天才デタラメ映画『私がモテてどうすんだ』感想文

投稿日: カテゴリー 居眠り映画館タグ , , , , , , , ,

《推定睡眠時間:15分》

どうもこうもしないよ! いいじゃないか! あなただってモテる権利がある! どうするんだなんて自分を卑下して言うんじゃない! さぁ自分を祝福してあげなさい! 自信を持つんだ! あなたモテてよかったね! あなたモテてよかったね! …結局、死ぬまでモテることのなかった人生。それでも別のことで埋め合わせができればと仕事人間として生きてきたが、気がつけば金は尽き、友は消え、仕事までも失って、皮肉なことに唯一手元に残ったものはステージ4の膵臓癌。病院帰り、あたかも天国への最終列車のような夕暮れ時の京急線で、私の心を捉えたのはまだ若く、希望に満ちた、屈託のない、しかしおそらく彼女たちなりに深刻な悩みを抱えたと見える女子高生の言葉でした。「私がモテてどうすんだ!」。いや、モテていい。君はモテていいんだ。むしろモテてほしい。私の分までモテて欲しい! 気が付けば、私はそう叫んでいました。どうしてでしょう、女子高生が表情を引きつらせているのは。どうしてでしょう、ヤンキーと思しき青年が私をにらみつけているのは。どうしてでしょう、車内が沈黙に包まれているのは。戸惑う私の耳を、先ほどの女子高生の独り言が突きました。「キモ…そういう話してねぇし…」。(了)

という掌編がタイトルを目にすると同時に脳内を駆け巡った『私がモテてどうすんだ』はまさしくそういう話では全然なく、この主人公の女子高生ちゃん(富田望生)はハードコアな思春期腐女子なので学校でイケメン男子を見かける度に頭の中で男と男のいやらしい妄想をして(※そんな生々しくはない)萌えていたが、ひょんなことからそのBLエロ妄想対象だった男子たちが一斉に自分に恋をし始めたので「お前らはお前ら同士で突っつき合えよ! こっちに貴重なチンポ向けてんじゃねぇよ!」という欲望の叫びがタイトルの意味するところ、自信なし女子がイケメン男子に突然掘られていや違った惚れられて自分を変えていく云々のキラキラ映画ではまったくないのであった。

もとより製作本数が減少していたところに今年は新型コロナも重なって劇場でキラキラ映画の新作を観るのはおよそ半年ぶりであったが、ようやく映画館に戻ってきたキラキラがこんな映画というわけで衝撃を受けてしまったキラ。こんな台風みたいな破壊的推進力を持つバカ映画はキラキラ映画界に限らず一般的な日本映画でもまずお目にかかれないキラね。衝撃のあまり語尾がキラになってしまったキラよ。サイコラジオって最近あんまラジって言わなくない?

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いやまったく本当、映画ってこんなデタラメで良いんだと感動さえ覚える映画だったな。そのデタラメ賛歌は鈴木則文を彷彿とさせ、破綻したシナリオをケバケバしい映像技巧で無理矢理乗り切ろうとする姿勢はブライアン・デ・パルマの如しである。アバンタイトルからして今公開されているどんな映画よりもデタラメだった。オタク女子高生の富田ちゃんは典型的な非モテ風貌であったがとあるアニメの推し男キャラが作中で死んでしまったことによりショックで寝込んでしまい1週間飲まず食わずでいたところなんとこれはLDH製作の映画なのでE-girlsの山口乃々華に変身してしまったのであった。

いや、いや! そのなんていうのメガネを外したら美少女パターンのこれは激ヤセ版ですが激ヤセっていうか普通に別人じゃないか! 身長差10cmぐらいあるぞ富田望生と山口乃々華! しかも山口乃々華に変身したオタク女子高生が1週間ぶりに登校すると発情した学園の男どもが全員チンポを向けてくるわけですがう~んこれはあくまでも俺基準だけれども俺基準だけれども山口乃々華そこまで股間がウッてなる美人さんでは別にないだろ! 度重なるデタラメに動揺しているとそこで始まるMV的なキラキラ学園ミュージカル! これがフレッシュかつ多幸感ありましてデタラメだけどまぁいっかどうせ映画だし! そのように! 思わされる! 思わされてしまう!

その後も演劇部の変なヤツが絡んできて乃々華に化けたオタク女子高生に主演を張って欲しいと頼むのだがその理由が演劇部の主演女優が広瀬すずに化けたざわちんだったのでセリフを喋れないとかいう「そんなの脚本に書いていいの!?」みたいなデタラメの連続。『ケンタッキー・フライド・ムービー』じゃないんだから。オタク女子高生が池袋のアニメイトで限定販売してた推し抱き枕を抱えてイケメン男子ズたちから去って行くところで「Get Wild」がBGMイン、ストップモーションとなって『シティーハンター』のエンディング風テロップが画面を覆うとかよくやるよなそんなの。それ腐女子別に関係ねぇだろっていうところも含めて。

顔デカクッションみたいの部屋にたくさん置いときゃ腐女子だろみたいな浅すぎるオタク認識(ある意味そうかもしれないが)からして「しょせん映画」感がものすごいが、そのしょせん映画感が富田望生とその友人(これもたぶんLDH構成員だと思うのだが)のオタクというよりは単なる狂人の発狂芝居では逆方向にスパークし、よくわからないまま人間関係が絡まる一方の破綻したドラマは往年のスクリューボール・コメディを思わせるズッコケ必至の謎大団円を迎えそしてまたLDH謹製群舞で強引に幕引きを図る…と思ったらその後にミニメイキング&イケメン☆NGシーン集が続くという余韻も糞もない破壊的サービス構成は三周ぐらい回って現代日本映画の最先端であった。

カワイイ男とカワイイ女とダンスさえありゃ映画は出来る! 確実に間違っているがどう考えても正しすぎるLDHの映画作りには日本映画の未来が詰まっていたな。ポリティカルなものをコレクトする気などハナから100%のゼロであることにより逆説的にコレクトな平等世界に到達したかもしれないモラル・ミラクルにはモラル問題に揺れる先進諸国も驚嘆することであろう。それがたとえ呆れ経由の驚嘆であっても、未開の部族を文明人がフィールドワークするときのような驚嘆であっても、映画は観る者を驚嘆させたもの勝ちなのだッ! まーみんなとにかく楽しそうでよかったネッッッ!

※ニコ動のスクロールコメントを主人公の心象風景として用いるのは今ニコ動かよという点を措けば面白いアイディアだと思った。あと演劇部員の宝塚の男役みたいなジェントルガール(これもたぶんLDH族の人だと思うが)、かっこよくて激抜きでした。ありがとうございます。

【ママー!これ買ってー!】


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複数の発情男子が一人の女を巡って様々な儀式・状況で男を競う部族型の恋愛構成と無茶すぎるシチュエーション作りから連想したのであったがこの映画の男側の主演もそういえば片寄涼太くんであったからLDHのトライバリズムはブレない。

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