こどもヒーロー映画『シャザム!』の感想(ネタバレなし)

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《推定睡眠時間:0分》

予告編がいかにも楽しそうな感じだしポスターには脳天気に「世界救うのに、明日学校かよー」とか書いてあるので頭脳はコドモなバカ映画かと思ったがストーリー的にはバカよりも大人から見捨てられた子供たちのやるせなさがだいぶ勝っていた。だいたいシャザムくん学校あんま行ってない。

騙されたわー。いや確かに笑えるバカシーンいっぱいあったんですけど『アクアマン』みたいな軽いやつじゃなかったわー。でも結果的にそれで良かったですけどねー。
なんかあえて泣きたくない笑って済ましてやりたくなる泣ける映画って感じでしたよ、ティム・バートン版『バットマン』系統の。ヴィランの可哀想な幼少期から話が始まるところとか『バットマン・リターンズ』みたいですしね。

ヒーローもヴィランも自分を望まれぬ子供として定義している傷ついたアウトサイダーというのもそういえばそれっぽいところだったかもしれない。
異世界の謎ジジィから魔法パワーを受け継いだ(※強制)かなしげ孤児のビリー・バットソン少年は「シャザム!」の呪文で脳みそがなんも成長しないまま大人の身体のスーパーヒーローに変身できるようになるが、呪文ではなく時間で大人に成長して悪の魔法パワーを手に入れたヴィラン、Dr.シヴァナ(マーク・ストロング)も心の方はやっぱ子供のままだった。

というわけでこれは早く大人になって信用できない養父母なんかに頼らず自分一人で生きたい傷心子供と、家族から受けたメンタルダメージが原因で大人になりきれない大人子供が、ともに家族の呪縛から逃れるために半ば八つ当たり的に戦う映画だったんである。なんかどんどんかなしくなっていくな。

一応ストーリーをおさらっておくと、ビリー・バットソン少年は3歳の時に実の母と離別した孤児で、14歳になった今でも養子先を転々としながら母親を探している(導入がすでにかなしい)。
このままじゃいかんだろってことで今度住まわされることになったのは孤児の集まるグループホーム的なところ。悪い奴は養父母を含めて誰もいなさそうだが、ビリーくんはもうすっかりひねてしまっているのでやっぱり今度も馴染めない。
確かにこのホーム、食事の時にはみんなで手を重ね合わせてから飯食ったりしてハートウォーム感がキツすぎる。観ている俺も逃げ出したい感じであった。

さてそんな折、ビリーくんは学校帰りの電車で信じがたい経験をする。アブダクションである。アブダクションといっても拉致ったのは宇宙人ではなくハリポ的な魔法使いだが、ともかくそのアブダクションによりビリーくんは指から電気を放出したり他にも色々できたりするスーパー能力をインプラントされてしまう。

グループホームで同室になった片足の不自由なヒーローマニア少年フレディくんはそのことを知って自分のことのように超よろこぶ。お前のスーパー能力がありゃあなんでもできるぜ!
かくしてビリー&フレディのショックボーイズはYouTubeチャンネルを開設、変身ビリーのスーパー能力を活用した電撃ネットワークな危険動画を矢継ぎ早にアップして瞬く間に地元フィラデルフィアのスターとなっていく。

だがそこに、ビリーくんとは正反対の悪のスーパーパワーを持つDr.シヴァナ(マーク・ストロング)が現れた…。

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それにしてもこのヴィラン、Dr.シヴァナのキャラが良いんだよなぁ。こいつはそれなりに金のある家の生まれなんですけど幸せとはほど遠く、兄貴と比べて文武両面で劣っているからと親父から出来損ない扱いされていたりする人。
男なら力で勝ち取れと親父は言うが少年シヴァナくんはそういうのが苦手なので占いオモチャでばっか遊ぶ日々。

それもあって例のアブダクション体験後(※ビリーくんと違って魔法パワーは貰えなかった)、この人は魔術とか超常現象の研究にハマっていく。もう一度あの異世界に行って子供の頃に手に入らなかったスーパーパワーを手に入れようってわけですね、親父が力で勝ち取れとか言うから。

この屈折感たまらんね。こいつファッションセンスとか壊滅的なんですよ、悪のスーパーパワーを手に入れた後は厨二的に黒の革ジャンとサングラスなんかで固めちゃって。でもそれが切なくて良い。強い俺をアピールしたくて着てるんだけれども着慣れてないのが一目瞭然。

演じるマーク・ストロングもいつもの紳士然としたキャラを崩したちょっとぎこちない芝居をしていて、弱さを隠そうと虚勢を張ってるようなところが透けて見える感じでとても良かった。こういうマーク・ストロングもあったんだなぁ。

映画全体としては目を瞠るようなアクションがあるわけでもなくびっくりするような展開があるわけでもなく(まぁそこはあるといえばある)、いかにもガキの喜びそうな怪物が遊園地で暴れたりするストレートなガキ向けヒーロー映画って感じで、大人が見れないこともないだろうけれども「大人も子供も」みたいな狡さがないそのシンプルさが俺にはたいへん好ましく思えた。

身体が大人になったらなにしたい? ビール飲んでストリップ行って自販機を殴って出てきたジュースをいっぱいパクる! 基本的にそういう感覚。普通に犯罪行為が混ざっているのが素晴らしい。だって常識を弁えた大人の目線じゃなくて子供目線の映画ですから。そりゃ多少の不道徳に不謹慎もある。それを上回るバカさもある。

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しょうもないといえばしょうもない映画かもしれないが、良いガキも悪いガキも出てこないでただ等身大のガキがいっぱい出てくるだけのガキ向け映画はどうしてガキにヒーローもしくはスーパーパワーの概念が必要か切実に訴えかけてくる、という意味でこれはかなり本質的なヒーロー映画だったのかもしれない。

いや俺はヒーロー映画あんま観ないからわかりませんけど、でもいつの間にかヒーロー映画が大人たちが盛り上がるイベントだったり大人たちの政治実践や論争の場(それが悪いことだとは思わないし、逆に良いことだと思ってるが)になってしまった中で、こういう良い意味で下らないガキどもに寄り添う慎ましいスーパーヒーロー映画、やっぱ沁みるし、クソガキどもには必要だと思うんですよ。

いや、良い映画でした本当。なんとなく『グーニーズ』みたいでもあり『ザ・キープ』みたいでもあり無責任ヒーロー映画の傑作『ジャンパー』みたいでもあり。ようするにアドベンチャー要素もクリーチャー要素も悪ガキの願望充足要素もある。そんなの面白いに決まってるでしょ。

子供スケールの葛藤を丁寧に掬っているのも良いし、ガキ向けって言いつつ家族とはなにかみたいな社会的な問いかけもちゃんとあるしね。
別に映画史上の傑作とかヒーロー映画史上のメルクマールとかは全然思いませんけど、俺これに関しては悪かったところ特にないです。そういう映画でしたね。

あとこれはボーナストラック的なトリビアなんですけど、映画データベースのallcinemaで「シャザム!」ではなく「シャザム」で作品検索をするとちょっとだけグっとくる検索結果になる。
観た人だけがなるほどと膝を打つ完全ネタバレトリビアなので観てない人はやらない方がいいっていうかやっても疑問符しか浮かばないと思うが、観た人は暇だったらやってみると面白いかもしれないです。

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自分のためにしかスーパー能力を使わない糞自己中ヒーローが不快にして痛快なピカレスク・ヒーロー映画。すごく面白いわけではないがすごく好き。

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