仕事帰り系映画『メン・イン・ブラック:インターナショナル』感想文

《推定睡眠時間:30分》

映画、もうこれぐらいでいいじゃんっていう感じの映画。ぼく金曜は仕事帰りに必ず新作映画を一本観てから帰るようにしてるんですけど仕事帰りムービーとするともうこれぐらいでいいじゃん、っていうか、むしろこれぐらいがいいじゃん、みたいな。
だって疲れてる。一週間がんばったりがんばらなかったりして働きましたから疲れてますし疲れているから頭が働かない。体力も残ってない。眠い。おなかすいた。おふろはいりたい。ちゃんとした映画なんか観られるわけがない。

だから金曜の仕事帰りにはこういう大味で隙ありありのザ・ブロックバスター的な映画の方が案外楽しめたりするんだな。やっぱ圧倒的に観るのが楽。そんなに頭を使わなくていいしそんなに大袈裟に面白がらなくてもいいし、実際そんなに面白くないし。そんなに面白くないから30分ぐらい寝ても損をした気にならないし、いい加減なシナリオだから寝ても展開がわからなくなることもない。結果、変に気合いの入った映画よりも面白かったなって印象が残ったりするわけです。上映中仮眠で気分もプチリフレッシュ。

いや悪い意味で書いてないんだよ。皮肉とかじゃないからこれ。心からそう思ってるんですよ俺は。映画にも得手不得手があるんだから。真面目に観ると輝く映画もあれば、寝ながら観ると輝く映画もあるんです。ドラッグだって結局はブツよりもセッティングが大事って言うじゃないですか。言わないって言われたらそれはもう、そうっすよねとしか言いようがないよ…。

ともかく、『メン・イン・ブラック:インターナショナル』だ。『2』と『3』は観てないからストーリーに繋がりがあるのかどうか知らないが、知らなくても特に引っかかるところはなかったから実質リブートみたいなものだろう。シリーズの基本設定はオープニングで一通り見せてくれるので脳にやさしい映画である。

テッサ・トンプソンは幼い頃にもこもこエイリアンとそれを追うMIBを目撃してしまった人。以来エイリアンと宇宙の神秘に取り憑かれた彼女は周りのつまらない常人からキャッチーガイ扱いされながらもMIBになるべく必死にサーチ&勉強、ついにはMIBに潜り込んでエージェントMのコードネームを賜るのであった。

さてそんな折、いつものようにエイリアンヤクザ地球襲来の報。目的は遊びらしいが機嫌を損ねて地球を破壊されたりしたらいけないのでMIBロンドン支部の若手筆頭株、エージェントHことクリス・ヘムズワースがエスコートの任に当たる。エージェントMも半ば強引にこれに同行、念願のMIB初仕事となるのだったが。

敵、キャラが立ってておもしろかったな。二人組のドレッド男でヒップホップダンスみたいな動きで迫ってくる。触れたものはドロっと流体化、この溶け具合がまたどこかエロティックでええのですが、正体は星雲型の不定形エイリアン。
良いよね、なんかクトゥルー神話っぽくて。その絵面の強さが最後まで持続しないのがもったいないといえばもったいないが、でもこいつらとエージェントH&Mの初対決の場面、うわなんかやべぇやつ来ちゃったじゃん感があって結構燃えましたよ。そこで燃え尽きて眠りに入ってしまったわけですが。

そういう場面場面の絵で見せる映画だった気がするな。全体を調和の取れた一枚絵として見せるんじゃなくて色んなプチ面白い絵、プチ面白いやりとりのモザイク。プロットはそれを繋ぐためだけにあるようなもので、これがそんなに真面目に組み立てられたお話じゃないなんていうのは冒頭、幼エージェントMが家で寝ていたらポケモンみたいなふわふわエイリアンが部屋に入ってきてそれを追ってきたMIBは両親の記憶を消去、しかし何故か幼エージェントMの記憶は消し忘れてしまったとかいう激甘なご都合主義を見ればわかるじゃんね。SFっていうかチャイルディッシュなファンタジーなんですよこの映画は。ジョー・ダンテが撮るような。

で、そのくせエージェントHことクリス・ヘムズワースの抱える仕事人間のメンタルのわだかまりに妙な迫真性があったりする。そのバランスの悪さもちょっと面白いところで、なんでこんな軽い映画でクリヘムそんな丁寧で繊細な芝居するのっていうのでちょっと笑っちゃうんですが、これが相棒テッサ・トンプソンとの軽妙なやりとりに水面下のドラマを生んでいて、またラストの伏線にもなっていた。

だから表面だけ見ればなんだこれっていう感じはあるんですが、わりと細かいところを見ていくと見所は多くて、まぁ30分寝たからそう言ってもあんまり説得力はないんですが、エイリアンはケレン味があるしクリヘムとテッサ・トンプソンの相手に同僚以上の関係を求めないクールなバディっぷり(これとても現代的なバディの形だと思うんですがねぇ)もなんだか新鮮、リーアム・ニーソンもアイアンマンも応援に駆けつけるサービスっぷりで…いや、やっぱこれ面白い映画だと思うなぁ俺は。

エンディングの呆気なさもこれがMIBの普段のお仕事でしかないってことをあえて前に出したものとして、仕事帰りムービー的に評価したい。

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感覚的に『ザ・プレデター』と通ずるところがあったと思うんですけどそういえば『ザ・プレデター』も公開時になんだよこれって散々言われていた気がするよ。

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