このバカティーンがっ!的な映画『センセイ君主』の感想

《推定睡眠時間:0分》

いやぁ~今回も最高っすねぇ月川センセ~、と思わずフィクションの中で見る少女漫画家を持ち上げる腰の低い編集者みたいなことを言いたくなってしまうスーパー少女漫画家ネームな映画監督・月川翔先生待望の最新作ですいや待望もなにもないけどね今年もう『となりの怪物くん』が公開されてるからね来月は『響』の実写映画版が控えてるからね。週刊連載みたいなペースで映画を撮っているな。

そんなことはさておき上映中二回涙腺決壊の危機がありましたよ二回も。それも泣かせるぞ泣かせるぞ~みたいな場面じゃねぇんですよどこと具体的に言うとあれなのですが『ロッキー2』、『ロッキー2』で眼球湿る。
それから主人公の隣のクラスのキモウザバカ男子だ。ストーリーの推進役として面白バカ枠のキャラとして物語の最序盤で映画的に使い捨てられたと思われた隣のクラスのキモウザバカ男子が後半になって再登板するんだよええそんなところでぇぇぇっていう場面で! 心中沁みる。

なみだなみだの並な純愛映画が邦画界に咲き誇っていたひとむかし前に盛んだった泣けるから良い映画ってわけじゃねぇよのカウンター言説にはうんうんと力強く頷きますがこういう泣かせ目的じゃない場面で泣かせてくる映画は無条件で良い映画だと思うよ。
いやなんつーかですね、完全予想外にちゃんと今の学園ものティーン映画になってる気がして…白々しくない。ティーン感覚のあんまり面白くないけど言ってる本人たちは楽しそうな勢いギャグとかっていうのが間断なく続く。先生激惚れ主人公の佐丸さん(浜辺美波)も変顔に次ぐ変顔、変声また変声のコミカル人間でお仕着せの女子校生キャラじゃない。実写版『銀魂』の橋本環奈みたいな感じ。

めっちゃ響くじゃん。泣いちゃうじゃんそんなストレートな学生ノリ。ここで『ロッキー2』入ってきたら面白いよねっていう気取り腐った大人だったら一蹴するベタを正面から全力でぶちかましてきたらもう笑いじゃないよ泣きですよそれは。
隣のクラスのキモウザバカ男子が物語にはあまり関わることはないとしても確かに主人公と同じ場で学園生活を送っていたという事実をさりげなく見せられたら笑いじゃないですよ泣きしかないよむしろ!

佐丸さんはバカなので嘘という字が書けず自分専用の嘘漢字を作り上げてしまうが(これは笑った)映画もそんな風に嘘がない今の学園ものって感じだ。
竹内涼真みたいな高校教師がいる時点で嘘だろうと言われたら即論破されてしまうがいやそういうことじゃねぇんだよ! あれだよリアルとリアリティは違うみたいなそういうことを言いたいんだよ俺は!
挿入歌がジュディマリの「Over Drive」とかオッサンの発想じゃねぇかと言われたら素直に引き下がるしかないわけですが。

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今更のストーリー。なんか知らんがいくら告っても絶対に彼氏のできない女子校生・佐丸さんの下に謎の新任教師現る。俺はただ教師として教えるだけですから勉強したい人だけ勝手に勉強してくださいと授業中に言い放つその塩対応が恋に恋する佐丸さんの何かに火を点けた。
お前は必ず俺がオトす! かくして虎の目で新任教師・弘光由貴を捕捉した佐丸さんの恋愛ハント大作戦が幕を開けるのであったが段々と目がうっとりしてきてしまいにはスキの文字が浮かぶようになる。別に比喩とかではなくてスとキが焼き印みたいに両目に浮かぶのであった。

いやでも発想は確かにオッサンかもしれんけど(しょうがないじゃないですか月川翔先生だってオッサンなんだから…脚本家は吉田恵里香というもう少し若い人ですが…)野生の不躾ティーンに向けるやわらかな眼差しとかは結構やっぱグっとくるよ。
俺の中でこういう映画の善し悪しの指標になるのは教室シーンで背景に映ってるエキストラ生徒の動きなんですが、よく動いてんだわこれ。名も無き生徒たちがガチャガチャとよく動いてんのがちゃんと見える構図で撮るんだわ。

主人公の恋愛まわりにしか興味のないような少女漫画原作映画ってあるじゃないですか。これもプロットとしてはわりと同じような感じっていうか、愛しの先生しか目に入らなくなっちゃった暴走女子校生が主人公だから当然なんですけど、その周りにいる高校生たちの営みをそれ自体が主題化しない程度にサラっと入れていく。
そういう、映像のシナリオとの距離の取り方っていうのがすげぇ良くて。でシナリオもまた良いんですよさっきまで弘光先生を蛇蝎の如く嫌っていた上位モブ系の女子生徒が一切隙の無いように見えた先生の間抜けな姿を目撃して「許してやろうとする」場面がちょこっとあったりしてね。

この場面はしかし素晴らしいと思ったなぁ。先生が恋愛対象のハイパーイケメンに見えていたのは主人公の佐丸さんほか数人だけで、大多数の生徒にとっては単なる冷たいつまらない教師でしかなかったんだよね。
でいつも顔面に無の文字を浮かべて(これは比喩)生徒との課外コミュニケーションを拒絶するこのドライな先生も心中では色々思うところがあったんだなっていうのも同時に仄めかすわけです。

学生ノリの台詞回しとかダイアローグがつまらなおもしろい映画でしたけれどもその過剰な単純の中にポツリと置かれた「教師ですから」の一言が様々なニュアンスを帯びていたりもし、アップテンポの脳空系はっちゃけ学園ラブコメと思って見ているとときおり出くわす大人と高校生の対比の鋭さに驚かされたりする。
先生の属する大人ワールドの描写の渋さときたら…であるがそれを生徒側から眺めたときには大人ワールドもまた違って見えたりするって感じで、なにか、誰の視点も特権化しようとしない意志のようなものが映画を貫いていたように思う。

こういうティーン映画というのは信頼できる映画だ。大人がガキを信頼するというのはなにもガキに考えを寄せることではなくて大人の視点の絶対性を打ち壊して相対化することなんじゃないだろうか。
その信頼の中でバカ高校生どもがのびのびとしょうもないことに興じている姿は馬鹿馬鹿しければ馬鹿馬鹿しいほどちょっと感動させられてしまったりするがというかしたが、実はこれはそんな風にしてのドライ教師の無表情が溶けていく教師もの映画でもあったのだったというわけでありきたりと言われればそうかもしれないが、だとしても、やぁ、よくできてますよねぇ、まったく。

あと俺の感覚ではそんなにカッコ良くない佐藤大樹が佐丸さんの幼馴染みポジションに収まるっていう弱多様性配役も地味にグー(相棒役の川栄李奈の漢気もまた良し)

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飾らない系かっこつかない系の女子ティーン映画といえばこれが面白かった記憶が。

↓その他のヤツ

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