映画の感想『ハーツ・ビート・ラウド』『7月の物語』

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ダメな男ばっかりだなぁ的な映画の感想二本立て。いつになっても子離れできないダメなロック親父が出てくる『ハーツ・ビート・ラウド はじまりのうた』と性犯罪案件の男がたった70分の上映時間に3人も詰まったダメ男のセット販売映画『7月の物語』です。

『ハーツ・ビート・ラウド はじまりのうた』

《推定睡眠時間:20分》

ニック・オファーマン演じる親父がやってるブルックリンのレコード屋がいかにもなロック親父の夢想するレコード屋、この親父店内でタバコ吸いながらヘッドホン付けて音楽ディグって客なんかガン無視、「店内でタバコはねぇだろ」のクレームに対して「買ってから言え」と完全論破するさまは親父ドリームそのもの。
いいなぁ、嘘なんですけどこういう城的な店持ちたいなぁ。嘘なんですけど。あと完全論破した客は店の外に出るやすぐさまAmazonで店に置いてあるのと同じレコードを買っていた。そういう経営をしているのでこの店潰れることになりました。だろうな。

親父はこんなですがその娘カーシー・クレモンズは医大を目指す真面目ガール。親父からロック英才教育を施されているに違いないがそっちの道に進む気はない。だが親父の夢は娘と親子バンドを組んでロック界に殴り込むことだったのでー、対立。
この娘は親父と違ってめちゃくちゃ人間が出来ているのであまり事を荒立てずにどうにかキッズ親父を説得しようと試みるが、とにかく聞き分けのない親父なので勉強をしてる後ろでセッションしようよ~セッションの時間だぞ~ワレワレハセッションセイジンデ~スとか言ってきたりして話にならない。今それどころじゃねぇんだよ!

でも切実よね。娘も人生の岐路ですけど親父も人生の岐路だから。同居してる母親は認知症で今の生活を続けるのが難しいし娘は医大受かったら一人暮らし始めちゃうわけじゃないですか。それでレコード屋も畳むことになって。ロックバンドやりたくて挫折した人だし娘とのバンドに執着するのもまぁわからなくもない。
わからなくもないけど先に進まないとダメっすよね、とそういうお話で、なにもバンドをやらなくてもレコード屋をやらなくてもSpotifyのプレイリストに自作曲が入らなくても音楽はいつもすぐ傍にあるんだよという音楽賛歌、音楽で繋がる人々の人生賛歌であった。ええ話ですね。

娘と作った曲を娘に無断でSpotifyにアップしたらインディーズのプレイリストに入ってSpotifyを店内BGMにしてる馴染みのドーナツ屋で偶然放送。舞い上がって「この曲は俺と娘が作ったんだ!」と狭い店内でスーパーアピールするも客にも店員にもハァ? って顔をされてしまうオファーマンがかわいい。家に帰ると即刻今後のバンド活動予定を子供テンションで書き始めてしまうのもかわいい。でもこいつが自分の親だったらたぶん嫌だろう。そのへんの塩梅が絶妙。

ほか、良かったところと言えばトニ・コレットの中年恋愛っぷり、それから曲も良いんですが、その曲をやる最後のプチライブシーン、あれ良いライブシーンでしたね。客のノリが見事にバラバラで。すげぇノってるやつ(身内)もいれば全然興味のないやつもいて。ちょっとだけ身体を揺すってるやつもいて。で、曲重ねてるうちに段々と場の空気が暖まってきて、なんとなく客とバンドが一体化してくる感じ、本当のインディーズバンドのライブみたいだったなぁ。

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『7月の物語』『勇者たちの休息』

《推定睡眠時間:5分(『勇者たちの休息』)》

『7月の物語』は70分ぐらいの中長編で二部構成、前半はバイト先の先輩後輩女子コンビが湖にちょっとしたバカンスに出かけてエロ男の毒牙にかかる話、後半は留学生女子が同級生のキモ男につきまとわれてついでにナンパ男も吸い寄せてしまう話、フランス(在住)の男はろくでもないという70分であった(ネットの人はフランスでは女性の権利がちゃんと守られているとか言っていたのに!)

いやぁそれにしても本当にろくでもないな。第一部のエロ男は湖で水上スキーのインストラクターみたいなことをしてるんですけど、こいつ女が更衣室で着替えてるところに普通に入ってきますからね。ごめんまさか裸だと思わなくて、ってその弁解の弁解する気のなさすごくない。こいつは大物ですよ。その後も水上スキーで足捻ったらすかさず僕は運動マッサージのトレーナーで…みたいな感じで触りに来たからな。これが本場のフレン痴漢カン! そう言わせる映画が悪いのであって俺が悪いんじゃない。

第二部なんかもっとすごいっすよ、女留学生の部屋で寝てた(※行為なし)キモイタリア男学生が留学生の寝姿見てムラムラきちゃっておっぱい触るか触らまいか激烈迷った末に平和にその場でオナニーを始めるんですけどスコスコスコっとやってるうちに女留学生起きちゃって枕でぶっ叩かれて追い出されるとかこれもう昭和のエロコントじゃないですか。笑ってしまうよね。いや笑ってしまうのは笑わせる映画が悪いんであって俺が悪いんじゃないですから。私はこういうことは当然反対ですよ! ちょっと犯罪っぽいですし!

でもこの滑稽なキモ男はストーカー属性もあったので女留学生を花火に誘ったナンパマンが寮の外にやってくると一方的に彼氏宣言してナンパマンを殴りつけるという案外怖い人であった。大丈夫かナンパマン。めっちゃ鼻血出てるぞ。必死に看病する女留学生だったがナンパマンはとりあえずキスしようとして失敗するとさっきまでめっちゃ痛がっていたはずなのにキスできないんならいいわって感じで平然とその場を去って行くのだった。どいつもこいつもどうしようもないし、あと人間関係グッチャグチャ。

その生々しいどうしようもなさ、よかった。割り切れなさと情けなさと距離のつかめなさと未練と憧れと性欲と恋心と暴力と愛情と衝動と後悔とあとなんか色々入り交じったわけのわからない青春感。ろくでもないんですけど不思議と臭みがない。なんだか爽やか。爽やかで恐怖。恐怖だけどバカ。そんな青春模様に笑ってしまう。本人たちにとっては一大事なものだから余計に。
で、その滑稽で取るに足らない七月が何の前触れもなく終わる瞬間、もうあの七月は二度と戻ってこないのだと思い知らされて、七月の下らなさの全てが痛切さに転じて迫ってくるわけである。おもしろい映画だった。

ちなみに併映でやってた同じ監督の短編『勇者たちの休息』は趣味でアルプスを越えるアマチュアを越えたアマチュア自転車老人たちに密着したチャリキチ・ドキュメンタリー。
路面は凍結、ホワイトアウトで数メートル先はおろか道路の際も見えない絶望状況(カメラとか吹雪でガクガク揺れてしまっている)の峠を何の対価も求めず単に趣味で攻める爺どもの姿が狂っていてこちらも必見。

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フランス映画、本当しょうもない男しか出てこないな。この人はマシな部類ですけど。

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