幸福の映画『宇宙の法 ―黎明編―』を見た(含ネタバレと悪口)

《推定睡眠時間:0分》

ややこしいタイトルですが幸福アニメ映画『UFO学園の秘密』の続編だそうで、このタイトル変更は何かあったのかと思わせたがウィキの編集履歴を確認したところ公開当時からもう決まってたらしい。
幸福アニメといえばRYUHO著の「○○の法」シリーズを原案にタイトルもそのままというのが通例であった、ということは『UFO学園の秘密』は一般客にだいぶ媚びた命名だったのか。

媚びたところであの内容だからノン信者観客の布教どころか不興を買うことにしかならないんじゃないかと思うが、ともかくキャッチーな『UFO学園の秘密』でノン信者を釣っておいて結局は「○○の法」へ誘導するつもりだったっぽい。
確かに法シリーズだけあって前作より説法が多いし長い。前半は『UFO学園の秘密』の延長線上のジャンル系アニメで面白いが後半はRYUHOの講演でしかないというこの劇的なアンバランス。

幸福映画全般そんなものだと思うが、これは特にその傾向が顕著だったかもしれない。俺は知りませんがフィルモグラフィーを見る限りアニメ見る人ならわりと知ってそうな今掛勇が監督。
今までずっと法シリーズを手掛けてきた(監督デビューは『太陽の法』らしい)今掛勇なので何も意図してそうなったわけでもないだろうが、やっぱアニメ屋としてのプロ仕事とRYUHOの説法に齟齬が生じているように見え、むしろ純教団製の素人映画なんかの方が違和感なくまとまっているように感じてしまうから皮肉というもの。

あくまで俺の完全主観で言えばと前置きしておきますが、明らかに、明らかに信者っぽい観客の人のテンション低かったですよ他の幸福映画に比べて。
俺は単純にこっちの法がいや方がアクションが多くてキャラが立っててストーリー展開も(前半は)スピーディーで娯楽映画として他の幸福映画より面白かったですけど、熱心な信者の人が求めるのはたぶんそれじゃないんだろうなっていうところで宗教映画の難しさを感じましたね。誰目線なんだそれは。

ストーリーですが観客全員前作見て完全に理解してる前提のストーリーなので、一応見てはいるがもう細かいところとか覚えていない不信心な俺としてはよくわからん箇所多数。
しかし心配ご無用。そこらへんイマジネーション溢れる美術とどこかで見た絶対にどこかで見たキャラクター、そして例のダイナミックアクションとスペクタクルで補って余りあるカバー。

ちなみにダイナミックというのは今回のRYUHO説法のキータームだったらしい(「人類のダイナミックな進化」とか言う)

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それにしても素晴らしかったのはカタストロフの光景よね。俺に分かる範囲で言えばこの映画と幸福の科学の世界には地球人に擬態して地球を乗っ取ろうとしている悪い宇宙人レプタリアンというのがいて、で前作はそのレプタリアンの陰謀と共に那須にある幸福学園(のだいぶ美化されたナスカ学園)に通ってる仲良し生徒たちがメーテル風の良い宇宙人の助けを借りて「ペルソナ」シリーズよろしく特殊な力と特殊な真実に目覚めていく姿が描かれたのですが、今回はレプタリアンの住む惑星を『FGO』に出てきそうな甲冑を着た仲良し生徒の一人が破壊する。

すごいよこの生徒のパワーで海に巨大な穴が空きましてね。どういう理屈だが皆目見当もつかないのだがそれからワープゲートみたいのを通して(?)海と空が反転して空から海が降ってきて、それで超文明を誇るレプタリアンの都市が水没してしまうんですよ!
よくわからないだろう。俺もよくわからない。ちなみに前作のレプタリアンは爬虫類型の宇宙人だった気がするが、今回は爬虫類型じゃない宇宙人もレプタリアンと呼ばれていたのであれ特定の宇宙人じゃなくて幸福的に悪い宇宙人全般を指す用語っぽい(要するにエイリアン、外国人である)

仲良し生徒の一人がレプタリアンの星を襲撃したのには訳があった。この生徒、自分で「ホワイトナイト」と呼ぶ厨二能力を使うぐらいだから正義のこころを持っていたが、『幻魔大戦』でいうところの幻魔的な神出鬼没の純粋悪に唆されて正義余って憎さ百倍な破壊の権化、「ブラックナイト」と化してしまったのだ。
・・・恥ずかしいがおもしろい。情けないが見てしまう。あの純粋悪とかニャルラトホテプだろうあれ。見てしまうよ、こんなフルチューンの厨二は。

その後ステージは先史時代の超古代文明にタイムトラベル移行、超古代文明を守護する善神エロスの導きで例のレプタリアン星から亡命してきたレプタリアンの頭目であるマンティコアのような失敗したモリガンのようなドラゴン変化女、超古代文明をも破壊しようとタイムトラベってきたブラックナイトとニャルラトホテプ、ブラックナイトの暴走を止めるべくメーテルの助けを借りてやってきた『聖闘士星矢』的な熱血主人公とかがずっこんばっこんした挙げ句、最終的にRYUHOの声を代弁する全身から光を放ちすぎて顔がハッキリとは見えないがそれでも武論尊顔であることは一目瞭然な金星出身の創造神アルファが調停(ここがスーパー説法タイム)するのだったがクトゥルーそれダーレス以降のクトゥルー神話的ななにか、あと色んなもののパクリとパッチワーク。

