極私的2018年映画ベスト10+2

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過去感想を見ながら面白かったやつをリストアップしていったら30本超えてしまった。そこから10本に絞り込んだのだからいびつ。本当は『ブッシュウィック ―武装都市―』とか超々入れたかったがそこはやはり! 10本と決めたからには10本に収めないといけないとの自制心が働く。

マジック:ザ・ギャザリングとかでもデッキ枚数を60枚と決めたからにはどんなに入れたいカードがあってもその枚数を守らないとデッキバランスが崩れてデッキ全体が機能しなくなってしまうからな。土地引けなくなっちゃうから土地が。
ベストテンはギャザではないしデッキでもないから関係ないかもしれないがぼくマジックプレイヤーでしたからそういうところはちゃんとしておきたい。

並びは基本的に観た順。各タイトルのリンクは観たときの感想文。リンクしてるからいいやと思ってベスト理由しか書いてないのでなんかそのへんわかってください。

『伊藤くん A to E』

やべぇヤツを見てしまったベスト。
腑抜けたラブコメみたいな見てくれですが内容は童貞が高じてジョーカーと化した岡田将生のキモ演が凄まじいナメてかかったら死ぬ系映画で、公開されたのは1月ですがその前後にはこれまた童貞をこじらせた『狩人の夜』ばりの殺人ストーカー牧師ガイ・ピアースがやばい『ブリムストーン』もあったから、2018年は年初からやべぇ童貞がスクリーンに跋扈する恐ろしい年だった。

やべぇヤツ枠にはその『ブリムストーン』と『伊藤くん』のどっちを入れるべきか結構悩んだのですが、最終的に『伊藤くん』になったのはある意味で伊藤くんの方が殺人ストーカー牧師より始末が悪い、一種の純粋悪のような存在だったからで、この男は片っ端から女を引っかけては自覚のないままそいつらの存在がいかに無意味か暴き出し、なんのアンサーも残さずに去って行く。

これはこれで『狩人の夜』のロバート・ミッチャムに通じる狂気の童貞っぷりで、暗黒童貞として岡田将生、童貞映画史にその名を刻んだなと思いましたね。

『長江 愛の詩』

映像美と音響すげぇので超気持ちよく眠れるベスト。
つい昨日ジャン・ヴィゴの『アタラント号』っていう映画のリバイバル上映行ってきて、それはル・アーブルからパリまで何かしら運ぶ貨物船に乗り込んだ船長と新妻の話だったんですが、これも似たようなっていうか、別に表面的にそんな似てはいないんですけど精神のコアは共通するかもしれないなぁとか影響下にあるんじゃないかなぁとか思ったりした河映画。船の形状もそういえば同じようなタイプ。

これ凄かったすね。なんか積んだボロ貨物船が長江を上って下るだけのストーリーで、その合間合間に行く先々にちなんだ漢詩と当地の映像が入るという構成。その画と音だけで見せる紀行映画。
こんなに気持ちよく眠れる幸福な映画になぜ俺の観測した範囲でしかないとしても大して映画好きが騒がないか。いや騒いだとしても眠れる映画としては騒がないと思うのですが、しかしこの上なく美しい映画なのになぁ…。

『ロープ 戦場の生命線』

重い題材を軽妙洒脱にまとめ上げる手腕ベスト。
2018年は『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』も公開されましたが、その主役であるところの戦場サバイバリスト、ベニシオ・デル・トロが舞台をユーゴ紛争下のバルカン半島に移して今度は武器ではなく救援物資を手に駆けずり回る。デル・トロに休息はない。

『ボーダーライン』と違ってこっちはコメディなのでファーストカットが村の唯一水源である井戸に投棄された何者かの死体とかいうどこがコメディなんだ的な戦場ダークネスにも関わらず、わりと全編抱腹絶倒、選曲もノリノリで観ていると戦場ランナーズハイな感じになる。
一歩間違えば即死亡、即紛争再開な極限状況をリアルに再現しつつ(原作はノンフィクションなのでそこらへん手抜かりはないのだ)笑いで乗り越えようとする姿勢たるや立派、たいそう感動的であった。

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『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』

素直に楽しい上にオープニングが完璧ベスト。
2018年はデヴィッド・ボウイの残響が様々な映画に確認できた映画イヤーでもあり、息子ダンカン・ジョーンズの『MUTE/ミュート』(これもベストに入れたかった…!)は直球だが、物語の核心的なイメージとしてボウイの“スペイス・オディティ”を『ワンダーストラック』と『ヴァレリアン』が採用していたし、ついでに言えば“オディティ”の着想元となった『2001年宇宙の旅』の70mm&IMAXリバイバル上映という事件もあった。黒星と化してなお人類に影響を与え続けるボウイである(最後のはボウイと関係ないだろう、とか言ってくれるな)

