おい加藤出てこいよ映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』感想文

《推定睡眠時間:0分》

前作の三池版『妖怪大戦争』は全然面白くなくて今までに観た三池映画(といっても多作なので3分の1程度でしかないが)の中でもかなりしょうもない方だったのではないかと公開時には思ったものだがこのあいだ大映特撮映画祭っていう特集上映でオリジナルの(?)1968年版『妖怪大戦争』を観たらそっちもつまんなかったので三池版のつまらなさはオリジナルを踏襲してたんだなとか妙に腑に落ちる感じになってしまった。

つまらないって別に映画として面白くないってことじゃないですよ。色んな妖怪が出ずっぱりでその造形が愉快だったり異様に怖かったりするのでそいつらがわちゃわちゃとやってるのは楽しいんですけど、ただ大映特撮映画らしく演出が平板でカメラワークはケレン味に乏しくという感じなので…あと全然「大戦争」じゃないしね! おそろしい力を持つ西洋妖怪ダイモンが長きに渡る眠りからついに目覚めたっつって最初の方で中東らへんのどっかの遺跡セットが出てきた時にはおおこれはなかなかのスケール感だなとわくわくしたんですがダイモン、日本に来たら殿様に化けて主に城内で狼藉を働くだけで、それを平和に暮らしてた地元の日本妖怪たちが力を合わせてやっつけるという極小スケールの話になってしまって、でもまぁそれが日本妖怪のスケール感、日本妖怪の世界観だよなみたいなところもあるので、つまらないが妖怪映画としてたいへん正しいなとか思ったのでした。

その意味では『妖怪大戦争 ガーディアンズ』もまたとっても正しい妖怪映画で製作総指揮・荒俣宏は伊達ではない。荒俣宏は製作総指揮に留まらず妖怪カメオ出演とか妖怪鎮魂歌の作詞も手掛けており、脚本にはクレジットされていないものの龍脈がどうとか人間が妖怪に人間が名前を付けると妖怪は力を失ってしまうとかの設定は荒俣神秘学を多分に取り入れたものであろうし、それになによりこれは前作同様の加藤保憲シリーズである。そこで加藤かー! と加藤サプライズは結構なお楽しみポイントであるが(でも説明とかは全然ないので子供には意味不明だとおもう)、正しい大映的妖怪映画にして正しい『帝都物語』ある意味外伝、そうだな密かにオールスターキャスト映画でもあるし映画版『帝都物語』っぽさもそういえばなんとなくあったな散漫で起伏に欠けるところとか!

まぁ、だから、ぶっちゃけて言えば面白くなかったよ。映画版の『帝都物語』だって面白くはねぇもん。あのムードは大好きだけども!

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困ってしまうよなこういう映画は。嫌いかって言われればいや別に嫌いではないし、好きかって言われればいや別に好きってほどでもないし、楽しかったかと言われればそれはまぁ楽しかったとは言えないが…でも大映特撮の正統後継映画として妖怪特撮とか妖怪特殊メイクはそれなりに面白く観てしまったしあのオチなら続編も観たいしなぁ。オールスターキャストの無駄遣いっぷりとかも本当に無駄でいいなと思いますけどほら普通は無駄ってよくないことじゃないですか。だから人には確実に勧められないよね。勧められるとしたら寛大な脳みそでこういうのをちゃんとわかってくれるマニア限定。そんな物わかりの良いマニアは俺は嫌いですが…!

とにかくスローペースだし演出は平板、なによりスケール感が非常に乏しいのですよ、大映的に。それはもう前作が普通の面白い娯楽大作に見えるくらいに。今回かなりおっきな事件(事故?)が起きるんですけど、それが徹底して妖怪世界に紛れ込んだ寺田心&猪股怜生の小学生兄弟の視点で描かれるから、その事件の人的被害とかが一切出てこないんだよな。するとさ、なんかスローペースとかゆる演出もあって緊張感とかないじゃん。妖怪世界も大変なことになってるが人間世界もこんな大変なことにっていう対比があればそれは大事だから心くん日本を救ってくれ! っていう感じにもなりますけどずっと妖怪世界だからさ、それも大映特撮的に妖怪たちのちょっとユーモラスな掛け合いとか織り交ぜながらやるわけでしょ、それはさ…面白いっちゃ面白いけどそんなに身が入らない!

