【ネッフリ】『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』プレイ感想(ネタバレ超あり注意)

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《推定ながら見時間:40分(1周目)》
《推定ながら見時間:50分(2周目)》
《推定ながら見時間:5分(3週目)》
《推定ながら見時間:0分(4週目)》

インタラクティブ・シネマといえばやはり奇才ゲームクリエイター・飯野賢治とその代表作『Dの食卓』が頭に浮かぶが、あれがゲームの側にシネマを導入する試みなら『バンダースナッチ』はシネマの側にゲームを導入する試みで、そうしてみると技術的にはともかく構造的には特段新しいこともないのだが、4周した今めっちゃ切ない。

この切なさは確かに映画では体験したことがない新しいものだと思った。これはゲームの切なさで、サウンドノベルの『街』を初めてクリアした時の記憶が蘇ったりする。
なんで4周もするかって『バンダースナッチ』基本的にバッドエンドしかない。で、ノベルゲーを含めてアドベンチャーゲームって大抵はハッピーなトゥルーエンドが隠されてたりするわけじゃないですか。

だからこれもたぶん俺が見つけられてないだけで、哀れな主人公くんを救うトゥルーエンドに繋がるルートがどっかに隠されているんだと思って4周して、それでこれ要所要所に設置されたA/Bの選択肢をプレイヤーが選ぶことで進行する映画ですけど、1カ所だけ数字を手入力する『かまいたちの夜』の真犯人の名前入力みたいな仕掛けがある。

そしたらさぁ、絶対そこがトゥルーエンドに繋がる分岐点だと思うじゃん、ゲーム的に思考すれば。正解の数字を入れたら主人公助かるルート入るんだって。
主人公は若手ゲームプログラマー兼デザイナーの設定で、それで彼が崇拝するハッカー気質の天才ゲームクリエイター(ウィル・ポールター)が「メモしろ」って言うんですよ、いかにも意味ありげに。あと「全ては符号だ」とか。

2週目でそれに気付いて、それから目を皿にして耳をラッパにして画面に隠されているはずの数字をペン片手に探しましたよ。その一部を手元のメモから抜粋すると、「matey」「13120525」「9/12」「PAX=PAC=PACS」。
「13120525」というのは「matey」をアルファベット順の数字に置き換えたもので…って段々おれがあの狂える主人公みたいになってるじゃないか。おそろしいものですよコンピューターゲームは。

それで、でもそんなものは全部意味がなかったわけです。いや物語的にはどれも意味があるんですけど、あの数字入力も結局は正答の20541かそれ以外かで展開が変わるだけの二択で、正答を入れるとトゥルーエンド…それは俺にこんな哀しい終わり方はゲームならバッドエンドだから別にトゥルーエンドがあるに違いないと思わせたエンドだったが…そこに至るためのヒント映像が得られるだけだった(P.A.C.Sを信じるな、とかそんな文言)

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『街』を思い出したというのはあれも最初、操作できる8+2人のうち何人かのエンディング(※それぞれに独立したエンディングが用意されている)がバッドすぎたからどっかの選択肢を間違えたか、あるいは選択肢によって隠し後日談が見られるんだと考えた。

それで何度も選択肢を変えてやり直すんですが、結局その何人かの運命変わらなくて、このバッドエンドを受け入れるしかないんだと理解した時にはうわ超切ねぇなってなったもので…そういうゲーム的なリアリティの在り方とか哀感は『バンダースナッチ』の物語の核だったんですが、インタラクティブ・シネマの形式がそれをプレイヤーにもメタ的に体験させる仕組みになっていて、そこがおもしろかったですね、この映画は。

あと内容的なところで言うと、画面に隠された(ありもしない)暗号を探しながらこれじゃあまるで『アンダー・ザ・シルバーレイク』じゃんとか思ってたんですが、あの映画にも伏流していたコンピューターゲームと陰謀論の結びつきというのが『バンダースナッチ』にもあって、こっちの場合は時代設定が1984年だからもっと色濃く出る。

