誕生日来るなよ映画『ハッピー・デス・デイ』感想文

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《推定睡眠時間:0分》

お誕生日スラッシャーといえば職人監督J・リー・トンプソンによる珍怪作『誕生日はもう来ない』ですが『ハーピー・デス・デイ』の方はお誕生日の夜に殺人鬼に殺された女子学生が何故か繰り返し繰り返しその日を朝からやり直す羽目になってしまう映画なので誕生日がめっちゃ来る。

という、スラッシャー+ループもの。似たような発想の映画ではクリストファー・スミスの『トライアングル』とか、こっちはループとは違うが毎日殺されるという点で共通する『今日も僕は殺される』とかがある。主人公は友愛会に入っているので友愛会スラッシャーの変種でもあるが、友愛会スラッシャーといえば『スプラッター・ナイト/血塗られた女子寮』およびそのリメイク版のデジャヴを覚える場面も多し。
『誕生日はもう来ない』だって主人公の設定(大学の友愛会所属とか、誕生日のトラウマとか)が近いので、斬新なようで結構旧作マッシュアップ的な映画オタクが作った系映画なのかもしれない。

そのストーリー。ビチビチ医大生ギャルなツリー(ジェシカ・ロース)はあんまよく知らないナードの寮部屋で目を覚ます。スマホの着信ボイスが父親からの着信と誕生日の到来を告げる。今日は彼女のお誕生日。だが二日酔いでそれどころではない。誕生日はいつも憂鬱だ。だいたい誰なんだこのナードは。あぁ気分が悪い。

友愛会の女子寮に戻ればリーダーの健康意識高い系女が糞うるさい。ココアを飲もうとしただけでハブられる健康エリートなカッパ友愛会はどうにも彼女には居心地が悪かった。変なところで意識が高いくせに他の友愛会活動といえば合コン的パーティぐらいでしかないのだからろくでもない連中である。自然と愛想も悪くなるのでせっかくお誕生日を祝ってくれようとした同部屋の真面目ガールにまで辛く当たってしまうツリーであった。

嫌な嫌な誕生日。嫌なのはちゃんと理由があってのことだがそれはともかくツリーは自分まで嫌になっていた。酔い潰れてわけわからんナードの部屋に居たのも自暴自棄になっていたためだ。いったいなんでこんな馬鹿馬鹿しい連中とつるんで馬鹿馬鹿しい日々を過ごしているんだろうか。講師と不倫、薄っぺらそうな筋肉男に粉かける、寝たか寝てないかは酔いで記憶がないがつまらないナードにまで手を出そうとする。

夜道を歩いているとまたもや親父から連絡。朝と同じように無視するツリー。あぁ、誕生日なんて来なけりゃいいのに。まったく…とそこに、ベイビーフェイスの仮面男が登場。そして刺殺。ツリーの短い生涯はあっけなく理不尽に幕を閉じるのであった。
…閉じてくれれば良かったのだが、目を覚ますと誕生日の朝、場所はあのナードの部屋であった。ツリーの身にいったい何が。よくわからないがともかくこうして誕生日ループに入ってしまうツリーであった。

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ちなみに最後まで観てもなんでループに入ってしまったのかはよくわからなかったのでそこらへんはまぁ、誕生日にトラウマを抱えるツリーの心理をループの形で表現したサイコロジカル寓話として捉えればいいんだろう。
なんか続編もやるらしいのでそっちではループの謎に触れているかもしれないな。続編予告、これ日比谷TOHOで観たんですが本編の上映後だけじゃなくて上映前にも付いてきて、わりとネタバレをかましていた。これから観るのにそれどうなの。別にネタバレ云々の映画でもないですが。

ループするということは死なない。死なないので死が最大の見せ場になるスラッシャーとしてどう怖がらせるか工夫を要すが『ハッピー・デス・デイ』はそこらへん大胆であった。3回目ぐらいの死からはもうホラーを捨てて不条理ヒューマンコメディ路線に転換、台詞で直接そのタイトルが出てくるループ映画の定番『恋はデジャ・ヴ』のビル・マーレイ同様に、今まであんま関心がなかった周囲の人間を観察してみたり交流してみたりしながらツリーが自分を見つめ直す話になるのだった。

一応スラッシャー映画なのでフーダニット要素もあるが犯人とか(その動機とか)いい加減なのでほとんどフーダニットの体を成していない。毎日死ぬということは色とりどりの死に様が出てくるということだがレイティングを考慮してか血の気も薄くあっさりと処理されて次のお誕生日の朝に行ってしまう。
セルフ縊死だけはブラックに笑えてかつちょっとだけカッコ良かったので(※推奨してるわけではない)面白かったが要するにあんまり、スラッシャー映画的な見所のある映画ではなく『恋はデジャ・ヴュ』の学園版なんである。

その意味でツリーの糞ビッチっぷり、よかったですね。まぁこいつぐらいなら死んでも別にいいかと思える(※映画の中の話であって現実には誰も死んでいい人はいません!)性悪加減、友愛会の真面目ガールお手製のカップケーキをありがとうと受け取ってその場で捨てるぐらいだから相当なものだ。
その嫌な嫌な嫌なツリーが何度も殺されるうちに段々良い人になっていくので教育的な映画だがその教育は倫理的にどうなのか、という気もするがまぁいいか、あの繰り返される死は自暴自棄ツリーの無意識の希死念慮の表れということにしておこう。

ツリーを演じたジェシカ・ロースはブレイク・ライブリーの角を削ってマーゴット・ロビーを足したような人で見た目に素行不良感があって良し。死ぬ度に元気を増してはっちゃけていく姿が魅力的である。
ツリーが身の回りの世界に目を向けていくお話なのであぁ見えた人が実際はこうだった的なサプライズ群像劇要素も面白いところで、ざっくりしたシナリオなのでスラッシャーとしてもループものとしても学園ものとしてもコメディとしてもダメ人間の見つめ直しドラマとしても食い足りない気がしたが、軽く観れていいんじゃないすかね。おもしろかった。

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ビル・マーレイが本当に嫌な奴でいいんですよ。

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