最高系UMAコメディ『スモールフット』を見た!(ネタバレないよ!)

《推定睡眠時間:0分》

スモールフットとはなんだろうと考えているうちに映画が始まり主人公はヒマラヤ山頂の隠れ集落に暮らすイエティ、イエティだからビッグフット、ビッグフットから見た人間は・・・スモールフット! なるほど。

その事情は映画ドラえもん『のび太とアニマル惑星』においてアニマル惑星に住む平和な高知能動物たちが、彼らが地獄星と呼ぶ荒廃した星に住む何者かをニムゲと呼んで恐れているのと結構近かった。

ニムゲとはもちろん人間である。でアニマル惑星の大人アニマルたちは彼らの神話に従い、災いをもたらすっぽい地獄星&ニムゲとは関わらないように極めて保守的で伝統的かつ牧歌的なアニマルたちだけの日々を送っているのであった。新しいものはなにも望まない。ただ平和に生きさせてくれ。

『スモールフット』のイエティたちも概ねそんな毎日だが、『アニマル惑星』の子どもアニマル・チッポくんもそうだったように、子どもイエティのミーゴくんは好奇心が抑えられずにイエティたちの間では伝説の生物とされている人間と関わりを持ってしまう。

UMA遭遇ネタをUMA視点から描く逆転の発想。監督のキャリー・カークパトリックは『ジャイアント・ピーチ』とか『銀河ヒッチハイク・ガイド』で脚本を書いてた人だというからさもありなんな風刺的ユーモアですが、この逆転の発想は『アニマル惑星』に典型的な藤子・F・不二雄先生存命時の映画ドラえもんの基本パターン。

吸血鬼の蔓延る世界でただ一人生き残った人間こそが吸血鬼を無差別的に殺す悪魔として新たな社会を築きつつある吸血鬼たちに恐れられていた。
リチャード・マシスンの有名な『地球最後の男』をF先生は『流血鬼』として、ラストだけ更に発想を逆転して(それが非常におそろしいのだ)翻案したりもしてたわけですが、ともかくそのような思考が『スモールフット』には至る所に流れていた。

映画ドラえもん、俺はもうめちゃくちゃ好きですからね。こんなん堪えられんぞ。もう一度言う。『スモールフット』、こんなん堪えられんぞ!
F先生が原作・シナリオで直接関わっていた(『パラレル西遊記』のみ未参加)『ねじ巻き都市冒険記』までを初期映画ドラえもんとするとして、その頃の映画ドラえもんの魅力と言えばSF的興趣に溢れた巧みなストーリーテリングがまず第一に俺の中では挙げられるのですが、『スモールフット』もそういう映画になっていたんですよ見事に。

それだけでも充分俺は泣くのにデヴィッド・ボウイ&フレディ・マーキュリーのデュエット曲「アンダー・プレッシャー」の替え歌まで持ってこられちゃった。
俺デヴィッド・ボウイも好きなんですよ。初めて買ったCDがボウイの『アウトサイド』だから。

ちなみにその『アウトサイド』は来日記念の限定盤で、ボーナスディスクにはフレディの歌唱パートをゲイル・アン・ドロシーが引き継いだ(このデュエットはその後もずっと続く)「アンダー・プレッシャー」のライブバージョンが収録されていたりする。

可能な限り客観的に見ても異文化交流ものの大変よく出来た素晴らしい映画に思うが、こんなのもう個人的な記憶が色々去来してきちゃって琴線がはち切れるから冷静に見れないよ。

満点超えのスーパー満点だ。最高に次ぐ最高でマジ涙腺決壊だったな『スモールフット』。いやあくまで俺の個人史フィルターを通して見てっていうことなので額面通りに受け止められても困るのですが。

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そんな個人的なことばかり書いていてもしょうがないので『スモールフット』のお話にお話を戻すと、イエティのミーゴくん(クトゥルー神話にはミ=ゴという宇宙UMAもいるがそれとは関係ない)たちは先祖代々受け継がれてきた戒律の書かれた石を纏った長老の教えに従ってなんにも考えることなく生きていた。

知は不幸。無知は幸せ。こう書くとバカみたいに形式ばった教育アニメのようであるがそういうわけではなく、無知賛歌の開幕ミュージカルナンバーなんて実に皮肉が効きまくっていて最高。
イエティ集落で奴隷労働させられているイエティたちが満面の笑顔で無知ばんざ~い長老の石に従っていれば万事解決~とか歌い踊るのだ! こんなブラックに明るい底抜けナンバーで幕を開けるとは思わなんだ(みんな思わないとおもう)

そんな世界に生きていたミーゴくんが偶然出会ったのは世界の珍獣ハンター的なアメリカ系の番組(なんかあるでしょう、サバイバリストとかの肩書き持った怪しい人が世界各国赴くやつ)に出ているパーシーさんで、昔は人気があったが今は落ち目のこの人、イエティの着ぐるみでパターソン・フィルム的な偽UMA動画を撮ってバズらせようと企んでいた。