そこもちょっと面白いところで、アメリカのコンピューターゲームは西海岸のハッカー文化が母胎となって発展してきた面があるんで、日本のコンピューターゲームにはあまりそういうところはないですけど反体制的な思想と親和性がある。
天才ゲームクリエイター・コリンはその典型みたいな人物で、この人は部屋に置いた巨大な『AKIRA』の東京大破壊図パネルを背にしてLSDをやりながら、政府の陰謀がどうとか並行宇宙がどうとか語る(時代的に『AKIRA』まだUSAに伝播してないんじゃいないかという気もするが、そこは並行世界の出来事だと思えばいいのだ)

1984年っていうのは『ブレードランナー』があって『ニューロマンサー』があってみたいなサイバーパンク真っ盛りじゃないですか。
サイバーパンク小説とか映画の舞台装置としてコンピューターゲーム(またはゲームセンター)ってよく出てきますけど、そういう、まだコンピューターゲームがなにか変革の魅力を放っていた時代の空気を描いた物語としてよく出来ていたと思ったし、そのSF的想像力をインタラクティブシネマの形式に落とし込んで2018年に映像化するっていうのは面白いコンセプトだなぁって思いましたね。

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せっかく4周したのでざっくりと備忘録的エンディング感想。エンディングはいくつもあって辿り着くとクレジットを見るかルート分岐の選択肢まで戻ってやり直せるんですが、どうもこれプレイ時間をカウントしていて60分を過ぎてから最初に到達したエンディングで強制的にクレジットに入ってしまうらしい。

そういう仕組みに惑わされてこのゲームいや映画はバッドエンドと通常エンドとトゥルーエンドの3種類にエンディングが分かれてるんだと思い、コリンの言う無間地獄を彷徨するパックマンの如く何度も何度も正解なきトライ&エラーを重ねたわけですが、お母さんといっしょエンド(仮)だけはプレイ時間60分に満たなくても到達するともう後戻りはできず、クレジットが確定。

だからこれがおそらくトゥルーエンドなんでしょうね。そこから考えると『バンダースナッチ』はこういう物語になる。
呪われたゲームブック“バンダースナッチ”をゲーム化しようと絶賛プログラミング中のステファンくん19歳は幼い頃に経験した母親の死に今でも自責の念を感じていた。

近づく納期は偶然にも母親の死んだ日。二重のメンタル負荷により脳が熱暴走を起こしかけたところに、ゲームを売り込んだコンピューターソフト会社で出会った天才ゲームクリエイター・コリンが危険なワードを吹き込む。
この世界は一つじゃない。並行世界は互いに影響を与えながら存在している。何度でもやり直せる。我々はコントロールされている。自分の意志じゃない。PAC、プログラム&コントロール。パックマンは無間地獄だ…。

ということで精神崩壊ルートに入ってしまったステファンくんは父親を殺す夢を見たり列車事故で死んだ母親の最期の姿を夢に見たり人食い悪魔のPAXや政府の陰謀もしくはNetflixの陰謀を夢に見たりしながら、この全てがどれも夢ではなく並行リアルの正規エンドで、こんな風にゲームみたいに人生がやり直せるのなら、母親と一緒に列車に乗ることもできるんじゃないかと考えるようになる。

果たしてそれがリアルな出来事かどうかは知らないが、かくしてステファンくんは過去に戻って母親と一緒に列車に乗ることを選ぶ。
治療の一環として精神科医に母親の死を語っていたステファンくんはこうして死ぬ。並行世界は影響を与え合う。あり得たかもしれないもう一つのリアルで死を選んだステファンくんはこっちの世界でも死んでしまったのだった。

現実にはたぶん、納期に追われての過労死だろうけれども(二重にかなしい)

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全ルートのフローチャートは探せばネットにあるんで、攻略情報的なのが欲しかったそっちをどうぞ。以下たぶんあまり正確ではないエンディング別分岐解説ですが、更にもう何周かして精度を高めたりする気はない。疲れました。

