電話しすぎ映画『ワイルド・ロード』感想文

《推定睡眠時間:15分》

主演のマシン・ガン・ケリーというラッパーの人は前にスマホ世代の殺人(的)ゲームを描いた『NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』で見かけてその身のこなしの軽さに感心したものだったのでかなり密かに次はどんな映画に出るのかと期待していたのだったが『NERVE/ナーヴ』は2016年の映画、そして2022年の今までおそらく日本では出演作の劇場公開なし。というわけでこの『ワイルド・ロード』は俺的に待望のマシン・ガン・ケリー出演新作、しかもポスターやあらすじを見る限りでは犯罪アクションっぽいからマシン・ガン・ケリー水を得た魚! さぁ存分にお前の良さを、あの身のこなしの軽さを発揮してくれ!

びっくりしたよね、そんな感じで臨んだらマシン・ガン・ケリーの出演シーンの9割、深夜の路線バスの中で電話してるだけ。冒頭に街中を疾走するシーンはあるがその後はマジで深夜の路線バスの中で色んな人に電話してるだけ。しかもドテッ腹に銃創を負ってるからろくに動くことさえできない。いろいろあるのだろうな。やはりほらアクションスターにだって演技で勝負したくなる時期ってあるじゃない。マシン・ガン・ケリーはアクション俳優ですらないが何も活きのいい若造ってだけじゃねぇんだぜみたいな思いがあったんじゃないかな。確かにマシン・ガン・ケリーの瀕死演技は良かった。身体が動かせない設定の制約がある中で緩急をつけて実に様々な感情や表情を出せていたと思う。

だがそれと映画としての面白さは別だ。なるほど悪くはない、ほとんど一人芝居映画と言えるほど限定された舞台とキャラクターでなかなか意外性のある展開を作れているし、マシン・ガン・ケリーが常時死にかけなのでいつ助けが来るのかと気が気でない、マシン・ガン・ケリーの父親役でゲスト的に出演しているケヴィン・ベーコンの貫禄もいいスパイスになっている。タイトルの出し方なんかカッコいいしサラッとした結末も良いので午後ローでやってたらこれ結構観ちゃうな作業止めて。いや、いや、それはわかるのだが、わかるのだが、わかるのだがでももっと動けよマシン・ガン・ケリー! 俺はそれ観に行ったんだぞ!

まぁこういう映画もあるよ。こういう映画っていうかこういうマシン・ガン・ケリーもある。むしろ『NERVE/ナーヴ』の躁的跳ね回りケリーがレアで『ワイルド・ロード』のイスがっつり座りケリーの方が多かったりするのかもしれない。だとしたらあまりにももったいないことだが、役者が自分の何を売り物にするかは観客には決められないからな。マシン・ガン・ケリーがどんな映画のオファーを受けるかはマシン・ガン・ケリーが決めることだ。演技派としてキャリアを積ませようとするエージェントの完全に余計な戦略等々がなければの話だが。

マシン・ガン・ケリーさん、次はマジでぴょんぴょん動く役で映画出てくださいお願いします。それ絶対お前の宝だから! ぴょんぴょんがケリーの本分だから!!!

【ママー!これ買ってー!】


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主人公を食うほどの活躍を見せたマシン・ガン・ケリーだが日本では映画データベースなどに出演者として名前を載せてもらえないという冷遇っぷり。本国ではアヴリル・ラヴィーンとコラボしてるぐらいのアーティストなんだぞマシン・ガン・ケリーは、おい。

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