極私的おすすめエピソード20選:『ポケットモンスター』(カントー編&オレンジ諸島編)

『ポケットモンスター』なんて初代の緑と青と『金銀』の銀を大昔にやったぐらいでさして興味もなかったのだが、アニメがNetflix(とAmazonプライムビデオ)で配信されてたのでなんとなく見始めたら止めどき喪失。気付いたら金銀編に到達していたので完走記念に無印カントー編&オレンジ諸島編118話の中から面白かった20エピソードをザ・より抜き。
以下完全に俺目線で読む人のこととかポケモンマニアのことなど微塵も考慮していない素直なリストとなってますのでそこらへんわかってね。愛とかないですから。面白かったけど全然まったく愛はない。

第1話『ポケモン!きみにきめた!』

なにはなくとも第1話。ポケモンの世界観の提示からサトシの旅立ち、ピカチュウとの反目そして和解、更にはカスミとの出会いまで一気に駆け抜けるシナリオ密度の高さとドライブ感は無印随一。いやぁすごいなぁ、たった30分弱ですからねこれ。アニポケの成功はこのエピソード一つで既に決まっていたと言っても過言ではない。
個人的見所はまだサトシに懐いてないピカチュウがサトシに紐で縛られてズルーっと引っ張られていくところ。この時のピカチュウが結局118話の中で一番可愛かったですね。

第8話『ポケモンリーグへのみち』

そこらへんの空き地に非公認ジムを勝手に構えるDIYジムリーダー、アキラが登場する回。少年漫画の王道的な熱血展開で、悲願の100勝を達成したアキラが相棒サンドと共に旅立つラストはポケモンリーグでのサトシとの再会&再戦を予感させたが、その後出てこなかったからサンドともども超頑張ったわりに結果を残せなかったらしい。後から振り返るとなかなか切ない回である。
じめん系のサンドを水に慣れさせるアキラのスパルタ特訓を「ポケモンは友達なんだぞ!」とその友達をいつもこき使ってるくせに自分を棚に上げて批判するサトシに対してタケシはポケモンブリーダーの視点から冷静にアキラの飼育法に関心を寄せる。ポンコツキャラ扱いされることも多いタケシの大人な面を垣間見ることのできる回としても面白かった。

第9話『ポケモンひっしょうマニュアル』

いつものように森をさまようサトシ一行が見たのは野原に設置されたルームランナーを息を切らして走る制服姿の男の子とロウソクを手に彼を取り囲み「東京フレンドパーク」形式でポケモンこれなんだクイズを出す同級生とおぼしき男子たち。
謎が深すぎる導入部が最高である。なんだこれは。呆気にとられて見ていると本筋の方もなかなか異色で、ここは金持ちのガキが入学を目指す(後にロケット団のコジロウもその一人だったことが判明する)寄宿制のポケモン予備校、生徒たちはゲーム版のポケモンのバトル画面を模したシミュレーターでポケモンバトルのお勉強をしていたりする。冒頭の謎シーンはその生徒たちのイビリ風景であった。

シミュレーターより生きたポケモンと触れあうことの方がよほどお勉強になるんだい! みたいな熱血サトシのいつもの説教で結局は平凡にまとめられてしまうのだが、シチュエーションの異様さとゲーム画面を出すメタフィクショナルな演出、そして一向にポケモンマスターになれないまま大人になってしまい他のガキどもからガン無視されている万年予備校生の存在など、アニポケの予定調和を破壊するパワフルなカルト回だったように思う。

第13話『マサキのとうだい』

ストップモーション・アニメの神様レイ・ハリーハウゼンの手(特撮)で作られ初代『ゴジラ』を含めて後の怪獣映画に多大なる影響を与えた『原子怪獣現る』と、その原作であるレイ・ブラッドベリの短編『霧笛』のオマージュ回。
ポケットと言いつつ到底ポケットに収まらない存在としてのポケモンが神秘的に描かれたポエム・エピソードとして心に残る。

第15話『サントアンヌごうのたたかい!』

珍しくムサシとコジロウ以外の無名ロケット団員が登場する回で、サントアンヌ号に集められたポケモントレーナーたちとそのポケモンを一網打尽にしようとするロケット団員たちの集団ポケモンバトルが見物。冒頭のコギャルに扮したムサシとコジロウ、オッサンに騙されてコイキングを買わされるコジロウも笑える。林原めぐみのコギャル芝居…。