ひどいなぁ、色んな意味でひどいなぁ。ひどいけどやっぱついつい見てしまうね。先史時代の森とか『地球の長い午後』みたいだし・・・。

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とこのように面白いから困るのだが政治的にはギリギリな感じでギリギリで、なにもタブーなワードが出てくるわけではないがウキャキャと無邪気に楽しめるものでもない。
とにかく、この面白さがクセモノである。まだブラックナイトになってなかった頃のホワイトナイトが幸福学園の卒業式の日に聖闘士星矢とこんな会話をする。

「ぼくはUFOを作るんだ。大学院に進学してUFOを学ぼうと思ってる。星矢は?」「俺は・・・この国を守りたい、かな。自衛隊か警察か」「それなら総理大臣になったらいいよ。自衛隊の指揮権があるのは総理大臣なんだ」「総理大臣か・・・」「ぼくの作ったUFOを星矢が指揮してこの国を守るのさ!」

どんな将来の夢だ。一笑に付したいが幸福の科学が政治進出をまったく諦めていないどころかかなり本気で狙っていることが分かるし、その目的が第一に軍備の増強と掌握にあることも分かるし、ナチュラルにUFOを兵器扱いしてるあたり笑えない感じである。

創造神アルファの説法にはより直接的にRYUHOの政治思想が反映されているように思え、ほとんどこれは幸福実現党のマニフェストの如しだ。
曰く、わたしはまず男と女を作った、この二つの性が愛の中でダイナミックに魂を高めるからである。うろ覚えだが、つまりLGBTのようなものは認めないと言いたいんだろう。(性は)二つで充分ですよ。最近どこかで聞いたような話である。

またこんなことも言う。レプタリアンは力を追求し弱肉強食、一方人間は弱いが調和を重んじる。わたしはあえてレプタリアンを地球に招いたが、それは調和だけでは堕落するからである。愛の中でレプタリアンと共存し弱肉強食の原理を受け入れることで人間の魂は高まる。

男女の性もそうだがRYUHO宗教思想の根幹は予定調和的な善悪二元論で、アルファとニャルラトホテプの終わりなき戦いもゾロアスター教におけるアンラ・マンユとアフラ・マズダの関係性を思わせるものがあるが、それをそのまま政治に翻訳すると端的に言って極右になってしまう。

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前作『UFO学園の秘密』のラストは中国国家主席と合衆国大統領が偽装レプタリアンであると仄めかされるすごいものだったがさすがにそういうのはやばいと誰か賢い人が進言したのか、今回は表面上暴力否定、多様性ウェルカムの穏健路線を気取る(あの続き見たかったのですが・・・)
レプタリアンと人類は平和に共存できるはずだ。ただしRYUHOに従えば。人類VSレプタリアンの構図に第三項として招き入れられたアルファとニャルラトホテプの政治的な役割は目くらましに過ぎないように思われる。

結局、レプタリアンの中にはアルファに従うやつもニャルラトホテプに従うやつもいて、RYUHOの代弁者たる前者に従うレプタリアンは良いレプタリアンとして定住を許され、後者の側についたレプタリアンは相変わらず悪いレプタリアンとして排除されることになる。
『劇場版パトレイバー2』から台詞を借りれば「シナリオを変えずに役者を替えた」わけだ。レプタリアンの語は適宜、移民とか他人種とかLGBTに置き換えてください。

各々が各々のうちに大宇宙の歴史を秘めている的なモナド的イメージ。永劫回帰と力への意志を称揚する俗流ニーチェ。極めて曖昧なというか要するにRYUHOへの帰依のことだろう的な「愛」をその根拠とする疑似弁証法。あと輪廻と仏教的ななにか。そのすべてをゴッチャにしたキメラ説法。
デタラメもいいところだがアルファのお言葉に感動した全古代人と全レプタリアンは思わずひれ伏して手を合わせるのだった。南無。むしろnull。いやニャルか。

せっかく巨大蜘蛛に変身したニャルラトホテプと星矢の戦いが説法パワーで呆気なく終わってしまうとかプロパガンダが全解放になる最後30分くらいは基本的に全部残念な感じだったが、ぶっちゃけそのプロパガンダの下手さに妙に安堵するところがあったというのも事実。
全編面白いトーンのままプロパガンだれたら困る。今回もRYUHO作詞作曲の幸福ソングが三曲か四曲ぐらい実にダサく挿入されその度にテンションが檄下がったが、テンションが下がる度に面白さの幻から逃れてこれがあくまでプロパガンダであることを意識させられる。

厨二的自己顕示欲の強い人なんだろうなRYUHO。思想がなんでもそういう人が実権を握っているうちはまだ平和なもので、こういう組織があかん方向に行くのは自己顕示と承認の私的な欲求を失って、組織として、宣伝として、思想として、単一の目的に向かって滅私の精神で盲目的に動き出す時なんだろうと思いますが、そんな重い映画ではまぁ、ないのですが。

【ママー!これ買ってー!】


ペルソナ2 罰 通常版

宇宙人にカタストロフにタイムトラベルにクトゥルーもどきにとてんこ盛りのこのシナリオを書いた人はたぶん普通にプロなのですがエンドロールを見るとなんか「シナリオ制作チーム」みたいなクレジットになっていて個人名が明らかになっていないので協力はするけど名前はちょっと的な大人の事情が見え隠れする。

それとは関係なく『ペルソナ2』はシナリオの感じが結構かなり似ているので俺このシナリオ書いた人ペルソナやってんじゃねぇかなと思ってますが・・・。

↓似ているといえばこれも


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