劇場版『PRINCE OF LEGEND』を観る(TVシリーズ未見)

《推定睡眠時間:0分》

同名TVドラマの完結編に当たる劇場版だったなんて。「劇場版」とか「映画」とかタイトルに冠してないものだからそんな事情はまったく知らず観に行ってしまった。最近こういうステルス完結編パターン多くないですか。『兄友』とか『兄に愛されすぎて困ってます』とか。

で事情を知らない人のためにナレーションベース(声:銀河万丈)の登場人物紹介とこれまでのあらすじが映画の冒頭に付いているのですが、「王子が大渋滞!」のキャッチコピーが直球で示すようにイケメン王子大量、それはもうアルトマン群像劇ばりのキャラの多さであるからランタイム91分の映画にしてTV版をダイジェスト編集した人物紹介&あらすじで15分も使ってしまう。わざわざ腕時計で計ったので誇張ではない。

91分の映画で15分ダイジェストって。これじゃあまるで『悪魔のサンタクロース2』が尺を埋めつつ血量を増やすために30分くらい前作の惨殺シーンのダイジェストだったようなもんじゃないですか。つまり『悪魔のサンタクロース2』における惨殺シーンが劇場版『PRINCE OF LEGEND』におけるイケメンってことじゃないですか。スプラッター映画やったんや『PRINCE OF LEGEND』…どこへ向かおうとしてるんだ…(感想が)

それにしてもダイジェストでしかないのにフェスティバル感がすごい。タイプの違うイケメンどもを湯水の如く浪費する映像面は当然だが、サントラとか80~90年代(っぽい)洋楽シンセポップのノンストップミックスです。こんなものはテンションを上げたくなくても無理矢理上げさせられてしまう。

音色からペット・ショップ・ボーイズ版かと思ったらなんか違った“Always on My Mind”とか、これはa-haの“Take On Me”とかが絶え間なく…“Take On Me”!
最近の80年代を舞台にしてる系ハリウッド映画、時代層の演出で“Take On Me”使いすぎ問題というのがあるが、『PRINCE OF LEGEND』もガッツリ使っていて邦画にも“Take On Me”禍が! ダイジェストに色々詰まり過ぎだろう。

TVドラマ版のダイジェストだからまだ映画のタイトルも出てないのにヒロインの白石聖が色んなイケメンに3回ぐらいキスされてしまう。最初からクライマックスとはこのことか。なんだか知らんがホストに通い詰める女の人の心情が少しわかった気がする。
観るホストクラブ、『PRINCE OF LEGEND』。っていうか改めて眺めるとホストクラブの屋号としか思えないタイトルである。

満腹ダイジェストが終わるとようやく本筋の伝説の王子決定戦に向けて話が動き出す。壁ドン、喧嘩、二人三脚、椅子取りゲーム…などの競技で王子度を競い(いや二人三脚とか王子関係あるのか!?)優勝者には先代伝説の王子・岩田剛典に続く3代目伝説の王子の称号が与えられる。ついでにヒロインの白石聖とも付き合えるかもしれない。

伝説の王子になるためにも白石聖と付き合うためにも王子っぷりを一層磨く王子たち。大丈夫なのか。ダイジェストの後は人間関係の補足とか伝説の王子決定戦の説明とか理事長・加藤諒の陰謀エピソードとかが入ったからこの時点でもう60分強ぐらいしか上映時間が残っていないが…だが杞憂であった。
伝説の王子決定戦も○○100連発とかのAVみたいな感じで王子的絶頂ショットだけを抜き出してダイジェスト処理されるからである。

ダイジェストのメインはスマホアプリみたいなフレームを付けたPOVでバーチャル体験する王子壁ドン。壁ドンの競技では小型カメラを装着した女子生徒に王子たちが壁ドンをし、その映像がアプリで生配信されているという設定。
王子ドアップとキラキラエフェクトと王子アイキャッチで王子と王子を繋ぐ編集により有無を言わさず王子の世界に飲み込まれる。

もう王子の魅力だけ観客に提供できればなんでも構わないというものすごい制作姿勢である。王子の一人が壁ドンついでに女子生徒にキスして「あ、ごめん、間違ってキスしちゃった」「ブブー! キスは失格で~す!」みたいなやりとりが一瞬で流されるがそういう感じですから。そういう感じでした。

決定戦と言っているのだから一般的な映画だと誰が勝って誰が負けたとかそういうところでシナリオも演出も盛り上げようとすると思うが、『PRINCE OF LEGEND』は一般的な映画ではないので決勝進出者決定の場面では誰が決勝に残って誰が敗退したのかもよくわからない。
タメを作ってタメを作ってそこからの名前発表、表情のクロースアップ! みたいな定番演出とかはない。

なんとなく噛ませポジションっぽいやつは全員落ちていたので物語で展開を理解するのではなくジャンルのお約束で展開を理解する観客を想定して映画を作ってるんだろう。ある意味めちゃくちゃ高度なメタ映画である。
加藤諒の陰謀エピソードがとくに物語に関係しないでそのままスルーされるとか考えられない展開だが、加藤諒はイケメンじゃないからどうでもいいという異常に高度なこんまりメソッド、見習いたい。

とにかくアゲるだけアゲて後はもうなんだかわからない酒池肉林映画。「耳が妊娠する~!」みたいなモブ台詞が飛び交うイケメン乱舞っぷりに誰がイケメンかさえもしまいにはわからなくなってくる。
山里亮太(関口メンディー)が出てくるのですがあれイケメン枠なんですか? ぼくにはもうわからないよ。片寄涼太が主役イケメンというのもな。『兄に愛されすぎて困ってます』でも思いましたが子供っぽすぎるよね。そこが良いのかもしれないけどさぁ。

やっぱり一番の王子は岩田剛典だ。優勝は写真出演の剛典くんです。キリっとした時もふにゃっとした時もシュンとした時も全部良い剛典くんでお願いします(なにを?)

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剛典くんでお願いします。

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