第17話『きょだいポケモンのしま!?』

タイトルはレイ・ハリーハウゼンが特撮を担当したジュール・ヴェルヌ原作『SF巨大生物の島』か、もしくは何でもかんでも大きくすることからMr.BIGの異名を持つ巨大派監督バート・I・ゴードンが監督したH・G・ウェルズ原作『巨大生物の島』のパロディ。
無印アニポケの怪獣系エピソードはどれも面白いが中でもこれは怪作、サトシたちとはぐれてしまったピカチュウらサトシポケモンとロケット団ポケモンが無人島で一夜を過ごすが、その会話に日本語訳が出る。

ポケモンの考えていることがここまでストレートに描かれた回は他にないだろうし、ヤドランのおでん屋でピカチュウたちが晩酌するのもこのエピソードだけだろう。後半にはタイトル通り無表情の巨大ポケモンが大挙して現れサトシとロケット団が逃げ回るドタバタ展開が用意されているが、その顛末もむちゃくちゃである。本筋には一切関係しないヤドンがヤドランに進化する無意味なオチも悪ノリ全開。

ロケット団のドガースとアーボはお歳暮とお中元で貰ったもの、アーボはポケモン相手でも片言で喋る、ヒトカゲはピカチュウに敬語を使う、など以降のエピソードにはたぶん引き継がれなかったオモシロ設定多数。ヤドンの醸し出すバカンス感も最高な馬鹿エピソードだった。

第19話『メノクラゲドククラゲ』

街を牛耳る金満オババがリゾート建設の邪魔になるからと三杯酢を撒いて野生のメノクラゲを追い払っていたらその影響で巨大化した(またか!)ドククラゲが街に上陸。この巨大ドククラゲもニャースの口を借りて私利私欲にはしる人間どもに語りかける(『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』のオマージュだろうか)ので無印のポケモンはわりと喋る。

開発に浮かれる愚かな群衆、危機が迫っていること伝えるタッツー、そして迎える大破壊と短い中にも怪獣映画のエッセンスが詰まった好編。オババが戦車で突撃するあたりはちょっとだけタツノコアニメ的なドタバタ感です。

第20話『ゆうれいポケモンとなつまつり』

タケシの惚れっぽさをギャグとしてではなく『雨月物語』的な悲恋怪談に仕立て上げた忘れがたい一本。たのしい夏祭りに非業の死を遂げた女の影がちらついて…というホラー調のプロットなのだが、展開に一捻りある。サトシ一行の与り知らぬところで幽霊が現れた目的が開示されるオチにはなかなかジンときてしまう。
耳なし芳一と化すタケシ、たぶん初めて髪を下ろしたカスミの浴衣姿、突如として極妻化する林原めぐみ、などなど他では見られない場面もっぱい。

第26話『エリカとクサイハナ』

お話的にはさして面白いものでもないと思うがクサイハナのヨダレをエリカ様が「あらあら、またヨダレを垂らしちゃって」とか言いながら拭き取るシーンでギューンッ! ってなったので。あとサトシの女装姿もポイント高し。松本梨香が女のふりをする10歳の男の子を演じるこの倒錯、イイっすね。

第34話『ガルーラのこもりうた』

ゲストキャラとして語尾が「なのだ!」の金持ちパパが登場する問題作。そのむかしサファリゾーンを観光で訪れたパパは一緒に連れてきたまだ赤ん坊の息子を観光用のヘリから落として見失ってしまった。でも平気なのだ! パパの言うとおり息子はガルーラに拾われて野生の少年として逞しく生きていたのだった。これでいいのだ!

やがてパパママと再会した野生の少年。育ての親のガルーラと生みの親のパパママとの間で引き裂かれた少年が出した答えは…少年は答えを出せなかったのでパパママがガルーラのお腹に入って少年と一緒に暮らすことにするのだった。これでいいのだ? それにしても「おっぱい好きはあの子の証拠!」とかアニポケで聞くとは思わなかったよ。

第36話『あらしのサイクリングロード』

ムサシとコジロウの衝撃の過去が初めて明かされた地味に記念碑的なエピソード。ロケット団に入る前の二人はなんとチャリンコ暴走族であった。片やチェーンをぶん回しながらチャリを駆る「チェーンのムサシ」、片や恥ずかしげもなく補助輪付きのチャリで爆走する「補助輪のコジロウ」、二人の爆走は伝説となってサイクリングロードに刻まれ、チャリンコ暴走族の崇拝対象となっていたのだった…。