で『ヴァレリアン』の“オディティ”はオープニングで流れるのですが、その使い方が本当に素晴らしくてオープニングだけで年間ベスト確定。
千の種族がガシャガシャひしめく巨大人工惑星のわくわくビジュアルはリュック・ベッソンここに在りを鮮やかに示していたし、古典的なまでに単純化された惑星大冒険は単に楽しいだけではなくて、新味を与えようと諸々付け加えたり捻ったりしているうちに愉しさの核がボヤけがちな現代SF映画の中にあって逆に新鮮だった。

で、そのストレートな楽しさの追求は絶賛分断中の世の中に対するアンサーとして、“オディティ”映画史上ベスト級のオープニングが端的に示す多文化共存の可能性を強く訴えかけるのだ。

『ホールド・ザ・ダーク』&『ウインド・リバー』

アメリカのダークネスぶっち抜きベスト×2。
10本と決めたからには10本と言いながら2本で1本扱いするゲームブレイカーっぷりが酷いと自分でも思うが構わんこのブログでは俺がルールだ。
それにこの2本は内容が似過ぎてるんで別枠で見てもなぁっていうか、これ『ホールド・ザ・ダーク』の方は『ウインド・リバー』のアンチテーゼとして意図的に当ててきてないかっていうところがあって…。

一応、俺は『ホールド・ザ・ダーク』の方が好きではあるんですけど、ただその好きっていうのも『ウインド・リバー』と比較してってことですからね。甲乙つけがたいっつーか相補的な関係にあるから甲乙つけてもしょうがないよなぁみたいな。
夜の『ホールド・ザ・ダーク』と昼の『ウインド・リバー』、混沌の『ホールド・ザ・ダーク』と秩序の『ウインド・リバー』という感じ。対照的な視座から同じようなテーマを描いた、どちらも強烈なノワール映画。

『悲しみに、こんにちは』

クラシック級こども映画ベスト。
子ども目線からシビアな現実世界を捉えたポエティックなヒューマンドラマで、この映画の主人公よりも年齢的には上になるが、2018年公開作でいえば『シシリアン・ゴースト・ストーリー』が近い趣向だったように思う。
こちらは写実寄りの作劇なので幽霊とか幻想とか入り込む余地がないが、子どもの見る世界と大人の見る世界の目線の違いこそがファンタジーなのだという感じで、見たままの現実しか描いていないのにそこにはファンタジーと詩情が咲き誇ってんである。

スペイン語圏の子役はやたら達者なイメージがあるが主人公のライア・アルティガスも例に漏れず。
慣れない環境に置かれた子どもの揺れ動く心情をめちゃくちゃ繊細かつダイナミックに表現していて、こいつとんでもねぇなと思いましたね。

『セラヴィ!』

こういう群像劇好きなんですよベスト。
ロバート・アルトマン調の雑多群像コメディで、結婚式の裏方のドタバタを移民問題労働問題等々の社会風刺を織り交ぜつつ描くのですが、これがよくできていてそこ収まらないだろうっていうところに強引に収まった時の快感、堪らないっすね。

収まりの良い群像劇ってあるじゃないすか。『カメラを止めるな!』なんかもそこに含めていいんじゃないかと思うんですけど、分かりやすいキャラを適材適所で配置しながらあちらこちらに丁寧に伏線張ってって、伏線ありますよ~伏線ありますよ~って誘導しながら最後にハイ伏線が気付いたら東京タワーになってました! っていうあやとりみたいな群像劇。

俺それはそれで好きなんですけど、『セラヴィ!』みたいなカオスがずっとカオスなままで一向にまとまる気配を見せない群像劇の方が好きなんで、これはそのお祭り騒ぎ感が良かったし、祭りには祭りの秩序があるからカオスは恐れずに放置したらいいじゃないみたいなフランス的アナキズムにグっと来ましたね。

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『アーリーマン ~ダグと仲間のキックオフ!~』

他愛のないことに心血を注ぎすぎだろベスト。
2018年は大から小まで本当に良いアニメ映画が多くて、『スモールフット』なんかも年間ベスト級に面白かったのですが、やっぱクレイアニメの持つ画力がすげぇかったので『アーリーマン』。
いやすごいですよ。こんな素朴なコメディにどれだけの時間と労力をつぎ込んだかと思うともう笑えないよね。感動です感動。

どういう素朴かって隕石落下からの衝撃で火山噴火、アツアツの火山岩が原始人たちの集落に降り注いで、熱いから蹴ったりなんかしてたらちょっと面白くなってきちゃった。そうですそれがサッカーの原型だったのです! みたいな。
イギリス的ブラックジョークとか女王いじりもちょくちょく入れてくるんですけど基本そんな感じで、でもそこにトゲのない平易な社会風刺もあったりして、当たり前なんですけど考え抜かれた素朴さで。

この超絶技巧で取るに足らないように見えることを描く職人芸、職人の矜持、やっぱすげぇですよ。ベスト余裕。

『500ページの夢の束』

涙量ベスト&女優ベスト。
エル・ファニングがめざましい活躍を見せる一方で姉のダコタはどこ行ったんだと思ったらこういう映画に出ていて、自閉症の『スタートレック』マニアとかいう難役をそうと見せずにサラっと演じていた。
やはり華があるからエルの方についつい目が行ってしまうのですが、ダコタの役者的成熟はちょっと目を見張るものがあったので、これからはそっちも注視していきたい、です(ちなみにダコタ、2018年日本公開作では『ブリムストーン』にも出ていた)

