映画で遊ぼう映画『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』感想文

《推定睡眠時間:0分》

なんとも人を食った映画で派手な悪ガキバトルが見物だった前作に比べるとなんとアクションが大人しくなったことでしょうと思っているとポターが自費出版したピーターラビット本を大手流通に乗せてキャラクター展開をしようとする出版社のやり手社長が出てきてポターさん! 読者が求めるのはずばりヴィランとしてのピーターです! この業界悪い奴ほど人気が出るものですよ! とこう来ます。ネタられてるーお客ネタられてますねーこれはー。メタいねー。だって実際期待するしねそういうの!

ってなもんで前作がカートゥーン界の老舗ルーニー・テューンズで言うところのコヨーテ&ロードランナー回みたいなルール無用の殺人的ドタバタ編だとするなら今回はパロディと風刺とブラックユーモアとメタフィクションが激盛りのダフィー・ダック回のようなもの。もうねめちゃくちゃですよ時代設定とかもどうでもいい感じになってるからね。田舎に行くと時間が多少巻き戻ってロンドンに出ると時間が進んで現代になってしまう。そんないい加減な!

マグレガーさんとポターさんがピーターラビットの商品展開を巡って口論をしていると「夫婦喧嘩をしているとついつい話が横道に逸れていくものです」のナレーションに続いてマグレガーさん「首都だってずっと同じってわけじゃないだろ! 京都から江戸に移った! 1869年!」いやどのルートでその脇道に入ったんだよ入らないよ! モンティ・パイソンじゃないんだから! 自由な映画なのでピーターラビットは喋るウサギですが人間は喋っていることを知らない設定でしたがお互いに気を抜いてというか切羽詰まって普通に会話をしてしまいます。しかしその後は何事もなかったかのように着地。ご都合主義どころではない。

ストーリーとしては英国名物ケイパー映画と家に居場所のない不良ガキ・ピーターラビットの成長物語をドッキングしつつ並行してポターさんがガンガンの前傾姿勢で絵本のピーターラビットの世界を広げてって置き去りにされたマグレガーさんはちょっと不満とかそういう感じお話が描かれる二層構造、その構造の外側にあるピーターラビット(絵本)をどう売り出すかの話が内側にあるピーターの大冒険の内容を規定するという…いやはや人を食った映画ですよね。「よく二作目作れたよな」とかウサギ連中も言ってるぐらいだ。

ギャグはルーニー・テューンズかモンティ・パイソンですが絵本のピーターラビットの商品展開が云々のネタはオリジナルの方のポターさんが商才に長けた人でピーターラビットの商品展開や版権管理に積極的だった、という話が元になっているんだとか。めちゃくちゃをやっているようだが伝記映画的な側面もちゃんと保っているのだからよくできていますよね。よくできているのだから普通に作っていれば万人受けする家族で見たいハートウォーミングなコメディになったかもしれないのに…だがそんな安パイ路線にツバを吐くのが毒舌ポターの風刺絵本世界だ。オリジナルから離れすぎてどこがピーターラビットやねんのツッコミは不可避だがその精神において確かにこの映画はピーターラビットなのである。

あの世のビアトリクス・ポターも観たらきっと、自由でええやないかとにっこり微笑んで権利書を手に原作シリーズからの改変箇所を指摘し裁判をチラつかせてエグゼクティブ・プロデューサーの地位に収まることで金を懐に入れながら現場をコントロールしようとするだろう。ポターさん!

【ママー!これ買ってー!】


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あの『ルーニー・テューンズ』をジョーダンやりたい放題の大人子供映画監督ジョー・ダンテが実写+アニメで映画化というドリーム企画。そういえば今年はマイケル・ジョーダン主演の懐かしテューンズ映画『スペース・ジャム』の続編も公開されるんだよな。

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