良いナニコレ回。

第37話『でんのうせんしポリゴン』

言うまでもなくアニポケ史上最大の問題作にして永久けつばん。だがその内容はある意味フラッシュよりも衝撃的であった。
サトシたちがいつものようにポケモンセンターを訪れると困惑するジョーイさんがいる。話を聞けばポケモン転送装置が不調で送ったはずのポケモンが正常に届かないらしい。その理由を探るべくポケモンセンターで調査をしていたのがポケモン転送装置を開発した天才・アキハバラ博士であった。

坊ちゃん刈りに勉三さんメガネ、CV:島田敏のハイテンションで「あるわけないッ! あっちゃいけないんだァァァァッ!」とか「いったい何をする気だァァァァッ!!」「た、大変なことになってしまったァァァァッ!!!」とか突っ走るアキハバラ博士のキャラの濃さよ。だいたいなんだアキハバラ博士って。命名が直球すぎるだろう。アキハバラ博士はポリゴンの生みの親でもあるので事故さえなければもっと活躍できたのかもしれない。ゲストキャラにしておくにはあまりに惜しい怪人であった。

そのアキハバラ博士の乱心でサトシたちは無理矢理電脳世界に送り込まれ、先に中に入っていたロケット団と一戦交えるのだが、『トロン』みたいな電脳世界のトラフィック表現、ジョーイさんが外部エンジニアに入れさせた(ここ重要)ワクチンソフトのロボットアニメ的(マクロスとか?)な戦闘機風フォルムなど、スタッフが冒険したというか、かなり遊んだ映像表現が斬新。ポリゴン対ポリゴンのバトルも電子ポケモンだけあって形状を自在に変化させながらの独特のもので、短いながらも見応えがあった。

ポケモンの世界観から離れた電脳世界が舞台とあって無印の中でも際立ってオリジナルな一本。視聴者をフラッシュで攻撃することになるワクチン投入にスーパーなハイテンションで絶句するアキハバラ博士、なんとなくコンピューターの中の危機を察知したジョーイさんの「(ワクチンソフトの)そのコマンドはもう使わないでください!」も、今なら現実とのリンクっぷりに笑えて仕方がないので、修正版の配信を強く願う。

第48話『ガーディとコジロウ』

コジロウの衝撃の過去が明らかになる回。ムサシともどもポンコツ金欠キャラで馴染んでいたコジロウの突然のキャラ変というかキャラは別に変わっていないが過去が変われば今の見え方も変わる、実はスーパー御曹司だった設定の開示によりコジロウ観に大幅な修正を迫られた。
そうかー、何をやっても上手くできず自分が金持ちの息子っていう以外に何の取り柄もないボンボンであることを自覚しながらも親からは社交界でそれなりの役割を求めら将来を嘱望され親がなんでも決めてしまうから自分からああしたいとかこうしたいとか言えないお金持ち生活の息苦しさに耐えかねてのロケット団入りだったのかー。

ロケット団て良い職場なんですね。第66話『イワークでビバーク』ではムサシが雪に醤油をかけただけの何かを寿司として食わされていた壮絶貧乏家庭の出身であることも判明し、学歴や身分で人を選ばないロケット団と総帥サカキの株が爆上がりである。ちなみにガーディはコジロウがガーちゃんと呼ぶ愛犬的なポケモン、ひ弱なコジロウをずっと守ってきたガーちゃんは自分を置いてロケット団に入ってしまったコジロウに恨み吠えひとつこぼすことなく、ムサシそっくりのサディスト許嫁から逃げ回るコジロウを助けてやるのだった。泣けるナァ。

第49話『カモネギのカモ』

クワイ河マーチを口ずさみながらどこからともなく現れるカモネギ。実はこいつは旅人風情から荷物を巻き上げて糊口をしのいでいるケチな泥棒放浪者の相棒。今日も一人と一匹で一芝居打ってサトシたちとロケット団をまんまと騙し、パトロール中のジュンサーも含めてみんなから追われる羽目になるのだった。

なんのことないエピソードだが個人的にめちゃくちゃ好きな回である。このはぐれ者の哀感。沁みますなぁ。ポケモンと人間の関係にはこういう形もある。それがたとえ法に反するものであったとしても、泥棒放浪者とカモネギの主従ではない対等な共生関係は胸を打つ。別にそんな感動回ではないのだが感動的ではないということが感動的なのだ。

