ハロウィン映画『ルイスと不思議の時計』の感想(わりとネタバレ気味)

《推定睡眠時間:0分》

いやおもしろかったおもしろかった、ゆかいゆかい。オバケがいっぱい出るんですよオバケ。手作り感覚のオバケが。
ゲロ吹きかぼちゃオバケでしょ、クソ飛ばしトピアリーオバケでしょ、タコみたいな巨大紫ヘビと小型犬抱いたカーラー巻き巻き肥えババァでしょ・・・汚ねぇのばっかだな! あと最後のはある意味オバケだけどオバケじゃないし!

オバケがいっぱい出る映画はたのしいものと相場は決まっている。なんかまとまりのない締まりのない妙にせせこましい映画だったがたのしいからいいのである。
あぁあとあれも良かったですね。機械人形オバケ。これはゆかいよりこわい寄りのオバケだな。『学校の怪談』で言ったら動く人体模型みたいな。あれ怖かったもんね。

それから椅子! 椅子は良いオバケでしたよだって椅子だもん! リクライニングチェアのオバケっていうか単にリクライニングチェアなんですけど(ただし犬のように動く)椅子だからね!
声優が高山みなみだったため主人公のみなしごルイス君が完全にコナン化していた吹き替え版で見たのですがコナン君「おい! 椅子!」とか「椅子! 大丈夫だったかい!」とか言うから笑ってしまった。

ちなみにこれはコナン君が椅子に失礼なガキなのではなくコナン君を引き取ったオバケ屋敷の主ジャック・ブラック(吹き替えは佐藤二朗)がそもそも椅子を椅子と呼んでいるので「椅子! お座り!」みたいな妙なことになるのであった。
原語ではちぇあーとか言ってんですかね。それだとなんか味気ないから吹き替えで見て良かった一番のポイントだなここ。コナン君の「椅子!」は強いよ。

この椅子、たぶんこれは、たぶんというか確実に『アダムス・ファミリー』のハンド君を下敷きにしたネタなんでしょうが、『アダムス・ファミリー』オマージュ感はわりと横溢していたなという感じで、ジャック・ブラックのこんな高らかに宣言なんか象徴的だったようにおもう。「変人の方がおもしろいんだ! 変人万歳!」(※うろ覚え)

『アダムス・ファミリー』的な変人奇人映画なんである。実は魔法使いだったジャック・ブラック伯父のマジカルオバケ屋敷に引っ越してきたコナン君が転校先の小学校でお知り合いになるのはどこかノーマルでない人ばかり。
いつも一人で昆虫図鑑を読んでいる女の子がコナン君を遊びに誘う。「一緒にクモ捕まえにいかない?」。

両腕に固定式の杖を装着した歩行に難のある男子生徒はどう考えてもスポーツとか無理だろうと思われたがバスケの授業で片腕スリーポイントシュートを決める超人であった。

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なかなか切ないのは局外性が人を繋ぐというお話であったので腕を骨折して試合に出られなくなった野球部の少年とコナン君は唯一のお友達になるのですが、この少年は腕が治るや否やコナン君とは遊ばなくなってしまう。
魔法が使えるとか死者を蘇らせるとかヨタ話を大真面目にかます面倒くさいコナン君なのでその気持ちも分からないでもないが、もうちょっと距離感をオブラートに包めよという気にはなる。

それにコナン君ほんとうに魔法使いだったんだからな。すごいですよジャック・ブラックに貰った魔法の本五冊ぐらい読んだらすぐ魔法使えるようになったからな素質あったよ。
っていうか簡単じゃん魔法。この家には入ったら死ぬ扉とか開けたら世界が終わる戸棚とかがそこらじゅうにあるがジャック・ブラックも同居人のケイト・ブランシェットもそういうの基本放置してるので魔法の世界は色々イージーだった。

案の定、そんなイージー管理イージー育児のせいで極小スケールの世界の危機が訪れるが、その引き金を引くのは亡くなったコナン君の母親、演じるは監督イーライ・ロスのカミさんロレンツァ・イッツォであった。
表面上は両親の死を乗り越えなんでもない風のコナン君だったが夜な夜な母親イッツォの夢を見る。あんな事故さえなかったらなぁ。

このへん、ある意味だいにんきアニメ『若おかみは小学生!』と通ずるテーマでちょっとおもしろいところだった。喪失のトラウマのスピリチュアルな克服。
『若おかみは小学生!』と違うのはコナン君の場合はその克服が極めてパーソナルに、社会や家族の外部で秘密裏に、風変わりに行われるということだろう。
そこ以外に共通項とかないので別に比較もなにもできないが、俺はそのへんで『若おかみは小学生!』にもやもやを感じていたのでその矢先の『ルイスと不思議の時計』はちょっと刺さる感じがあった。

巨大毒蛇の棲まう魔法ハウスだからかジャック・ブラックとケイト・ブランシェットの友達以上夫婦未満恋人判別不能の微妙なパートナーは常に中継先の毒蝮みたいなおもしろブラック会話をしている。
ジャック・ブラック、何言われても陽気に笑い飛ばしていたが俺個人史に照らし合わせると急にキレたりするのはこういう人なのでなにか緊張感を伴うおもしろだった。あとケイト・ブランシェットはストレートに怖いかったですキレたらタメなしの真顔で包丁とか刺してきそうで。

悪の大魔術師がカイル・マクラクラン。歳食ってもうだいぶ人間寄りの見てくれになったが人間ならざる役柄、やっぱ肌に合うのか楽しそう。
マクラクランが囚われた戦争の巨大な死と少年の卑近な死をファンタジーと魔法の中で結びつける案外思索的スケールのでかい物語は脇道が多くごちゃごちゃと中途半端に映らなくもないが、狂騒的なお祭りムードでその暗い記憶から目を逸らそうとしている人(たち)の見る世界と思えばなるほどなぁと勝手に納得。

訳あって屋敷のどこかに隠されているらしい大時計の鳴り止まない神経質なカチカチ音は、コナン君とあの屋敷に棲まう人々の緊張状態を表しているかのようだ。
かぼちゃオバケの出てくるハロウィン感もこれが死と霊の訪れに関する物語であることを露骨に指し示すのであった。

あとそのまんまやん的な『シャイニング』パロディに呆れ笑った。対象年齢限界のイーライ・ロス的グロ描写もよかったですね。グロってかぼちゃがグチャアて潰れるとかそういうレベルのグロなのでセンシティブな親御さんも安心。
せっかく魔法使えるんだから魔法バトルだけもっと頑張ってくれたらよかったのなぁっていうところ以外は面白かったです(いやそこ結構でかいんですけど)

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ティム・バートンの『ビートルジュース』っぽい気もした『コナンと不思議の時計』でしたがバートンのついこないだの映画『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』ともちょっと似ている。ちょっとというか本当はかなり似ていた。

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