いやそれにしてもこういうゲーム…映画をやるとノベルゲーのフローチャート機能とか、今ならゲーム一般に普通に備わっているセーブ機能のありがたさが身に染みてわかりますね。
選択肢メモって数字をメモって何度も最初からやり直して、ファミコンのゲームでもやってる気になりましたよ…。

駄作エンド
分岐場面で何も入力しないと左側の選択肢が自動的に選ばれる仕様上、たぶん多くのプレイヤーが最初に到達するエンド。ソフト会社の要求を素直に受け入れて共同開発すると“バンダースナッチ”は最低のクソゲーになる。
でもステファンくんの精神は崩壊しないで済むし誰も死なないので一番のハッピーエンドと言えるのかもしれない。『かまいたちの夜』で言えば香川に弟子入りエンド。
中途半端な出来エンド
コリンの家でステファンが飛び降りることを選択すると“バンダースナッチ”は会社が制作を引き継ぐことになる。結果、可も不可も無い中途半端な出来に。ステファンくんも無駄死にしているので悲惨度が高いエンド。
ちなみに精神科医からもらった薬を素直に服用してゲーム開発に励んでいても中途半端な出来になるが、その場合ステファンくんは死なない。
最高傑作エンド
父親を殺して死体をバラバラにすると“バンダースナッチ”は傑作ゲームに仕上がる。
その後、哀れなステファンくんはお縄を頂戴してゲームも回収されてしまうが、現代になってNetflixのインタラクティブ・シネマとしてそれをリメイクしようとする開発者が現れた、というメタオチ。
話題性だけエンド
父親を殺して死体をそのまま埋めようとするとゲームの完成前にステファンくん逮捕。“バンダースナッチ”は一応発売されたらしいがゲーム評論家に「話題性だけですね」とかこき下され、発売元のソフト会社は社会的責任を問われる。
ちなみに選択肢によってはステファンくんが追加でコリンかソフト会社の社長も殺す。色々と不幸なエンド。
Netflixエンド
メンタルをやられて俺を操ってるのは誰だと叫ぶ主人公に正体をNetflixと教え、その後精神科医との格闘で窓から逃げようとすると辿り着くエンド。
カメラが引くとそこはスタジオ内に作られたメンタルクリニックのセット。なんとすべてはNetflix映画の撮影であった。『ホーリーマウンテン』かっ。
お母さんといっしょエンド
他のエンドは選択肢を間違わなければ一直線に行けるっぽいが、これはどうも他のエンドを少なくとも一回経由しないと辿り着けない。
ままならないゲーム開発とコリンから受け取ったビデオの影響で混乱するステファンくんに家族写真を見せると母親が死んだ日の夢を見る。同じ分岐場面でプログラミング指南書を見せると父親の金庫の夢を見る。

最初に後者を選択すると金庫のパスワードを選択する場面で「PAX」か「PAC」ぐらいしか選べないが、母親の夢を見てから再度この場面を訪れると「TOY」の選択肢が現れる。
その先の過去の場面でステファンくんを母親と一緒に行かせるとめでたくエンディング。お母さんと一緒に死ねてよかったですねって全然よくないだろ! でもトゥルーエンド。

【ママー!これ買ってー!】


街 ~運命の交差点~ 特別篇 – PSP

PS2期ぐらいまではわりとあった実写取り込みのノベルゲーは基本的に静止画進行なので、それを動画に置き換えるとこうなるんだろうみたいな正統進化感が『バンスナ』にはある。選択肢にタイムリミットが付くあたりは『やるドラ』みたいですよね。超懐かしい響きだな『やるドラ』。
あと『街』の記憶が去来したのはステファンくんと『街』の主人公の一人の境遇が近かったからでもあった。クリエイターはたいへん。

↓インタラクティブではないが似たような趣向の映画といえば


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