第50話『トゲピーはだれのもの!?』

一説にはカスミ10歳のヤンチャファッションからはみ出たヘソを(放送倫理の観点から)隠すためにカスミの抱きポケとして採用されたとも言われるトゲピーの初登場回。しかしそれ以上に重要なのは名作揃いのニャース回のおそらく最初の一本ということで、トゲピーを孵化させるために卵を必死に温めるニャースの姿にはこんな一面もあったのかとちょっと泣けてしまう。アニポケ版『のび太の恐竜』だ。

その後、トゲピーの所有者を決めるべくサトシたちとロケット団で個人戦トーナメントを行うのだが、他の連中と違って持ちポケがないのでトレーナーとポケモンの一人二役で参戦したニャースは「ニャース! 乱れひっかきニャ!」「わかったニャ!」とか自分で言って自分で答えたり反論したりしながら戦うことになる。「そうだ…ニャーはポケモンだった…」の台詞など笑ってしまうが、金銀編までのシリーズ構成を担当した脚本家・首藤剛志の当初の構想では人間とポケモンの境界線上に位置するニャースが物語上の重要なポジションを占めていた(その片鱗は『ミュウツーの逆襲』で見られる)という話を聞けば、存外笑って済ますに留まらない深みのあるエピソードと言えるかもしれない。

第57話『そだてやのひみつ!』

わちゃわちゃしていて楽しいいろんなものの初登場回。育て屋の概念もムサコジのライバルのヤマトとコサブロウもコジロウの持ちポケのウツボットもこれが初出。そしてたぶん初出で二度目はなかったのがムサシ役・林原めぐみのミステイクとそれをフォローしたコジロウ役・三木眞一郎のアドリブ。
ジュンサーさんに捕らえられたロケット団が留置場から脱獄するエンディングで三人はいつもの口上をかけ声に抜け穴を掘るのだが、そのかけ声がラップ調だったのでノリが良すぎたのか林原めぐみが「世界の破壊を防ぐため」と言うところで「世界のへ…か…は、破壊かっ!」と言ってしまう。そこに三木眞一郎の呆れたような「疲れてんじゃないのかぁ?」

林原めぐみに対して言っているようにも聞こえるし穴掘りに疲れたムサシに対して言っているようにも聞こえるのでアドリブだとすれば(アドリブとしか思えないが)見事な応答。ワハハと誤魔化すように林原めぐみが豪快に笑ってそのままスタッフロールに入ってしまうのだからなんだかすごい回である。見ていて幸せだったので無印アニポケの裏ベストに推したい。

第59話『けっせん!グレンジム!』

タケシ戦やマチス戦を除けば純粋にバトルで勝ってバッジを獲得してきたとは言い難いジム戦チーターのサトシがようやくジムバトルっぽいジムバトルをした回にして、ついにリザードンが本気を出した回。
その相手がカツラのブーバーというのはゲーム版の絵柄が染みついた身にはなんだか締まらない気もしたが(学校ではその独特のフォルムからおっぱい頭と呼ばれていた)、アニメ版のブーバーはちゃんとかっこよかった。いいっすね~ブーバー。寡黙な武士みたい。相手が武士とくればリザードンも手加減なし、上空百メートルぐらいまで持ってって地球投げで一気に火口に投げ落とす。いくら溶岩に生息するポケモンったって死ぬだろ。迫力のバトルでしたね。

第72話『ニャースのあいうえお』

個人的な無印のベスト回。ニャースが言葉を話すようになったその悲しき理由とは…という話だが一筋縄ではいかない。映画の都ホリウッド(この命名は「ひいらぎの森」を意味するHollywoodが日本に入ってきた当初は「聖林」、ホーリーウッドと誤訳されたことに由来すると思われる)を舞台にしたニャース悲話を彩るのは文学パロディ映画パロディ。『吾輩は猫である』『ニューシネマパラダイス』『ローマの休日』『雪国』『望郷』『七年目の浮気』『蒲田行進曲』…ニャース今昔物語の裏ではこぶ平時代の林家正蔵が演じる映画監督ヒート南野のポケモン映画(第71話『ポケモン・ザ・ムービー』で撮ったもの)の試写会が廃墟と化したホリウッド映画館で行われており、映画を見終わったサトシたちが自分たちが出てこないことに不満を述べるという夢幻的な多重構造。正味20分の子供向けアニメとは思えない情報量と批評性とパッションが炸裂した首藤剛志渾身の一本だろう。

