ザンマイ映画『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』感想文

《推定睡眠時間:20分》

アルバムは何枚か聴いているが取り立ててザ・スミスのファンというわけではない俺が選曲センスが無いとかなんとか言っても説得力は薄いがモリッシーのザ・スミス結成前夜を描いた『イングランド・イズ・マイン』はその年のマイベストテンに入れようと思ったぐらい良かったのでこれはやっぱり映画の方がそんなに良くないんじゃないですかね、『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』。

別に悪いとは言わないけどタイトルはザ・スミスの曲からの引用だし十数曲ぐらいはザ・スミスの曲が流れまくるのにこの盛り上がる感じのなさはどうなのっていうか。だってレコード屋の跡継ぎ息子がザ・スミスの解散報道で傷心の好きガール(主人公)のために地元のラジオに銃持って押し入る(ハードロックほぼ専門局なのでジャックしてザ・スミスだけ流させる目的)オープニングで”Bigmouth Strikes Again”が流れるんですよ。いやなんていうか、そりゃそうかもしんないけど、そこかもしんないけど、そこすぎて逆に白けないかそれは。

でしかもブースに入ってもパニックになるわけじゃなくてなんか話してるうちにDJと仲良くなっちゃうし。”Bigmouth Strikes Again”流したらブース中のレコード割るぐらいは暴れる絵が欲しいよな。焦燥感とか全然無いんだよ。で、こいつがラジオをジャックしてる間に主人公と仲間たちは街で羽目外して(その一人は翌日軍隊に入る設定)、ラジオから流れるザ・スミスを聞きながら青春の最後の刻を謳歌して…って感じなんですけどそのわりにはこいつらの羽目外しもおとなしいのなんので、そりゃザ・スミスのファンだからウォーって暴れる系でもクスリやりまくる系でもないんでしょうけど、でも日陰者連中の反乱みたいな展開はあってもよくない!? だってレコード屋の息子は銃持ってラジオジャックして一晩中ザ・スミス流させてるしそれ知ってんのよ主人公たちも!?

おとなしいんだよな。聞き分けが良いんだよこいつら万引き常習犯(レコード屋のみ)のくせに。俺は知りませんがこれもモリッシーかザ・スミス由来であろう愛車のおんぼろビートル(ナンバープレートに”MEAT IS MURDER”の文字)を主人公が法定速度でとくに危なげなく走らせると流れてくるのが”There Is A Light That Never Goes Out”ですよ。いや歌詞に合わせて衝突しろよとは思いませんが衝突しようとはしてもよくない!? 2階建てバスはないかもしれないけどアメリカだから正面衝突で即死のトラックぐらいはわりと走ってない!?

なんかこの人たちザ・スミスの解散にそんなにダメージ受けてるように見えないんだよな。でしかもみんな顔立ちが整ってわりと綺麗な格好してさ、この人たちの人生にザ・スミスがそんなに必要かなぁっていうか…いや別に誰がザ・スミス聴こうがそりゃ自由ですけど、映画として印象が薄いじゃないですか。本当にもう見るからにどうしようもなくて救われなくて、だけどザ・スミスを聴いてる間だけは自分にもこの世界に居場所があるんだって本人にも観客にも思えるような人が主人公じゃないとザ・スミスの解散をテーマにしてザ・スミスの楽曲を流しまくる意味なんかなくない? なんかディーヴォとかでいいんじゃないの?

微笑ましい音楽青春映画としてはそれなりに楽しかったですけど、なんかそこでノレない感じあったな俺は。サントラ負けの映画。

【ママー!これ買ってー!】


イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語(字幕版)

フレディ・マーキュリー、エルトン・ジョンときてついにデヴィッド・ボウイのスタア前日譚映画(『スターダスト』)まで作られにわかにUKレジェンド伝記映画ブームの様相を呈している音楽映画業界だが、そんな中で作られたモリッシーの伝記映画は本人のキャラに合わせて映画も異色、若モリッシーがずっと鬱々してあちこちで挫折してるだけの地味で暗い2時間の最後にジョニー・マーの光が差す。その光の眩しさに泣く。

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