で『500ページの夢の束』ですが、これは2018年いちばん泣いたなぁ。1シーンなんですよ。たった1シーン、それもひどく平凡に切り取られた1シーンで涙腺が開放時の三峡ダムに。
この絵面の平凡さには理由があるらしく、監督曰く自閉症の人は激しい映像運動にはついて行けなかったりするので、そういう人でもできるだけ観れるように、と。
その理由を聞いて閉まりかけた三峡ダムがまた! 『アーリーマン』とは別の意味で素朴な映像・物語の持つ力強さを感じる映画でしたね。

『ドラゴンボール超 ブロリー』

なにはなくともハイテンションベスト。
12月頭ぐらいの時点では俺の中でこの枠は『斬、』でほぼほぼ確定していて、『斬、』はもうオープニングから石川忠のドンドコ系インダストリアルサウンドで心中ヘドバン、北田雅也の殺気立った音響も塚本撮影によるカメラ寄りまくりの殺陣もライブ感ありありで最高な高揚体験だったのだがそこにまさかのブロリー襲来。

艶めかしくも禍々しい北田音響に対して『ドラゴンボール超 ブロリー』はひたすら声優が絶叫おおおああああああ! 石川忠のドンドコインダストリアルに対してはキャラ名を超テンションでコールし続ける戦闘BGMでいいいえええええええええええええええああああああ! 荒々しい塚本撮影の殺陣には描線がスパーキングする超バトルでだだだだだああああああああああううううわああああああああああ!!!!!

ごめん『斬、』、俺『斬、』大好きだけど超サイヤハイテンションに勝てなかった。あと『斬、』のタイトル、文章にするとすごい読みにくい。

【番外編】『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』

ホラー映像作品ベスト。
ベストテンの中にそういえばホラーがない。2018年も面白いホラーいっぱいあったはずなのに、と不思議に思ったのですがすぐさま疑問氷解、観たホラー映画は全部『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』に食われました。

全10話約10時間のNetflixドラマとせいぜい2時間の映画を比べるのはあまりにも不公平なのですが、とはいえ『ヒルハウス』を抜きにして『ヘレディタリー』も『イット・カムズ・アット・ナイト』も『ア・ゴースト・ストーリー』も、要するに2018年のホラージャンル話題作をどうこう言うのはそれはそれで不公平感がある。それぐらい『ヒルハウス』のホラー的射程は広かった。

ということで番外編として『ヒルハウス』を入れて丸く収める。脚本、映像表現、音楽、音響、俳優、原作というかインスピレーション元のシャーリィ・ジャクスン作品の解釈に至るまでパーフェクトなアメリカン怪談監督マイク・フラナガン畢生のホラー超大作。これは凄まじいインパクトだったなぁ。

【ママー!これ買ってー!】


ヴァレリアン 千の惑星の救世主(字幕版)[Amazonビデオ]
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こんな面白い映画を全世界的に大コケさせる地球が嫌になったので俺もあの人工惑星に乗って地球から離れたい。

500
さるこ

あけましておめでとうございます。
ここ数年、年賀状に当年ベスト3映画を書き込むのですが、私の2018年は『花咲くころ』『ウインド・リバー』『教誨師』でした。
おかげでいつも、彼女への年賀状だけは年末ギリギリです。

さるこ

機会があれば、ぜひ!『花咲く』はグルジア(ジョージア)映画です。グッときますよ〜
今年も沢山の映画に出会いますよう。

JameGumb

あけましておめでとうございます。
今年もガツンときそうな映画やら本やらの紹介を諸々参考にさせてもらおうと思っております。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

よーく

明けましておめでとうございます。
映画は毎年30本くらいは観てると思うんだけど観たそばから忘れるトリ頭なので昨年は『幸せの絵の具』と『スリービルボード』と『ドラゴンボール超ブロリー』くらいかなと思ってたらこの記事を読んで『セラヴィ!』と『500ページの夢の束』を思い出しました。俺にとっても『500ページの夢の束』は他人事じゃないから映画館で割と泣いたんだけど忘れてたな…。
今年は忘れないようにメモる。
俺も未見ですが『教誨師』は近々下高井戸シネマでやりますよ。時間さえ合えば行こうと思ってるけど、どうかな。
今年も一本でも多くいい映画を観たいですね。

よーく

フィルマークス!結構以前に友人から勧められて、これ便利そうじゃんと思ってからずっと忘れてました。いや流石に何でもかんでも忘れすぎだろ。
早速登録したので今年はこいつを駆使して鑑賞した映画をチェックして年末には今年の映画ベスト10とか精査してやろう。
今年の映画ベスト10を精査してやろうということを忘れなければですが…。