ミーゴくんはスモールフット=人間の存在を証明したい。パーシーさんはビッグフット=イエティを動画に撮ってバズりたい。
かくして言葉は一切通じないので意思疎通はまったく出来ていないが偶然にも利害一致、ミーゴくんはパーシーさんを集落に持ち帰るのであったが・・・とここからは口外不可ということにしておく。

初期映画ドラえもん的ストーリーテリングということは伏線の鮮やかな回収とかそういうのはかなり見どころ。
これがとても決まっていてかつまた初期映画ドラえもんにこんな伏線回収あったなぁとも思ったものだから具体的なタイトルを出してしまいたくなるがそれは必死にこらえ、『カメラを止めるな!』のシナリオが面白かった人ならたぶんこれもかなりおもしろいであろうと便乗宣伝するにとどめる。

ちょっと久しぶりに見た気がしたな、センスとかディティールよりも構成でシナリオを魅せる類のアニメ映画っていうの。べつにそれ以外が疎かっていうことじゃないんですけど。

誰もがそうかはわからないが俺は糞泣きした替え歌「アンダー・プレッシャー」は恋人にバズり計画を明かしたパーシーさんが歌う。
人気減って仕事減って収入減ってローンとか税金とか大変なんだよぉみたいな感じでなんとも冒涜的イジリアレンジ。心の中では捨て複アカ駆使していいね!連発です。
いや上手いわ使い方。デュエット曲なのにパーシーさんに幻滅した恋人、一緒に歌ってくれないっていう。このユーモアとペーソス。

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でまたこの曲がパーシーさんとミーゴを引き合わせるっていうのもアツいところですよ。パーシーさんのは替え歌ですけども「アンダー・プレッシャー」の原詞の方は好奇心を押さえ込んで何も考えないようにしてるミーゴの境遇の方にかかってくるし、ボウイ、少なくとも一時期はチベット仏教に帰依していたから。

ボウイといえば劇中では使われていないが「ラヴィング・ジ・エイリアン」というのもある。
「スペイス・オディティ」なんか未知の世界に踏み出す時のテーマ曲として英語圏の映画に定着した感すらありますが、『スモールフット』の異種との遭遇の光景には「ラヴィング・ジ・エイリアン」がピッタリきてしまう。
Believing the strangest things, loving the alien…とこう、コーラスが入るわけですよあれ。

閑話がひどい。本線に戻す。アニメーションとしておもしろかったのはちょっとだけクレイアニメ的な質感があったりする一方でミーゴくんが崖から落ちる場面、完全に『ルーニー・テューンズ』でコヨーテがロードランナーにやっつけられて崖から落ちる場面の再現。

パンフレットの監督インタビューでも『ルーニー・テューンズ』の影響が語られていたのですがこのカートゥーン的ノンストップハイテンションドタバタ、笑った笑った。やっぱ『ルーニー・テューンズ』好きは信用できますよ。
でまたそのドタバタがイエティVSスノーモービルチェイスのアクションにシームレスに移行するあたりの手際の良さもグッとくるところだったなぁ。ここは結構真面目にカッコイイし手に汗握る、007みたいで。

俺は吹き替えで見たのですがミーゴの声がチャニング・テイタムとかいうある意味出オチ。そうだよなぁ、イエティっぽいもんなぁ。
子どもイエティ探検隊のリーダーでミーゴのガールフレンド的なポジションのイエティに声を当ててるのはゼンデイヤ、長老イエティはコモン…そのへんミュージカルあり映画としてガチ。

吹き替えだから聴けてませんけどコモンが歌うところもあるんです。これがまた良いシーンなのですがネタバレに絡むので自粛。
あとこれも確認できてませんがダニー・デヴィートも声の出演してたらしい。吹き替え版よかったですけどそんなの聞いたら原語版でも見たくなってしまう。ていうか見る。

曲はもちろん良いし、ぶさいくで弱点ばかりのキャラ造形もいいし、UMA系SFとしてのストーリーは抜群だし、キレの良い台詞は笑えるし、悪人のいない愛すべき世界観もいいし…いや本当これ全部いいんですよ全部。

面白かったなぁ。今年の洋アニメだと『アーリマン』とかも素晴らしい映画でしたけどまたこんな良いやつ来ちゃってもうなんかやべぇんじゃねぇかと思いますが、でも『アーリマン』もそうですがこういうオリジナル企画かまたはそれに準ずる洋こどもアニメは本邦では興行的ガン無視を食らう宿命にあるので…というわけで見てくれむしろ見ろ。どうかどうか。

※良い曲だと思うのですが発表時期が微妙なのであまり陽の目を見ない。

【ママー!これ買ってー!】


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『トロール・ハンター』最高なんですけどあれもトロール側から見たらこんな感じかもしれないと思えば更にたのしめるかもしれない。

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