落書き感想『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』

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無毒化されたと言うなら原作漫画がアニメ化された時点でもうかなり毒は抜かれているのだから『サザエさん』『ドラえもん』と並ぶ国民的アニメになった今の『クレヨンしんちゃん』に毒気を求める方が間違っているような気もしないでもないが、それでも我が子をグリグリしない(※児童虐待)みさえや象さんを振り回さないしんのすけ(※児童ポルノ)を見るともっと毒があってもいいのになぁとは思ってしまう。

やさしくなったんだよ映画クレヨンしんちゃん。どこから変わったのかな。たぶん『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』あたりが転換点になったんじゃないすか。その後も悪ふざけ路線に振れることはありましたがブラブラと振れつつも着実に泣き路線というか、教育路線というか、親が安心して見せられる路線に進んでいった感じはあります。要は映画ドラえもん化、映画ポケットモンスター化。もう子供のチンコ出してバカやってるだけで映画が売れる牧歌的な時代じゃないんでしょうね。なにも子供のチンコ出してバカやってるだけの映画シリーズではなかったが…。

でその時代のニーズに合わせてしんちゃんの健全児童化も絶賛進行中。TVシリーズではどんな風になってるのか知りませんがこの映画とか見る限りだと健全すぎてなんで風間くんに怒鳴られたりみさえに怒られたりしてるのか全然わからん。のびのびした普通の良い子なんじゃないかしんちゃん。今回は落書きがテーマだからしんちゃんも落書きをたくさん描くが、ブリーフは描いてもウンチは描かない、ななこおねえさん(偽)は描いてもビキニギャルは描かない、結構普通の幼稚園児で嵐を呼ぶ感じはほとんどない。

いいのだろうか。だって枠にはまらない自由な落書きをしようよっていう映画じゃないすか。たとえしんちゃんが健全児童でもそれがテーマと齟齬を来さなければ話としては成り立つので、2016年の『爆睡!ユメミーワールド大突撃』とか2018年の『爆盛!カンフーボーイズ』とかは健全しんちゃんがむしろ作品のトーンであるとかメッセージと噛み合っていて面白かったが、今回のテーマで健全しんちゃんっていうのは…どうなの? みたいなの、ある。

まぁでもね、映画クレしんのしんちゃん、わりと最初からずっと良い子だったよね。象さんとか振り回すけど根は良い子。その意味では象さんを出さなくなっただけでいつもの映画クレしんかもしれない。むしろ原恵一時代の映画クレしんがネタのチョイス的にもクオリティ的にもおかしかっただけで、これぐらいの感じの子供向けアニメが映画クレしんの本道と言えなくもない。本郷みつる監督時代への回帰っていうのはちょっと感じましたよ。本郷しんちゃんは明確に子供目線のアニメだったので。

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でも本郷しんちゃんはアクションとかは必ずあったからなぁ。俺映画クレヨンしんちゃんはアクションが見たくて観に行ってるところがあるのにさ、アクションの比重、年によって振れ幅が大きいとはいえトータルではやっぱ減ってると思うんですよね。そこがクライマックスにならなくなったっていうか。アクションは出てきても添え物っぽくて、泣かせドラマが映画の中心になってるような気がするんですよ、ここ数年の映画クレしん観てると。

だからこれもあぁやっぱそっちなんだって感じで多少はガッカリした。雲の上に落書きエネルギーで浮いてるラクガキングダムっていうのがあるんですよ。でそこには落書きみたいな奔放造形のキャラがいっぱい住んでる。『ワギャンランド』のキノコボスの食パン版みたいな奴とかホットドックに車輪とサングラス付けた奴とか。地上の子供たちがのびのびと落書きしなくなったのでラクガキングダムは崩壊の危機にあって、キングダムの防衛大臣が無理矢理落書きを描かせるために春日部を侵略する…っていうのが今回のお話ですけど、そしたらさぁ、ラクガキングダムの変キャラたちとかすかべ防衛隊のバトルみたいなのを期待するじゃん。

でもそれ、しないの。最近の映画クレしんこういうの多いんですよ。悪者にも悪を成す理由があるっていうのばかり強調してしんちゃん側と悪者のバトルを正面から描こうとしない。で泣かせドラマに持ってく。別に泣かせドラマに持ってってもいいけど(本郷しんちゃんの傑作『ヘンダーランドの大冒険』だって泣けるところはありましたよ)悪者とのバトルはちゃんとやって欲しいんだよ。せっかくしんちゃんが描いたものが実体化する魔法のクレヨンを手に入れたのに、これじゃあ宝の持ち腐れです。

ぶりぶりざえもんが久しぶりぶりに大活躍するのは良かったけどね。ブリーフとの絡みも良かったですよ。ニセななこも良いキャラだった。そういうところはおもしろい。部分部分はかなりよい。落書き心のない大人を魔法のカメラで壁に貼り付けてグラフィティにしちゃう発想とか冴えてるよね。でも全体的には笑いと泣かせと社会批評と教育的配慮(?)を無理に同居させようとして散漫になっているし、結局それでテーマもぼやけてしまったんじゃないですかね。

どうせグラフィティも出すんならキース・ヘリング風の棒人間をしんちゃんが魔法のクレヨンで量産したりしたっていいのに。そういう遊びがあってもいいのに。子供には分からないかもしれない作り手のオタク的遊び心っていうのは映画クレしんの大きな魅力だったと思いますけど、それも最近は減ってしまったなー。なんというか、落書きの精神を称揚したい作り手サイドと落書きの反社会性は教育的配慮から映画に出したくない製作サイドの間でうまい妥協点が見つけられなかった映画という感じだ。

【ママー!これ買ってー!】


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『ヘンダーランド』の何が素晴らしいってしんちゃんの不安な心情がリアルに描けているところですよ。最近は最近はって年寄りみたいなことばかり言いたくないけどさ、なんか最近の映画クレしんはしんちゃんを定番キャラとして扱いすぎていて、いち幼稚園児としての感情の機微を蔑ろにしてるように感じますよ。物語に都合の良いキャラにしてるっていうか。

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