いやだから正しいんだよそれは、妖怪映画として。妖怪は別に人間なんかいなくても楽しく暮らしてるわけじゃないですか。妖怪ファーストなんですよ。台詞のある人間役が総計8人ぐらいしか出てこない映画だからファーストを通り越してもう妖怪オンリーですよね。この妖怪愛。「大戦争」というが今回もやっぱりそんなのしないしな。いいんですいいんです、妖怪はね、争いなんかしないんです。人間とは違うんです! その妖怪イズムには心を打つところがないとは言えない。西洋妖怪VS日本妖怪の構図にしない平和な敵設定もまた人間のように国家とか民族とか人種とか性別とかいう下らないくくりで敵味方を分けたりしない妖怪イズムだ。妖怪イズムすぎていきなり何が始まったのかと思ったけどな、「大戦争」のクライマックスは(でも良いシーンなのだ)

まぁ、いいか。色んな妖怪出てくるし猪股怜生くんが尋常じゃない可愛さを発していたしな…どうせなら上の子は寺田心くんじゃなくて現代っぽく女の子とかにしてもよかったんじゃないかと思うが(オリジナルの『妖怪大戦争』だってメイン子供は兄妹だし)、男の子向けの映画ってことできっと心くんのキャスティングは決まってたんでしょう。監督の三池崇史といえば最近はガールズ戦士シリーズが主なお仕事であるから女の子向けのガールズ戦士に対してこちらはボーイズ戦士だ。妖怪映画にそんな区別いるかなぁとは思うが売りたい観客層を考えるのは三池じゃないので仕方がない。

そのガールズ戦士の二本作られた映画版がいずれもハイテンション&ハッピーな娯楽映画の鏡だったことを思えばこっちの映画の淡泊さは脚本の悪さもあるとしても半ば意図的にやっているのかもしれない。大映特撮的なものに対するオマージュと、それからこれはかなり対象年齢が低めに設定されてるんで、子供がちゃんと着いてきてくれるようにっていう配慮の二点で。まぁガールズ戦士も対象年齢はかなり低いので擁護の理屈として苦しいが…とにかくまぁ、そういう映画!

いいですよもういいです! わかりました! 続編も観ますから、ただ続編ではもっとちゃんと加藤保憲との対決をやってね! それだけお願いします! あ、あと東京に鎮座する「あのお方」も誤魔化さずにちゃんと出すように!

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子供向けの映画のくせに直接関係する映画を三本ぐらい観ないとどこが面白いのかよくわからんとかハイコンテクストすぎないか。

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匿名さん
匿名さん
2021年8月20日 4:59 AM

先日、時間が空いてたので見ましたが見ててかなり疲れる映画でした。終盤の衝突な合唱の場面や続編のためだけにあるようなラストシ、ひたすら叫ぶ寺田心など上映中ずっと???で、全体を通して悪い時の三池監督作品でした。ただ姑獲鳥役の安藤サクラと

匿名さん
匿名さん
2021年8月20日 5:09 AM

すいません途中で送ってしまいました。
先日、時間が空いてたので見ましたが見ててかなり疲れる映画でした。終盤の衝突な合唱の場面や続編のためだけにあるようなラストシーン、ひたすら叫ぶ寺田心など上映中ずっと???で、全体を通して悪い時の三池監督作品でした。ただ姑獲鳥役の安藤サクラと謎の起用のヒカキンは良かったなって。まぁ子供向けのファミリー映画なんで文句言ってもですよね。
長文乱文失礼しましたm(_ _)m。