いなくアクションの棚に置かれるに違いないが意外とアクション色は薄くどちらかといえば淡泊なロードムービーといった感じ。あんまオリジナリティとかもないのでジェネリック『クライ・マッチョ』でありジェネリック『ランボー ラスト・ブラッド』でありとか言ってしまうと身も蓋もないがまぁでもねまぁそういう…そういうビデオ屋映画、午後ロー映画だねこれは。

いいじゃないですかまったりとしてて。敵だってあれですよ麻薬カルテルのボスとかじゃなくてカルテルの組織とかでもなくてカルテルの末端構成員二三人っていうね。少ないし弱いな! って思わず口に出ちゃいますけどいやでも普通人は武装したカルテルの末端構成員二三人ぶっ殺すの無理だからね!? 主演がリーアム・ニーソンだから敵がショボく見えますけどそんなもんでしょ人間の限界! むしろよく戦ったよリーアム・ニーソン! もうおじいちゃんなのに!

だからこれはいわゆるリーアム無双の映画ではございません。妻は先に亡くしちゃったし牧場も銀行に取り上げられちゃいそうだしで余生がぼんやりしちゃったリーアムおじいちゃんが最期になんか人の為になるようなことをして気持ちよくあの世に行きたいなとそういうわけでカルテルに追われるメキシコ少年をアリゾナの辺境からシカゴの親戚のもとへと送り届けてやろうとする映画が『マークスマン』。大して面白いものでもないかもしれないが、こんな映画を休日に映画館で観る余裕が忙しなく情報収集&発信に勤しむ現代人には必要なのではあるまいか。なんもないアリゾナ荒野風景となんでもないシカゴの日常風景に被さるクラシックギターの調べに、俺はなんだか妙にジンと来てしまったよ。

【ママー!これ買ってー!】


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結構悲しい終わり方をしたがこれがランボーの旅の終着点なのだろうが。それともやるのかな、ラストブラッド2…。

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