ヤクザVシネ超大作映画『孤狼の血 LEVEL2』感想文

《推定睡眠時間:0分》

ムショから出てきた狂犬ヤクザの鈴木亮平が色んな女の目を潰して回るという(※このストーリー要約には多大な省略と誇張と語弊があります)いわゆるヤクネタ系のヤクザ映画だがその目玉潰しの絵面になんとなく『ブレードランナー』のロイ・バッティによるタイレル殺しっぽさがあったので内容的に全然関係ないけどオマージュなのかなぁ俺の脳のこじつけかなぁと思っていたらこの鈴木亮平が終盤なにやら『ブラックレイン』のようなことをするではありませんか! 言うまでもないがどちらもリドリー・スコットの代表的な作品だからあれやっぱり『ブレラン』オマージュだったんだろうな、目玉潰し。この監督はリドリー・スコットが大好きなんだろう。

その臆面もなく何のヒネリもない稚拙なオマージュっぷりはなんというかちゃんとした映画なら鼻白むところかもしれないがこういう映画ではむしろ好感触、あぁそうなんですねぇ好きなんですねぇ、と視線が生暖かくなる。こういう映画というのはVシネとかです。なんか前作は70年代東映実録路線にガワだけ似せようとしてその再現度も低いがストーリーの方は東映実録の精神などまったくなく東映実録のコスプレをした安いピカレスク・ロマンもしくは厨二ハードボイルドにしか見えなかったので俺の中では酷いなんてものではなかったのだが、この続編には70年代東映実録風を気取るところがないというか、演出的にはそういうところもあるのだがそれがちゃんと(?)パチモノっぽい効果を出していて、結果、東映ヤクザVシネ的チープと悪趣味が全編を覆う。

そのまんまやんけな安直オマージュの数々というのもVシネっぽいところだし悪役・鈴木亮平のキャラのいい加減さとか色々詰め込んでどんどん本筋から逸れていく散漫な展開とか見せたいシーンのために用意された設定の無茶さとかも含めてまったくVシネ、なんか貶してるみたですがいや違うからね、俺は前作よりこっちのが全然好感持てるから。だって前作はどうせできもしないしやる気もない(それはこの監督がインタビューでヤクザは嫌いと公言していることからもわかる。そりゃ俺だってヤクザは野蛮だから嫌いですけどその生態や社会構造に興味を持てない人間に面白いヤクザ映画が作れるわけないでしょうが!)のに東映実録の後継作ですよ~みたいな感じで売られてたじゃないですか、なんか映画に箔を付けるためにさ。

そういうのよくないですよ。そこが俺イヤだったんだよな前作は。人間やっぱり素直がいちばん、下手に背伸びとかしないで自分の出来ることとかやりたいことをやった方がいいのです。『ブレラン』好きなら『ブレラン』オマージュやろうよ、『ブラックレイン』も好きなら『ブラックレイン』オマージュだって入れちゃおう、今度の敵はどんな怖いやつがいいかなぁ…そうだ、女の目玉を潰して回る狂犬ヤクザにしよう! 男子高校生の発想っぽいがそれを恥ずかしげもなくやり遂げる無邪気さがかなり愛おしい感じである。Vシネなんか男子高校生の発想の塊だしな、これカッコいいっしょ的な。

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というわけで前作だってヤクザの抗争劇としてそんなに面白いものではなく、それはひとえにヤクザは絶対悪で警察は多少悪いところはあっても基本は善という明瞭な二元論的善悪設定を施すことで最初から物語のゴールが見えてしまっている点に原因があるように思うが(それでも物語としてはよくできていた)、今回はヤクザの抗争劇かな~? と思わせておいて途中から方向転換、アウトロー刑事・松坂桃李と狂犬ヤクザ・鈴木亮平のリドリー・スコット的決闘へと舵を切るのであった。

今回それに加えて警察の腐敗が入ってくる。俺が世界を動かしてるんだぐらいに思っていた狂犬ヤクザもアウトロー刑事も実は狡猾な偉い奴らにそうと知らず動かされる将棋の駒に過ぎなかった…というのはそれこそ『仁義なき戦い』に代表される東映実録的な構図だが、その哀しみであるとか組織の構造にはほとんどメスが入らない、これは要するに狂犬ヤクザとアウトロー刑事の決闘をお膳立てするためのVシネ的あるいは青年漫画的にインスタントな設定でしかないんである。俺もお前も似たもの同士、というわけで。

どうせガチなヤクザ映画としてはこっちも見てないのでそれで別にいいじゃんと思うのだが多少不満なのはその鏡像関係があまりうまくいっているようには思えないところであった。ダメっすよねぇ、お互いに相手をぶっ倒そうとして探りを入れていく過程で図らずもシンパシーを感じちゃうっていうシーンをちゃんと入れなきゃ。不倶戴天の敵だけど…でも分かるなぁこいつの境遇! っていうアンビバレントがライバル関係を盛り上げるわけじゃないですか。それがこの映画にはなかったように俺には見えた。そういう構図を作ろうとしてるのはまぁわかりますけどさ。

特殊メイクは藤原カクセイってことでゴア描写、バイオレンス描写は前作より遙かにパワーアップ、それもあってヤクネタヤクザの鈴木亮平(これが怖いんだよ)が暴れ回る前半は結構ドキドキしながら見てしまうのだが、一応のヤクザ群像劇として色々夾雑物を混ぜていくので前半のテンションが後半まで持続せず、松坂桃李との因縁の対決にもスムーズに結びつかないのであんまそこも盛り上がらない、というのは結構残念に思う。シチュエーションを作るために「その展開は無理があるだろー」っていうのが後半になると乱発されてそれもちょっと冷めますしね。

までもその不器用な作りも含めてヤクザVシネとして楽しめる映画という感じ。かなりもったいない使われ方をする豪華キャストは楽しいし、カーアクションとかもあるし、ギャグも多いし…70年代の東映実録が異常な完成度(と頭の良さ)だっただけで娯楽ヤクザ映画ってわりとこういうのが王道なんじゃないかとか思ったなぁ。

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それはそれとして『ブラック・レイン』てそこまで面白いか…? っていう長年の口にはあまり出さない疑問があります。

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墜ちる
墜ちる
2021年8月22日 5:24 AM

僕も前作より断然こっちが好きですね!
ナレーションとかでやっぱりズッコケちゃうんだけど笑、鈴木亮平がそれをチャラにしてくれてて。松坂桃李のベビーフェイス感も良い意味で安っぽい。見たいものをちゃんと見せてくれる俗っぽさは本当まさに金のかかったVシネだし、低俗でチープだからこそ前作を凌駕してると思った。
白石監督は撮りまくってて凄いとは思いながらも、そんなに良い映画撮ってないとも思うんですけど…これは本領発揮というか多分本人的も会心の作品なんじゃないの、それぐらい良かったですね。ブラックレイン神格化問題はありますよね笑