映画の中にはおいしそうな食べ物がいくらでもあって、そこでは人間はみんなポケモンにやさしい。たまたま目にした巡回映画の世界に憧れてホリウッドに流れてきた捨てポケのニャースを待っていたのは相変わらずの厳しい現実、食うに事欠いたニャースはホリウッドを縄張りとするペルシアン窃盗団の一員として泥棒稼業に足を踏み入れる。窃盗団のおかげでニャースは食べたいものはなんでも食べられるようになった。けれども人間どもからは疎まれて、理想としていた映画の世界からはどんどん離れていった。

そんなアウトローな日々の中でニャースはホリウッドセレブの飼いポケ・マドンニャと出会う。単なる一目惚れではなかった。そこにはニャースが憧れたあの映画の世界があったのだ。身分違いの恋に可能性はないように思われたがマドンニャが「あなたは所詮ポケモンで人間のように話せないし歩けない」とか言ったことからニャースは二足歩行を練習し人間の言葉を勉強することになる。俳優養成所の屋根裏に棲んでレッスンを盗み見しながら窃盗を重ねるニャース。店主に捕まってぶっ叩かれるのはいつもニャースの役だ。「イ、は痛いのイ…」ニャースが最初に覚えた言葉であった。

やがてニャースは二足歩行と人間語を会得した。だがその姿を見たマドンニャはニャースの映るショーケースのガラスを指して言う。あなたのどこが人間? 二足歩行して人間の言葉を話すニャースなんて気持ち悪いだけ。失意のニャースはマドンニャへの想いを胸の片隅に残したまま街を去るのだった。そのころにはホリウッドはすっかり斜陽期。新しく映画が撮られることもなくかつての栄華は見る影もない。ホリウッドセレブのペットとしてこの世の春を謳歌していたマドンニャも、ほどなくして過去の人となったセレブに捨てられた。

そんな過去に決着をつけるべく今度はいっぱしのロケット団員として街に戻ってきたニャースが見たのは、廃墟と化した街に今も暮らすすっかりくたびれたペルシアンと、生き延びるために彼の情婦となったマドンニャであった。そこにはもう、かつて映画で見た理想の世界はどこにもなかった。ニャースの夢は映画が娯楽の中心であった時代と共に終わったのだ。

もうエンディング曲を「タイプ:ワイルド」から吉幾三の「と・も・こ」に差し替えたいぐらいの堂々たるメロドラマ、フィルム・ノワールである。映画の都の栄枯盛衰、ハリウッドに自由と平等の夢を見た移民一世の挫折と悲哀をニャースに仮託した大人の寓話でもあるだろう。作画も音楽も素晴らしい、文句なしの傑作。

第94話『セイリングジョーイ!あらなみをこえて!』

ウェットスーツに身を包み爆速でカヌーを漕ぐ褐色のジョーイさんのインパクト。こんなにアクティブなジョーイさんは見たことないし、そもそもジョーイさんメインの回なんてこれぐらいじゃなかろうか。
お話的には素直なのでさほど面白くはなかったが野外活動に精を出すジョーイさんの姿は魅力的。回想に出てくる幼少期のジョーイさんが既にナースキャップ的なものを被っているというのも見逃せないところだ。

第98話『おニャースさまのしま!?』

ニャースを神と讃える原始宗教が今も生きる孤島に流れ着いたロケット団のお話。ニャース回らしくサトシ一行は完全に除け者で、島で神様として慕われながら生きるべきかロケット団として石を投げられながら生きるべきかで葛藤するニャースの心情とムサコジとの友情がしっとりとしたタッチで描かれる。
単体でも良いエピソードだが島を去る際にニャースが島民に語る「お前らも自分で幸せを探すニャ」的な台詞は各種ロケット団系エピソード、中でも『ニャースのあいうえお』を先に見ておくと実に沁みてしまう。ムサシもコジロウもニャースもみんな幸せを求めてロケット団の敷居を跨いだのであった。

【ママー!これ買ってー!】


ポケモンTVアニメ主題歌 BEST OF BEST 1997-2012

配信で連続観賞してるからそう感じるだけかもしれないがアニポケ、OPとEDの曲ローテーションめっちゃ早くないすか?

↓配信/ソフト


ポケットモンスター シーズン1 [Amazonビデオ]

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2 Comments
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匿名さん
匿名さん
2023年2月4日 12:06 PM

ついにサトシの冒険が終わるということで、無印を見直していますが1話1話の密度がやけに濃いなと感じます。

有名な回の感想は溢れていますが、
日常的な回の感想はなかなかないため
読んでて面白かったです。ありがとうございます。