歌う終末映画『アナと世界の終わり』感想文

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《推定睡眠時間:0分》

楽曲、よかった。チープでキャッチー、薄っぺらくて楽しくて、キラキラで捻くれていて、シンプルな打ち込み系サウンド、宅録感があって。お魚食べたいの歌(なんじゃそら)なんかダンスも含めてへっぽこな魅力がスパーク、お風呂で歌いたい感じゴキゲンソング。
それにしても安っぽいなぁと思ったらインディーズ映画かそれに準ずるものらしい。どーりで破壊された街の全景とか軍隊VSゾンビの戦闘が映し出されないわけだ。そういう大規模な場面は効果音で処理。無理があるがこの場合は無理が映画のチャームポイント。

高校のカフェテリアでみんなで踊るシーンがあるのですがこれが結構整わない。イスの上を渡りながら踊っていたメインキャストの一人がバランスを崩して落ちそうになってしまうぐらいで、もう少し予算規模の大きな映画ならアウトテイクになると思いますがそれをそのまま使ってしまう。
なんかそれが良かったなぁ、出てくる高校生が冴えない奴らばっかりだから。そういう奴らの映画で一糸乱れぬプロの群舞とか見せられても嘘じゃんてなるんです。でもこれは頑張れば出来そうなダンス。嘘がない。頑張ってやったけどちょっと振り付け間違えちゃったりリップシンクがズレてたりする本気だけどゆるいダンスと歌で、そういうところが琴線に触れる。キュートでチャーミングな映画です。

お話的にはその冴えない高校生たちがこんな世界つまんないなぁって心の片隅で思ってたら本当に世界が終わっちゃった系のやつ。朝起きたら見慣れたつまらない風景がゾンビでいっぱい。『ショーン・オブ・ザ・デッド』とか『ゾンビランド』ならそこから冴えない人たちのある意味天国が始まるわけですが、『アナと世界の終わり』はそのへんも嘘がないというか妙に冷めている。終末世界でも冴えない人は冴えない人、誰もヒーローにもヒャッハーにもなれないで結局体育会系のいじめっ子連中の方がゾンビワールドで楽しそうにしていたりする。

ゾンビ映画的に盛り上がらないといえば盛り上がらないがこの閉塞感。ゾンビ×ミュージカルの惹句がゲテモノ感を醸し出す『アナと世界の終わり』が意外なほど正統派終末ゾンビ映画の風格を漂わせていたのは日陰をうろつくティーンエイジャーの閉塞感を的確に捉えていたからだろう。
とりあえず無人のボウリング場に避難した冴えな男子高校生二人が誰がゾンビになったか話す場面、「ライアン・ゴズリングは?」「死んでも死んでなくてもイケメン」「テイラー・スウィフト」「テイラーはゾンビにならないよ!」すごくどうでもよくてすごく良かった。

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世界の終わりに『セトウツミ』。一夜にして世界が変わってしまったのに昨日と変わらない世界の話しかできない感じ、ユーモアの中に絶望の予感がある。学園ものの終末ゾンビ映画には大なり小なりそういうところがあるもので、『がっこうぐらし!』なんかはまさに終末以前を引きずり続ける女子高生の話だったが、『アナと世界の終わり』の冴えなティーンたちはなんとなく自分を理解しようとしないつまらない世界からの脱出を期していたものの実際そうなったら特になにもやることが浮かばないしなにをしたらいいのかもよくわからない、というところに一段深い絶望があるわけで、それが絵的にはわりかしチープな終末世界に迫真性を与えていたように思う。

基本的には王道終末ゾンビ映画なのでゾンビ×ミュージカルのワードから想像されるような「スリラー」的シーンはなし。ゾンビ踊りません。そういうことはやらないで『ショーン・オブ・ザ・デッド』プラス『ドーン・オブ・ザ・デッド』の住宅街ゾンビパニックを予算の限界まで再現。これがなかなかの完成度でゾンビのように唸ってしまう。
量的にはそこまで多いわけではないがアイディア先行型のゾン殺描写の数々も面白かった。この映画のゾンビは世に言う豆腐ゾンビなのですぐ頭が潰れてしまうし首は刈れてしまう。ボウリング場でのゾンビバトルは…と書けば何が起るか大体想像が付くと思いますが、ちゃんと想像通りのことをやってくれるのでありがとうです、笑いました。血も適量出してくれます(そういうの大事)

アナの幼馴染みが着てるダサクリスマスセーター(電飾付き)とかクリスマス会のペンギン着ぐるみとか衣装がへっぽこに可愛いのもポイント高し。マコーレー・カルキンみたいな性別不詳のロンリー生徒の俺スタイル貫きっぷりはカッコ良かった。主人公たちが倒すべき悪役がコントロール・フリークの次期校長、とかいう世界の終わりに反比例する極小スケール感も高校生こんなもんだろう的な切なさ混じりの微笑ましさで良し。校長、ナイス悪役でした。廊下でキスするカップルに「舌を入れるな!」そこなのか。

ストーリーは起伏に乏しい上に合間合間に展開を阻害するようなミュージカルパートが入るもんだからカッチリした映画が好きな人にはあんま面白くないかもしれないが、その締まりのなさに(そして容赦のなさに)しっかり終末感があったしゾンビ映画的なツボは律儀に押えているので『ショーン・オブ・ザ・デッド』とか、『悪魔の毒々パーティ』とか、あとまぁ『香港ゾンビ』とか、その系譜に連なる半径五メートルの終末ゾンビコメディとして楽しめた。快哉というよりは脱力してしまう伏線回収も、味。

ちなベストシーンというかベスト台詞は「○○がゾンビに!?」ですが面白かったので観てない人のために伏せておく。

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香港映画には珍しい終末ゾンビ映画の佳作としても実写版公開以前に『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド』ネタを仕込んだ映画としても知られる(のか?)

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