キラコメ感想『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』

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《推定睡眠時間:10分》

これをキラキラ映画の枠に入れてよいものかどうかわからないのですがキンプリの平野紫耀と橋本環奈が恋愛バトルを繰り広げる学園映画だからとりあえずキラキラ映画ということにしておこう、学園映画といってもこの学園は勉強も部活もなにもしないで生徒会選挙だけが唯一の行事という『帝一の國』とか『賭ケグルイ』タイプの学園ならざる学園なのですがそれもひとまず置いておくとして!

なんだかここ一年ぐらいで製作本数が激減した気がするキラキラ映画の新作はどうせキラキラブームが終わるんならこっちから壊してやらぁ! と言わんばかりのキラキラとはだいぶ違う方向にパッションがオンになってしまったキラキラ斜陽期の怪作でした。

もう、なんか、すごい。キラキラ映画的な要素や状況をことごとくネタにしてしまう。金持ちのご令嬢と貧乏一家の出世頭の身分違いの恋というドラマチックな設定がドラマチックな展開を生まず最終的に無視されてしまうし、キラキラ映画のメインときめきイベントたる壁ドンはそんなわけねぇだろと登場人物が全力でツッコんでしまう。ヒロインの難病はキラキラ映画のよくあるパターンの一つですがこの映画で難病に罹った橋本環奈の主治医は佐藤二朗です。

ゆーても佐藤二朗だってちゃんとした演技をする時はするだろうと思われるかもしれませんがこの佐藤二朗は情熱大陸(的な)に出てソーラン節を踊りながら受付のナースにぶち切れたのち平野紫耀にぼくナレーションだからねぇと例の調子でぶつぶつ独り言のように語り(ナレーションも兼任)そのナレーションではあぁおっぱい! 巨乳ちゃん! あぁ、あぁあああああ! みたいな感じの実写映画版『銀魂』よりも危険な狂人だったのでキラキラしてないしキラキラどころではない。

っていうかキラキラ以前にちんちんの単語がツボに入ってしまった橋本環奈の前でひたすらちんちんを連呼する浅川梨奈ってそれどんな映画なんだよ。場内大爆笑だったから問題ないですけれども。なんか呆れながらホッとしてしまったよな。AI時代でもまだ人類はちんちんで笑える。AIはちんちんで笑わないから今後AIと人間を分かつものはちんちんで笑えるか否かということになるだろう。『ブレードランナー』のレプリカント識別テストを実装するならちんちんで笑うかどうかの項目を入れるべきだ。ぼくは微笑いでした。

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…というようなキラキラ映画で一応、相思相愛にも関わらずプライドが邪魔して自分から好きと言えない高校生男女のお話ではありましたが、キュンキュンする感じとかは薄く基本的にバカでした。
クライマックスの生徒会選挙とか腰を抜かしましたよね。そんな伏線ある!? って思って。ネタバレアレルギーの人がショックを起こさないよう詳細伏せますがこんな伏線ありえないですよ普通の映画。巧いといえば巧いのかもしれませんけどでもそれ以上にバカだよね。良い意味で。

実家格差要素も難病要素も生徒会選挙要素も佐藤二朗要素も猫コスプレ橋本環奈もすべてが相互作用をもたらさぬままぶち込まれては捨てられていくキラキラ闇鍋なので平野紫耀と橋本環奈の相思相愛バトルも売りにしているわりには序盤しかちゃんと出てこない。

これがどのようなものかというと『HUNTER×HUNTER』の念能力バトルか押井守の『立喰師列伝』のキラキラ版でした。ひたすら、下らないモノローグ進行でお互いに相手の裏をかき、裏をかき、裏をかき…もらった映画のペアチケットをどうするか(二人とも一緒に観に行きたいが自分からは誘いたくない)で15分ぐらい尺を割いていて心からバカっていうか茶番。繰り返しますが良い意味でです。

たぶん原作漫画はこんな茶番シナリオではないのでいったい書いたのはどこの奇人だろうと思ったら映画版『翔んで埼玉』の徳永友一でした。確かに、やっていることはバカなのに無駄にディティールに凝る感じとかが『翔んで埼玉』と似ている。この人の手癖みたいなもんなんでしょう。あとストーリーの整合性やカタルシスよりもシーン毎のオモシロを優先するところとか。またひとつどこにも使い道のない知識を得てしまったな。

出ている人。橋本環奈はバカみたいにかわいい。プイっと顔を逸らすところとか意味がわからないレベルでかわいい。ちんちんで笑ってしまうところまでかわいいのでどうかしていると思う(かわいさが)
平野紫耀のコメディアンっぷりは思わぬ収穫。強がってはいるが実は奥手の小心者というキャラは『ういらぶ。』の二番煎じと言えば二番煎じですが、あのゴツイ風体から繰り出されるビックリ顔と暴力の香るハスキーボイスで語られるしょうもないモノローグはじわじわと来るものがある。

『未成年だけどコドモじゃない』ではスーパー金持ち一家の親父として怪なるハイテンション芝居を披露していた高嶋政宏が今度は貧乏人サイドで登板。『とっても! ラッキーマン』でいうところのスーパースターマンみたいな暮らしをしている平野紫耀の父親役でしたがこれまた怪演、夜でもサングラスをかけていて抑揚のないロボット喋りで平野紫耀にゲーセンに連れてってもらえるよう懇願したりする。何者感しかないがとくに物語に絡むこともなく正体不明のままフェードアウトしてしまうのでインパクトが強烈だ。佐藤二朗だけでもお腹いっぱいだというのに。

ストーリー的にはクライマックスな生徒会選挙のシーンでは脇役の高校生カップルが演説を眺めながらいちいちツッコミを入れて没入感を意図的に削ぐ。ちょっとメタ的な視点を取り入れた映画なのだ。
キラキラ映画のベタをネタにしてる映画なので当たり前といえば当たり前なんですが、でも面白いですよね、それで成り立つってことは観客もキラキラ映画をネタ的に消費しているわけで、そういう流れをちゃんと読んでふざけているようなところがこの映画にはある。キラキラ映画こんなもんだろって観客も思ってるし作り手もそう思ってる(たぶん)

バカだけどクレバーですよこの映画は。クレバーかつアナーキー。実写劇場版『銀魂』ですら最後はイイ話っぽいところに落ち着いたのにこっちはもう最後までバカを貫くんだから立派なことです。
『2001年宇宙の旅』のスターチャイルドになる橋本環奈、『第三の男』っぽく並木道を去って行く佐藤二朗、ちんちんを扇風機で隠す平野紫耀、キャラ設定も扱いも雑すぎる佐野勇斗、空を飛ぶのはコードブルー。

キラキラ映画全盛期にはこんなジャンルの自己言及的なパロディ映画は出てこなかっただろうと思えばキラキラブームの終焉も悪いものではない。悪いものと思っている人がそもそもいるのだろうかという気もするがそれはともかく、面白かったです。

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