快作B級ノワール『アクセレーション』感想文

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《推定睡眠時間:0分》

ネームバリューによりキャストの筆頭はドルフ・ラングレンだがラングレン自身はほとんどアクションはしない、というのはお約束の騙されポイントだが、騙されてなお面白かったのだから立派なB級ノワール・アクションであった。

主人公のナタリー・バーンは裏社会のなんでも屋ポジション。詳しい事情はわからないがどうやらドルフ・ラングレン演じる二畳ぐらいの狭い部屋に座って年代物のキーボードを適当に叩いている謎の男に愛する息子を拉致られてしまい、取り戻すために彼の命令に従っているらしい。

一方そのころ、麻薬ギャングなのかなんなのかよくわからないが悪いことをやっているのは間違いないショーン・パトリック・フラナリーは裏切り者でも探しているのかこれもなんだかよくわからないがとにかく誰かを血眼になって追っていた。バーン、ラングレン、フラナリー。当然最後に激突するに決まっている裏社会に蠢く三人のなんとなくわかる運命やいかに。

いわゆるワンナイトもので、女なんでも屋のナタリー・バーンが夜の街をかっちょいい愛車でぶっ飛ばしながらサクサクとラングレン指令をこなしていくのがメインプロット、あっちの悪い奴を殺したりこっちの悪い奴のアジトに火を放ったりとお仕事内容もお仕事相手も結構幅広いというのと、朝までにラングレン指令をクリアしないと息子没収のタイムリミットのおかげで飽きずに見られる。

途中ちょっとダレてきたなと思ったらそれまでガンファイトがメインだったアクションを格闘にシフトチェンジ。思わぬところでゲスト出演のダニー・トレホが良いスパイスになっていたりとB級的にとっても良心的な映画作り。サスペンス映画のワンナイトものに外れなしと言うが、それを裏付ける好例ではないかと思う。

特徴的なのはケレン味たっぷりの画作り。ぶっちゃけ正直かなり相当お金がないことはひとけのない倉庫街みたいなところばかり出てくるロケーションからもひしひし伝わってくるが、金がなければ撮り方で粉飾、ケバケバしいネオン的なライティングやもくもくスモーク、某Jエイブラムスを凌駕するレンズフレアの超多用が貧相な素材をカバーしつつギラギラした裏社会の表現にもなっているので思わず唸る。

『トロン』の電子空間とスターゲートを混ぜたようなネオン空間を例のかっちょいい愛車が走るだけのオープニングタイトルも単純なりに効果的。何はともあれ一晩中走りまくる映画だということが秒で伝わってくるし、どうせなら電子空間とスターゲートを混ぜたようなネオン空間が出てきた方が華やかでよいだろう。そういうところを疎かにしないのが、良い。

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ドルフ・ラングレンは多少は立ち芝居もあるものの基本的に座りの芝居、申し訳程度の格闘シーンはスタントを使うまでもない歳相応のものだったので本人がやっているのだと思うが、あってもなくてもいいようなシーンだったのでラングレンのアクションや芝居を見る映画ではやはりなかった。

主役はあくまでナタリー・バーン、補助役としてクイントン“ランペイジ”ジャクソンも少しだけ顔を出しているが、アクションを魅せるのもラングレンではなくナタリー・バーンであった。
そのアクション、意外と軽快なものではなく重さを感じさせるもので、あえてなのか知らないが洗練された動きにはなっていないところにリアル喧嘩感があってよかった。機動性の高いカメラワークで足りない迫力を上乗せしつつ過度にシーンを引っ張らない編集の潔さも良い仕事。

助演もラングレンではなくショーン・パトリック・フラナリーで、この人は情緒不安定な狂犬ギャングなのだがこれがまた味、これからぶっ殺す相手に拳銃渡してロシアンルーレットを強要しつつ「頑張れ…君ならできる…大丈夫だから…」と優しくエールを送ったりするすっとぼけた狂気に笑ってしまう。雌ライオンなナタリー・バーンに対してこちらは道化。ジャンル映画的に色分けされたキャラ造形が見事だった。

ナタリー・バーンがラングレン指令で会いに行く連中も一癖あるやつばかり。二癖とまではいかないはっちゃけなさが俺的には良かったところで、『ストリート・オブ・ファイヤー』みたいにコミックとノワールの間、バカとカッコよさの間でどっちにも足を着けつつどっちにも転ばないよう踏ん張ってるB級映画と感じた。

いいですね、どうせB級だからと開き直らないその矜持。それが実を結んでいたのはナタリー・バーンが何番目かの悪い奴を殺しに行く場面で、ここ、よほど現場が逼迫していたのかがらんどうの空間をカーテンで仕切ってその後ろに縦置きした蛍光灯を等間隔に配置して悪い奴のアジトっぽく見せているというエド・ウッドの映画みたいなことをしているのだが、これが逆にインスタレーション的でかっこいい。

そのなにもない部屋で悪い奴がずっと壁に映写されたモノクロのクラシック映画を観ているっていうのも鈴木清順の映画みたいな前衛クール、これからそいつを殺すナタリー・バーンが一緒に映画を観ながら二言三言会話を交わすところは実にノワールな名場面。
最初の仕事を終えたナタリー・バーンが貧乏ダイナーに入ってステンレスのナプキン入れを鏡代わりに額の血を拭う等々、金はないがノワールなディティールに抜かりはない。

テンポそこそこ良しアクションそこそこよしキャラそこそこ良し世界観そこそこよしのそこそこ揃い。ラングレンまでそこそこにしないでもよかったと思うが、これだけそこそこが揃うというのは立派なことです。シナリオはもうちょっと整理した方がよかったんじゃないかと思わなくもないが、ともあれ、良いB級映画でありました。

【ママー!これ買ってー!】


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まぁこういうお金のある映画と比べてはいけないとは思いますが…でもこの2/3ぐらいはカッコよさと面白さで迫ってたんじゃないですかね。結構迫れてるじゃん。

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