デジャヴュ映画『パーム・スプリングス』感想文

《推定睡眠時間:0分》

別に不満っていうんじゃないんですけど『恋はデヴァ・ヴュ』に代表される同じ一日を何度も繰り返すアメリカのループ系SF映画って展開がかなり規格化されてて色々やったりはするんですけど結局は同じ一日にいたらよくないね不健全だねループ出ようか出て友達と遊んだり恋人と素敵な時を過ごしたりして限りある人生をエンジョイしようよっていう健全エンド以外には基本的にならないし大体そこに至るまでの主人公の苦悩とか葛藤まで規格化されてるのでそれこそ『恋はデヴァ・ヴュ』ぐらいのクラシックならともかくその影響を隠そうともしないし何が面白いのか「これって『恋はデジャ・ヴュ』じゃん!」みたいな台詞まで律儀に用意する現代のアメリカン・ループときたら退屈はしないが創意に欠くこと甚だしくごめんかなり不満あったわ。

いや、面白かったですよ。面白いは面白いけど登場人物も「またこれか~」って一向に明日の来る気配のない同じ一日に目を覚ますたびに思ってると思うんですけど俺もこういうの観ながら「またこれか~」って思ってるからね。最近は『ハッピー・デス・デイ』という話題になったループSF映画もありましたし…あれは面白いか面白くないかは別として(いや面白いんだけどさ)ループ×スラッシャー映画っていう組み合わせの妙で技アリ的な感じでしたけど『パーム・スプリングス』はループ×ラブコメだからいや知らねぇよみたいな。知らねぇよってことはないですけどなにそれそんなの『恋はデジャ・ヴュ』のカップル版でしかないじゃない。

なんなの。だとしたらということもないだろうが全世界のセックス体位をネットで収集してそのすべてを試すぐらいのオモシロ展開は欲しいだろ。いや別にセックスが観たいんじゃないんだよこれだけやり尽くされた感のあるループものSF映画をまだ新しく作るんならそれぐらいの創意と挑戦があってもいいじゃないですかという話をしているんだよ俺は決してセックスの話をしているんじゃなくて!

だいたいこのドラマ展開ならループいらんじゃん。結婚式で何日か滞在してる間に起こったある男女+のトラブルと心境の変化って感じで普通のラブコメとしても成立しちゃうじゃん。だめだろーそれはー。普通のラブコメとしても成立するドラマ展開なら面白いよそりゃあ。でもループものならループならではの発想をもっとくれよー発想をー。時間SFっぽいアイデアをくれー。これじゃああまりに人間中心的すぎるんですってー何万回も同じ一日を過ごしてるくせに考えることをやめることもなく人格の変化なんか大してないですしねー。そういうのが観たいのにさー。

アメリカ人の考えるループはつまらん。ループSF小説は面白いがループSF映画となると(洗練されてはいるが発想的には)からしきという観がある。なんなんでしょうね。ループの可能性とか恐ろしさを見くびってるんじゃないですか。これじゃあ肉体を鍛える代わりにコミュ力を鍛える精神と時の部屋だ。アメリカ映画にとってのループとはコミュ力訓練場の別名なのだ。だからこの映画も結局は人間同士のコミュニケーションがすべてである。ま一応コミュニケーションから外れたところでSF的飛躍もあるが…それがまた驚くべきことなのかアメリカン・ループSF映画の発想の乏しさからすれば驚くことでもないのか、ぶっちゃけ『ハッピー・デス・デイ』シリーズと同じなのであった。そこまで被ってしまうのかーアメリカン・ループSF映画ー。

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その役はお前じゃなくてジョン・マルコヴィッチがいつもやるやつじゃんなにハゲだから同じようなもんだろ的な感じで起用されたの? 失礼な! そんなわけはないがとはいえジョン・マルコヴィッチがいつもやる感じの躁方向に病的でふざけているのか本気なのかよくわからない微妙な怖さを帯びた怪人をこの映画で演じるのはJ・K・シモンズです。シモンズ新境地。なのかどうかは知らないがこういうシモンズもあるのかとは思った。思っただけでそんなに面白くはない。

それはシモンズのせいというよりはシナリオのせいで、色々と風呂敷を広げようとした気配はあるが畳む気はあまり感じられず、シモンズのエピソードもかなりいい加減である。ループものは主人公一人だけがループというパターンが多いがこの映画の場合は何人かループに入ってんである。であるならば主人公のカップルだけではなく他のルーパーのドラマもちゃんと起承転結を付けた方が面白かったんじゃないだろうか。そこはどうでもいいってことなんすかね。マジでそこはどうでもいい終わり方をしたからちょっとビックリしましたが。

あと蜃気楼風の恐竜とか。蜃気楼風の恐竜といえば星新一に『午後の恐竜』という星の代表作の一つに数えられるショートショートがありましたがこちらパースプの方の恐竜はというとなんか含意もあるのかもしれないけど基本的には装飾効果って感じでそこはとくに広がらないが…とまたもやちょっとビックリである。こう書いてみるとビックリするポイントはそれなりにあったのだがそのどれもがSF的なビックリとか筋運びの巧さによるビックリではなく「それ放置なのかよ!」的な悪しきビックリであったのであまり褒められない。でも逆にそう来るとは思わなかったから悪いビックリだとしてもなんか面白かったですけどね(ただし、あえて風呂敷を畳まないことで無意味な謎を残して客の興味を引きつけようとしているようなところはセコくてムカつく)

そんなところかなぁ。まぁ、誰が観ても面白い映画にはなってると思うのであれ面白い? って人に聞かれたら(俺にそんなことを聞く人間など概念のレベルで存在しないのだが)面白いよーおすすめだよーとは言うと思うが、逆に言えば誰が観ても面白い程度の映画なのである。それを作ることは大変なことなのだということは理解した上であえてそう言いたくなってしまう映画だったのだ、俺には。

【ママー!これ買ってー!】


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やっぱこういうループ設定で何ができるかということがある方向で考え抜かれたループSF映画の方が好き。よくできてたなーこれはー。

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