みなさまあけましておめでとうございますと言うにはいささか遅い本日1月6日だが例年新年の最初の記事は前年に観た映画の個人的ベスト10記事にしているのでそういう書き出しについしてしまった。今年は元旦から新作が封切られたのでそっちの感想を新年最初の記事にしちゃったんだよなとかそんなことはどうでもいいかどうでもいいね! はいということで2025年ベストです! タイトルのリンクは観た時の詳しい感想記事につながってまーす。
【正常に狂ってるベスト】
『サイレントナイト』
ジョン・ウーの監督最新作だとたぶん思うが本国公開が2022年とかなのに今更日本公開ということはそういうことなわけで身もフタもないが一般ウケする映画ではないです。すばらしい。作家性の強い映画監督は狂えば狂うほど作品が良くなると思っているのでこれはもうね傑作ですよ。ほぼ台詞ゼロの銃撃と暴力のオペラ。それだけなら気に食わない若造監督が奇を衒って安易にやりそうなことだが敬虔なクリスチャンであるジョン・ウーはここに平和への願いとキリスト教のモチーフを散りばめる。あくまでも真剣に狂っているという点でそんじょそこらの映画作家には決してたどり着けない作品だ。
【人生を感じるベスト】
『さよならはスローボールで』
結局これが2025年に観た映画の中でいちばん「人生」を感じたなー。人生こんなもんだよねの諦めと、人生こういうところあるよなの楽しさと、あと野球。たいして面白くないところがまた地味に滋味深い沁みる映画です。
【刑事ドラマ屋の執念ベスト】
『劇場版 緊急取調室 The Final』
想定外の緊急事態により役者を変えての撮り直し、更にはそれに合わせての追加シーズン撮影まで行われ、2023年の公開予定が2025年冬にまで延びてしまった。たかだかテレビの刑事ドラマの映画版のためにそこまでやる……? と思うのだが、そこまでやるスタッフ・キャストの執念は画面にしっかり結実し、近年の邦画サスペンス映画では最高峰と言ってもよいのではないかと思われる出来映えに。ワシら本気で面白いもん作っとんじゃい、刑事ドラマを舐めるな! の声がスクリーンの後ろから聞こえてくる映画であった。幻聴だが。
【子供使いの巧さベスト】
『ふつうの子ども』
子供たちの超リアルな演技とそれを引き出す呉美保演出がまずすごいがそれだけならよくある映画で、これは超リアルな子供芝居とか子供あるあるを通してかつての学生運動を語っているという点が類を見ない作品。こういう形で学生運動を語れるのかー! と目から鱗だったし、あと子供たちの子供っぷりとか瀧内公美の瀧内公美っぷりに爆笑でした。
【労働者の生活ベスト】
『青春 帰』
中国ドキュメンタリー界の巨匠ワン・ビンが縫製工場(といっても基本はアパートの一室を転用したマイクロ工作室)で働く出稼ぎ貧乏労働者の生活っぷりを撮った『青春』三部作の最終章。この映画一本あたり4時間ぐらいあるので三部作全部観れば12時間ぐらいなのだが、12時間かけて描かれるものは大したドラマがあるわけでも個性があるわけでもない貧乏出稼ぎ労働者の生活のみ。すさまじい三部作だが、この最終章はそれとは別に中国の最果てを旅するグレートジャーニー展開がある。そのグレートジャーニーが実は出稼ぎ労働者の単なる春節帰省でしかないというのがこの映画の傑作たる所以なのだ。理屈がわからないかもしれないが映画とはそういうものである。
【神話的ものがたりベスト】
『聖なるイチジクの種』
いろいろな切り口で評価することのできる映画だと思うが俺としては文明の逆流によって神話世界まで退行してしまう人々のものがたりとして観た。イランで勃発した大規模抗議デモ(2026年1月6日現在もまた別の大規模抗議デモが起こってるらしい)という現実のリアリスティックな描写から始まって最後は神話。そのダイナミックな語りと発想がめっちゃおもしろかった。
【爆笑悲喜劇ベスト】
『ハード・トゥルース 母の日に願うこと』
2025年にいちばん笑ったのはこの映画で主人公のまぁまぁ良い暮らししてる黒人マザーがとにかく所構わずめちゃくちゃキレまくるのでそれがもう可笑しくて可笑しくて爆笑なのだが、このキレは黒人マザーの感じてる痛み(物理的にも心理的にも)から生じているものなわけで、悲喜劇とはこういう映画を言うのだねぇとしみじみ。俺観測になりますがさいきん良い悲喜劇ってあんまなかったからね。でも人生って100%の悲劇でも100%の喜劇でもあり得なくて、そういうのは必ず分かちがたく混じり合っているのだから、こういう映画が映画館にある、というのはなんだか救われる思いです。
【田舎のヤンキーベスト】
『ホーリー・カウ』
これはこれで大いに笑った映画でフランス映画なのにもうマ~ジで主人公が栃木のヤンキー。すべての行動と発想が栃木のヤンキー。リアリズムの手法で栃木のヤンキーを撮って何が面白いのかと普通の映画なら思うが、これは見事な自然風景の撮影によってヤンキーのしょうもない生活がどこか幻想味を帯びてくる、貧乏底辺田舎ヤンキーの人生のままならなさを克明に描きつつ暖かみさえ感じさせる、というのはなかなかすごいことだ。
【すさまじい妄執ベスト】
『極彩色肉筆絵巻 座敷牢』
ものすごいの一言。インディペンデントのアニメ映画作家・原田浩はアテレコなどを除いたほぼすべての工程を自分一人でやってしまうため一つの作品が完成するまでに平気で10年とかかかってしまう。一人の作家の10年にわたる怨念と悲哀と憤怒と欲望と苦悩の凝縮されたこの極私的アニメーションを客観的に評価する尺度を俺は持たないのでただものすごいとしか言えない。
【すごく眠くなるベスト】
『砂時計サナトリウム』
異端のストップモーションアニメ作家クエイ兄弟かなり待望の最新作。これもまた、ここまでオリジナルな世界を作られたら良いとか悪いとか判断できずにものすごいとしか言えないのだが、俺観測では観た人誰もが寝たと言っている点がとりわけすばらしい。なぜならこの映画は眠ることについての映画だからで、眠ることによる解放と越境の可能性を、スクリーンを超えて観客にももたらすという意味で、唯一無二の体験を与えてくれる映画なのだ。
【リバイバル上映枠】
『ジャグラー/ニューヨーク25時』
感想書こう書こうと思って一ヶ月ぐらい経ってしまったのだが名作リバイバルの相次いだ2025年でいちばんの収穫は間違いなくこの映画だと断言したい。なぜならめちゃくちゃおもしろいからだ。娘を誘拐されたオッサンがブチキレて1970年代のニューヨークをひたすら破壊しながら突き進むだけといってもよいストーリーの潔さと爽快感。エンディングのディスコ曲も最高!